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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第6シーズン 竜人世界ドラゴニア編
229/927

第227話 竜人世界編 第31話 草原でのボードサーフィン

 このタイミングでグラス・サーフィンですと?

いやー、史郎君といえども、のんびりしすぎじゃないか?


 ラズロー邸から、イオの家に帰ってきた俺とリーヴァスさんは、加藤から襲撃の報告を受けた。


 俺は、豚小屋に入れられた男を引っぱりだし、拘束を点魔法に代えておいた。

 点魔法で一人用ボードを出し、それに男を載せ、近くの空き地まで運ぶ。

 まだ目を覚まさない男は、明らかに両手と片足の骨が折れていた。

 とりあえず、手足は後回しにし、体幹部だけ治癒魔術を施しておく。


「ぐぐぐっ」


 うめき声を上げ、男が目を覚ました。魔術灯が、男の細面を照らしだした。

 目の前に俺がいるのに、ヤツは素知らぬ振りをしている。


「ここに来た目的は、何だ?」


 男が答えないと分かってはいたが、儀礼的に尋ねた。

 男は、黙ったままだ。


「しかし、コテンパンにやられたな」


「あの男は、誰だ?」


 おっ? しゃべったぞ。

 加藤には、興味があるようだ。


「お前は、馬鹿か? 

 この状況で、自分が訊きたいことだけ訊けると思ってるのか?」


 俺は、感情のこもらぬ声を作った。

 男が、再び黙る。

 かなり鍛えられた男だというのが分かる。手足の骨折は、ひどく痛むはずだ。それなのに、うめき声一つ漏らさないどころか、表情にも出していない。


「よく聞け。

 次にお前が俺の関係者に近づいたら、お前の命は無い」


 俺は、足元の石を三十メートルほど投げた。

 コトンと石が地面に落ちる音がする。


「この距離を覚えておけ。

 この内側に入れば、死が訪れるぞ」


 これは、冗談ではない。ヤツの身体には、言った通りに設定した点を着けてある。今はその機能をオフにしてある。

 俺は、ヤツの骨折部分に添え木をすると、治癒魔術を掛けた。杖として使える、枝切れも渡してやる。


「二度と俺たちの前に現れるな」


 俺は、男をそこに置き、立ちさった。観察用の点は、奴の頭上一メートルに設定した。

 イオの家に向かい、数歩だけ歩いて振りかえると、奴の姿は消えていた。危険な奴だ。加藤がいなければ、イオとネアさんは、無事で済まなかったろう。

 すぐに奴につけた点の機能をオンにしておいた。


 この件で、俺は、自分たちが非常に細いロープの上に立っているようなものだと気づかされた。


 ◇


 翌日は、月に一度、商店街が休みになる日だったので、俺と仲間たちは、各自が思い思いの過ごし方をしていた。


 ルルは、竜王花のお茶について尋ねたいことがあるとかで、ラズローの所へ出かけた。リーヴァスさんも、同行している。


 先日、ラズロー邸で竜闘の打ちあわせをした後、模擬刀を使った手あわせがあった。

 ポンポコリンからは、リーヴァスさんが出たのだが、彼が余りに強いので、ラズローの下で働く若い衆ばかりか、ラズロー本人まで、弟子入りを希望した。

 弟子は取れないが、と断った上で、今日は訓練につきあうことになっている。ミミとポルも、この訓練に参加する。

 コリーダとリニアは、イオとネアを手伝い、家事と明日から売る商品の仕込みを行う。

 加藤は、彼女たちの護衛を買ってでてくれた。


 俺は、ナルとメルをボード遊びに連れていくことにした。ボードでは師匠格である、コルナも一緒に行く。


 俺たち四人は、竜人世界に転移したときに降りたった、草原に瞬間移動した。


 ◇


 見覚えがある草原は、通り雨が過ぎた後なのか、地面が少し湿っていた。

 空を見ると、遠くに巨大な雨雲が見える。この世界に来た時、上空から観察した台風かもしれない。こちらに来そうなら瞬間移動で都に帰ろう。そう決めて、四人分のボードを出す。


 皆、ワクワクした顔でそれを受けとる。本当は三人分でいいのだが、ナルとメル、そして、点ちゃんがそれを許してくれなかった。


『(*'▽')v ご主人様ー、私もブイブイいわせたいです』


 点ちゃん……ブイブイいわせるって、どこで聞いたんだろう。


 台地の端の方には行かないよう打ちあわせ、ボードで滑りはじめる。微風が吹く緑の草原を、ボードで滑るのは爽快だ。草が、緑なす波のようだ。

 コルナたち三人のボードは、複雑な軌跡を描き、縦横無尽に草原を駆ける。


「うわー!」

「気持ちイー!」


 ナルとメルが楽しそうだ。

 三人程ボードがうまくない俺は、見失わないよう着いていくのがやっとだ。

 俺が疲れてきたのが分かったのだろう、点ちゃんは、待ちきれない感じだ。


『つ(・ω・) ご主人様……そろそろ』


 いいよ。どうぞどうぞ。

 点ちゃんには、ずっと働いてもらってるからね。


『(^▽^)/ わーい!』


 点ちゃんに、ボードのコントロールを渡す。

 急に弾かれたように加速したボードが、一気に三人を追いこす。


 コルナが何か叫んでいるが、俺には聞いている余裕すらない。

 緑の絨毯の上を、物凄いスピードでボードは進む。ボードが風を切る音がする。


『(*'▽')b さあ、大技いきますよー』


 悪い予感がしたときには、すでに手遅れだった。

 トップスピードで台地の端に突っこんだボードは、俺を乗せたまま、崖から飛びだした。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

次回、久々に新スキル獲得。

 お楽しみに。

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