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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第6シーズン 竜人世界ドラゴニア編
226/927

第224話 竜人世界編 第28話 四竜社にて

 史郎は四竜社でビギと向かいあいます。


 俺を含めた三人が、四竜社よんりゅうしゃに出向く日が来た。


 リーヴァスさん、ポル、俺、加藤の四人は、迎えが来るまで、打ちあわせを行っていた。今日いきなり戦闘を仕掛けたりはしないだろうが、念のためだ。

 四竜社についての情報は、ばらまいた点から次々に入ってきていた。ビギを始め、すでに目ぼしい者には点が着けてある。

 ヤツがこちらに探りを入れはじめたのも察知していた。


「じゃ、加藤。

 後は頼んだぞ。

 奴らが何か仕掛けてくるのは竜闘開始前後だと思うが、油断しないほうがいいからな」


「おう、任せておけ。

 それよりお前こそ気をつけろよ」


「ああ、分かってるよ」


 加藤は俺の肩を叩くと、イオの家に入っていった。それを見計らったように、四頭立ての馬車ならぬ、鹿車が到着した。

 御者の席から、先日やってきた若者ミマスが降りてくる。


「お早うございます。

 本日は招待を受けてくださりありがとうございます」


 まあ、点の映像で彼とビギのやり取りは見ているから、「招待」などでは無いと分かってるけどね。


「お早う。

 これに乗ればいいのですな?」


 リーヴァスさん、ポル、俺の順に鹿車に乗る。

 四頭立てだからだろう、先日のラズローの鹿車とは比べ物にならないスピードで街中を駆けていく。

 あっという間に門から出ると、草原の道を、森とは反対方向に進む。

 前方に丘が見えてくる。


 鹿車は草原を突っきると、丘のふもとの大きな建物の前で停まった。


 ◇


 四竜社が入る建物は、丘の下を取りまく建物群の中でも一際大きなものだった。


 建物は、丘の頂上に向けて斜めに建てられている。多くの窓がこちら向きに開いていた。内部へ陽の光が入ることを重視した設計なのだろう。この建物が丘の一部を削り、地下を設けていることまで分かっていた。

 点ちゃんが丘周辺の立体マップを作っている。


 その建物が平坦地と接する所に、大きな開口部があった。それはアーチ型をしており、象でも通れそうだ。

 ミマスに案内された俺達は、その入り口を潜り、前方に現れた階段を上がる。数回の踊り場を挟んで、階段を百段は上がっただろう。

 最上層に着いた後は、左に曲がり、通路を進んでいく。

 ミマスは大きな木製扉の前で立ちどまった。


「こちらです」


 ミマスがドアを開け、俺たち三人は中に入った。


 ◇


 部屋の中は十五畳ほどの空間で、外側に十畳ほどの広いテラスが付いていた。


 外側から窓のように見えていたのは、テラスの開口部だった。テラスと部屋との間は開けはなたれており、草原を渡ってきた風が壁のタペストリーを揺らす。

 室内には大きな長方形のテーブルが置かれており、その三辺に竜人が座っていた。


 俺たちは、残る一辺に座るよう促された。

 こちらから見て左に青竜族、赤竜族がそれぞれ二人ずつ、右に白竜族と、黒竜族がやはり二人ずつ座っている。

 赤竜族の一人はラズローだ。彼は俺たちと初対面であるかのような素ぶりをしている。

 白竜族は初めて見たが、銀色に近い白髪で、若い方の竜人は、女性と見まがうばかりの繊細な顔立ちをしていた。


 奥に一人で座っている壮年の黒竜族がビギだというのは、点ちゃんからの情報で分かっている。


「君たちが迷い人だな。

 ドラゴニアにようこそ。

 私は四竜社のかしら、ビギという」


「初めまして。

 私はリーヴァスと申します。

 こちらは、ポル、シローです」


 ビギの挨拶にリーヴァスさんが応じた。

 ビギの左に座っている、太った赤竜族の男性が問いかける。


「どのようにしてこの世界に?」


「どうやらランダム・ポータルの転移に巻きこまれたようです」


 これは、あらかじめ打ちあわせてあったセリフだ。


「こちらには何人で?」


「合わせて十人ですな」


「なぜ、そのような大人数で転移を?」


 これは白竜族の若者からの質問だ。彼は顔立ちだけでなく、声も美しかった。


「谷間を皆で歩いているとき、いきなりポータルが現れましてな」


 このセリフも、打ちあわせ通りだ。


「なるほど、それに巻きこまれた人もいたのですね?」


「ええ、この二人がまずポータルに飲みこまれて、その後、私を含め残りの八人が巻きこまれました」


 リーヴァスさんがポルと俺を指す。


「なるほど。

 だから、最初二人だけが都に来たのですね」


 白竜族の若者が発言したが、それをさえぎるように黒竜族の一人が発言する。


「その二人は、役所で騒動を起こしておる」


「ほう。

 騒動とは?」


 リーヴァスさんは、知らないふりをしている。


「悪臭をまき散らしたと聞いておる」


「いきなり牢へ捕らえられただけで、特に何もしていませんよ」


 俺がとぼける。


「何を言うか! 

 青竜族の役所から報告が来てるんだぞ」


「で、決めつけるだけの証拠はあるのでしょうね?」


 俺は穏やかな口調で言いながら、黒竜族の男を正面から見た。


「くっ、そ、それは、彼らがそう言っておる!」


「おや? 

 誰かがそう言っているだけで、証拠は無いと?」


「ええいっ! 

 うるさいわっ!」


 人間ならば四十代に見える黒竜族の男は、こめかみに筋が浮かびあがっている。


「トール、その話はそこまでだ」


 ビギが場を収める。

 立ちあがりかけていたトールという男は、こちらを憎々し気に睨んだまま腰を降ろした。


「あなた方を罪に問うつもりはない。

 ただ、このままでは納得のいかぬ者もいる」


 ビギはそういいながら、トールの方をチラリと見た。


「そこで提案なのだが、我々の伝統行事に参加していただきたい」


「伝統行事といいますと?」


 今度は、リーヴァスさんがとぼける。


「私が説明しましょう」


 青竜族の一人が発言を求める。


「ハルト。

 では、説明してくれ」


 ビギが許可を出す。


「参加して頂く伝統行事は、『竜闘』と呼ばれるものです。

 竜舞台において一対一で戦います。

 戦いといっても審判もいますし、危ないと思ったら場外に出ればいいわけですから、それほど危険はありません」


 その発言が嘘だと分かっている俺たち三人は、顔を見あわせた。


「死ぬようなことはありませんか?」


 俺が指摘する。


「ええ、普通はありませんよ」


 ラズローと白竜族の若者が顔を伏せる。竜人にも恥を知る者はいるようだ。


「降参を宣言すれば、負けとなるのですな。

 その後で、攻撃されたりはせぬのですかな?」


「……ええ、されません」


 青竜族の男が答えるまでの一瞬のためらいが、全てを物語っていた。


「負けたらどうなるのでしょうか?」


 ポルが打ちあわせてあったセリフを言う。


「特に何もありませんよ。

 参加していただければ、迷い人としての登録もこちらで行っておきます」


「全員が参加する必要があるのでしょうか? 

 私たちには、小さな子供もいるのですが」


 これは俺が質問した。


「もちろん、その必要はありません。

 今のところ、五対五の形式を考えています」


 なるほど、このハルトという青竜族の男が、ビキの下で竜闘を運営するわけか。


「五人ですか。女性が参加してもよろしいか? 

 男性は、四人しかいません」


「ああ、男性が足りなければ、竜人に協力を求めることもできる。

 そうだな、ラズロー」


 ビギが口の端を吊りあげながら、ラズローに話を振る。


「ええ、それも可能です」


 ラズローは、顔色一つ変えずに答えた。


「では、お前の所で、何とかしてやれ」


 ビギは、薄ら笑いを浮かべながら畳みかけた。


「分かりました」


 ラズローが静かに答えた。


「では、話しあいは、これで終わりだ。

 皆、『竜闘』がつつが無く終えられるよう力を尽くせ」


 ビギが竜人たちを見回す。


「「「天竜の庇護の下に」」」


 ビギ以外の八人の竜人がそう言って頭を下げると、立ちあがった。

 俺たち三人も促され、席を立つ。


 他の竜人が部屋から出るのを追う形で、廊下に出る。


 ◇


 廊下ではミマスが待っていた。


 帰りも彼が俺たちを案内するようだ。

 八人の竜人は通路の反対側へ向かうようだ。


 俺たちが歩きだしてすぐ、後ろから足音がした。


「そういえば、私もこちらですることがあったのだ。

 ご一緒していいかな?」


 振りむくと白竜族の若者がいた。近くで見ると、さらにその美しさが際立っている。涼し気な目が印象的だ。身長は、百九十センチほどあるだろう。顔つきからは想像できないくらい、鍛えられた体躯をしている。

 ミマスは少し困ったような顔をしたが、相手の方が役職が上だと考えたのだろう、若者に礼をした。


 長い廊下を歩く間に、白竜族の若者はいつの間にか俺のすぐ横に並んでいた。歩幅が違うので、少し歩きにくそうだ。


「シローと言ったか。

 私は、白竜族のジェラードだ。

 君と少し話がしたい。

 時間を取ってくれるか?」


 彼は前を行くミマスに聞こえないよう、囁きかけてきた。

 俺は少し考えてから返事をした。


「いいですよ。

 俺は、青竜族の都で商売をやっています。

 商業区の『ポンポコ商会』まで来ていただければ会えます」


「そうか。

『ポンポコ商会』だな。

 なるべく早く行くことにするよ」


 彼は俺の肩を軽く叩くと、列から離れた。


「私は、ここで失礼する」


 そう言うと、颯爽と去っていった。

 なんか、リア充の匂いがするやつだな。


『(・ω・)ノ ご主人様、そういうことは考えない方がいいよ?』


 なぜか疑問形になっている点ちゃんの意見を聞きながし、俺は白竜族の若者が何の目的で近づいてきたか、それに考えを巡らすのだった。


 いつもお読みいただきありがとうございます。

竜人社会のトップが集結という感じでした。

白竜族の若者が気になりますね。

 では、明日へつづく。

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