第223話 竜人世界編 第27話 迷い人の情報
四竜社が動きます。
四竜社へ向かう前日、俺はかねてからしようと考えていたことを行った。
それは、上空から都市を見ておくことだ。
転移直後にも上空からの観察はしたが、あれは大陸の形などを確認する大まかなものだったからね。
すでに、青竜族の都であるこの都市、そして、赤竜族の都である隣の都市があることは、分かっている。
夜が明けるぎりぎりの時間を見計らい、点ちゃん1号を透明モードで出す。俺一人が乗りこみ空へ上がる。
俺たちが滞在している都市の形が見えてくる。それは、ほぼ円形をしていた。
さらに上昇すると、同じような形の都市が、合わせて四つあることが分かった。正方形の各頂点に位置するように四つの円形都市があり、その中心に、丘のようなものがある。丘の麓には、それを取りかこむように建物群が見える。丘の上にも、一つだけ大きな施設があった。
情報収集のための点をばらまく。各円形都市にまんべんなく、そして、丘の周辺にはやや多めにまいておく。四竜社は、丘の周辺施設のどれかだろうからね。
仕事を終えた俺は、水平線から昇る朝日を眺めながら、ゆっくりお茶を飲むのだった。
◇
四竜社の執務室では、ビギがミマスから報告を受けていた。
「それで、そいつらは、ここに来るのか?」
ビギが、不機嫌な声でそう言う。
それは、そうだろう。目の前に立つ若い竜人は、すでに一度任務に失敗しているのだ。
「はあ、手紙は、受けとってもらえました」
「なんだとっ!
『受けとってもらえた』とは、なんだ!
お前は、黒竜族としてのプライドが無いのか!」
若い竜人ミマスは、その大柄な体を小さくしている。
「もうよいわ!
もし、ヤツらが呼びだしに応じぬ時は、お前も同罪だ」
「そ、そんな……」
「さっさと出ていけ!」
ビギは、汚らしいモノでも見るような目で、ミマスを見た。
若者は、すごすご、部屋から出ていった。
「全く、最近の若い者は、なっとらん!」
ビギが、机を拳で叩くと、机の上から筆記具が飛散した。
そこへ、ノックの音がする。
「入れ」
不機嫌な声で、許可を出す。
赤竜族の男が入ってくる。年のころは、四十代だろう。竜人には珍しく、お腹が出ている。
「報告があります」
「何だ?」
「ラズローと、例の迷い人が接触したようです」
「なに?
何が目的か、分かっているのか?」
「ヤツの娘が、迷い人がやっている店に押しかけたようなんです」
「店?
商売の許可など、出していないはずだぞ」
大体、商売しようにも、迷い人には元手が無いはずだ。
「その時、迷い人が、二十人ほどの武装した赤竜族を倒したということです」
「なにっ!?
迷い人は、少年だったはずだが」
「それが、新しく現れた迷い人が合流したようなのです。
赤竜族を倒したのは、老人という話でした」
「なにっ?
老人が、二十人をか?」
「はい、瞬く間に制圧したそうです」
「その男は、竜人か?」
「いえ、人族のようです」
「馬鹿を言うな!
人族など、一対一でも、竜人に勝てぬわ」
「しかし、目撃者によると……」
「いい加減な情報に踊らされるな。
それより、新しく現れた迷い人は、一人か?」
「いえ、女子供を含めて、五人はいると思われます」
一体、どういうことだ? ランダム・ポータルが、そんなに都合よく開くはずはない。同じ時に転移して、遅れて都にやって来たのだろう。
ただ、万が一の事がある。隠しポータルの確認をしておく必要があるか。追放用ポータルの方は、問題あるまい。
「よし、さらにその辺のことを詳しく調べろ」
「はっ、分かりました」
赤竜族の男は、一礼すると、部屋から出ていった。
ラズローと迷い人か。嫌な組みあわせだな。
ビギは、少し考えた後、特別な笛を口にくわえた。笛からは、妙に甲高い音がした。
間もなく、部屋に黒竜族の男が入ってきた。全身を黒く光沢がある衣服で覆っている。その男の冷たく鋭い目つきは、蛇を思わせた。
男は、ビギの前に片膝をつき、頭を下げた。
「ご用でしょうか?」
「うむ。
青竜族の都にやってきた、迷い人を探れ」
「はっ」
「くれぐれも、覚られぬようにな」
黒服は、頭を下げると、スルスルと部屋から出ていった。動きまで蛇を思わせる。
「念には念を入れんとな」
男が去った後、ビギは薄笑いを浮かべていた。
いつもお読みいただきありがとうございます。
黒竜族の族長ビギがいい感じで悪るだくみしています。
次回、シロー、ポル、リーヴァスが四竜社へ。
大丈夫かね、そんなところへ行って……。
では、あすへつづく。




