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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第6シーズン 竜人世界ドラゴニア編
231/927

第229話 竜人世界編 第33話 白竜族の若者1

 白竜族の美しい若者とのお話。


 草原でボードサーフィンをした次の日、俺は、店を準備するため、商店街に来ていた。


 昨日買えなかったということもあるのだろうか、開店前から行列ができていた。今までで一番の人出だ。

 今日は、それを予想して、多めにクッキーを用意してある。新しく、細長い棒状のクッキーも焼いている。端に蜂蜜を垂らしてある

 チュロスをイメージして作ったのだが、やや柔らかさが足りないのと、シナモンが無いのが残念だった。

 しかし、開店してみると、持ちやすさが受けたのか、通常のクッキーより早く売れていく。

 そして、それを手に町を歩いている人を見たと言って、新規のお客が大量に押しよせた。

 棒クッキーは、小一時間もせずに完売。通常のクッキーも、二時間ほどで売り切れてしまった。過去最高の売り上げだ。


 加藤とハイタッチする。

 イオは、満面の笑顔だ。

 そのイオの笑顔が、凍りついた。

 肩を軽く叩かれ、後ろを振りむくと、四竜社で会った、白竜族の若者が立っていた。後ろに、白竜族の青年を一人、女性を二人連れている。


「は、白竜の若様……」


 我に返ったイオが、慌てて両膝を地面に着ける。


「シロー、約束通り、来ましたよ」


 相変わらずの美声だ。


「こんにちは」


 俺が、軽く応じる。


「ねえ、君、そんなにかしこまらないで、立ってくれないか? 

 これじゃ、私が悪者みたいじゃないか」


 ジェラードと名乗っていた若者が、平伏しているイオに苦笑している。苦笑しても絵になるのが、嫌味だ。

 俺が手を引っぱり、赤い顔をしたイオを、立ちあがらせる。

 周囲では、すでに女性の通行人が足を停めだした。すぐに、人垣ができるだろう。


「私の知人が、近くで店をやっているから、そこで話さないか?」


 ジェラードが、渡りに船を出したので、すぐに応じた。店の片づけは、イオとポルに任せ、俺と加藤で彼に着いていく。


 俺たちは、商店街の外れにある瀟洒しょうしゃな家に案内された。庭に草花を植えているところは、この世界には珍しいが、それを除くと、普通の住宅に見える。


 ジェラードが美しく彫刻された木のドアをノックすると、中年の女性が出てきた。その女性は、なんと人族だった。


「若様、いらっしゃい」


 女性は、にこやかに言うと、俺達を中に招きいれた。


「どうぞ、こちらでお待ちください」


 彼女は、そう言うと、奥に消えた。


 俺たちは、入ってすぐの所にある、小部屋で待つ。竜人の娘が入ってきて、各自の前に、お茶を置く。六人が座るとほぼ満員のその部屋は、趣向を凝らしたものだった。

 窓からは、庭の草花が見え、壁には複雑な意匠の美しいタペストリーが掛かっていた。テーブルは、見たことが無い黒い素材でできており、手触りが良い。


「改めて、名乗らせてもらおう。

 私は、白竜族のジェラードと言う。

 シロー、今日は、時間をくれてありがとう」


 挨拶まで爽やかだ。


「いや、仕事が終わったところだったから。

 終わるの、待っててくれたんでしょ」


 彼が店から少し離れたところに隠れていたのは、点ちゃんからの報告で知っていたからね。


「ふふふ、さすがだな」


「ああ、そうだ。

 こちらは、俺の友人で加藤といいます」


 「初めまして」


 加藤が頭を下げる。


「初めまして。

 ところで、君たちは、勇者ではないのかな?」


 黙って控えていた、ジェラードの付きそいが、はっとした顔をする。


「俺は違うけど、ええ、彼は勇者ですよ」


 俺は、加藤の方を見る。


「しかも、黒髪の勇者とはな」


 ジェラードが感心したように言う。加藤は、肩をすくめた。


「この世界でも、他の世界との交流はあるのですか?」


 念のため、いておく。


「いや、ほとんど無いよ。

 だから、何年かに一度訪れる迷い人から、得られるだけの情報を得ているんだ」


 なるほど、今回俺に会いに来たのは、そういう目的があったのか。


「黒髪の勇者を見るのは、初めてだよ。

 多くのポータル世界で、もの凄く人気があるらしいね」


「ええ、それはもう」


 当たり障りのない答えを返しておく。


「彼も、竜闘に出るのかい?」


「うーん、それは、今のところ何とも言えません」


 意図がはっきりしない相手に、こちらの手の内を見せる馬鹿はいまい。


「ははは、警戒されてるな。

 まあ、仕方ないが、私は君たちの敵ではないよ」


 俺と加藤は、それには黙っていた。先ほどお茶を持ってきた竜人の娘が、料理の用意ができたと伝えにきた。

 ジェラードは、席を立つと、勝手知ったる様子で家の奥へ歩きだした。俺と加藤がその後を追う。

 付きそいの白竜族三人は、さっきの部屋に残るようだ。


 ジェラードは、綺麗な木目があるドアを開けると、中に入っていった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

一癖ありそうな美しい竜人の若者ジェラード。

彼が史郎に接触してきた意図は、果たして何なのか?

 明日へつづく。

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