第212話 竜人世界編 第16話 リーダーを追って2
ケーナイの町に集まった史郎の仲間達。
皆の協力で、彼らは、追跡を始めます。
彼らは、どうやって史郎にたどりつこうというのでしょうか?
次の日、ケーナイのギルドでは、冒険者の威勢いい声が、朝から飛びかっていた。
「おう!
それは、こっちじゃねえのか?」
「いや、大きさと形の指定があるから、同じものだが、こちらに入れるぞ」
「分かったぜ」
冒険者たちは、自分が出来る仕事を見つけ、キビキビと働いている。それは、アンデにとって、ギルマスとしての充実感を覚える時でもある。
彼は、部屋の隅に控え、あまり口だしをせず、皆の仕事に目を配っていた。
その時、外が騒がしくなると、ピエロッティがドアから入ってきた。彼が開けたままにしたドアから、聖女が入ってくる。
「せ、聖女様!」
冒険者たちが、膝をついて礼をする。
聖女は、みなに立ちあがるよう、手を振った。
「聖女様、このように朝早く、何のご用です?」
「猫賢者さんから頼まれていたものを、持ってきましたよ」
彼女がピエロッティに合図すると、彼は肩に下げたカバンから、布に包まれたものを取りだした。聖女がそれを受けとり、手の上で布をめくる。
そこには、二つの大きな青い魔石があった。
「こ、これはもしや、治癒の魔石では?」
「ええ。アリストにいる時に、向こうのギルドから、これを用意するように言われて持ってきたのです。
猫賢者さんが、使い方を教えてくれて、準備が出来ました」
「このように貴重なものを、どこから?」
「アリストの宝物庫です」
「えっ!?
では、国宝なのでは?」
「女王陛下から、下賜されました」
アンデが、呆れた顔をする。
「女王陛下は、シローの友人なんですよ」
「ええっ!」
アンデは、シローの顔の広さに驚いていた。
「驚くのは、まだ早いですよ。
出発は、明日でしょう?
その時、もっと驚くものを用意しています」
アンデは、さすがにこれ以上驚くことはないだろうと思ったが、黙っておいた。
「聖女様、シローのため、本当にありがとうございます」
「ええ。
そ、それは、当たり前です」
赤くなった聖女を見て、「シローの奴め!」と思ったが、アンデは、それを顔に出さないようにした。
◇
リーヴァスたちが転移を試みる、その日が来た。
猫賢者の勧めで、転移する場所には、史郎がポータルに落ちた、『竜の顎』が選ばれた。時間は、その時と同じ、日の出とした。
日の出前の薄明りの中、アンデが、当日の事を思いだしながら、史郎が転移した位置の特定をしている。
「俺が隠れていたのがこの岩で、台車が止まっていたのがあそこだから……」
冒険者の一人が、旗を持ち、犯人が台車を停めていた場所を示している。地面に残った足跡も計算に入れ、史郎が転移した位置が決まった。
猫賢者が、近づいてくる。
「宝玉の高さは、どのくらいじゃった?」
「このくらいです。
そのあと、浮上して、このくらいまで上がりました」
アンデが、へその辺りと胸の辺りを指ししめす。
「なるほどのう」
猫賢者は、目を閉じ、何か計算しているようだ。指が、空中に文字を書いている。
「よし、ここらでいいじゃろ。ニャン」
彼は、アンデが特定したところから、三メートルほど離れた地面に、杖で印を描いた。
ギルメン、聖女が見守る中、ポンポコリンのメンバーがいよいよ転移に向けて動きだそうとしたとき、遠くから声が聞こえた。
「おーい、待ってくれー!」
朝焼けに染まる谷あいの道を、恐るべきスピードで走ってくる影がある。影は聖女の横で止まると、黒髪の少年となった。
冒険者たちが、戦闘の構えをとる。
ピエロッティが、すかさずそれを手で制し、深々と礼をした。
「勇者様」
「「「ええっ!!」」」
加藤を知らない者が、一斉に声を上げる。
「加藤君、もう、何してるの!」
聖女舞子が、珍しくきつい声を出す。
「いや~、寝坊しちゃった。
ごめんごめん」
「ゆ、勇者……。
しかも、黒髪」
アンデが、口をぽかんと開け、驚いている。
「勇者殿、この度は、シローのために、ご助力感謝する」
加藤の参加を前もって聞いていた、リーヴァスが礼をする。
「いや、奴は俺の親友だから、礼はいらないよ。
むしろ、こっちが、お願いしなくちゃ」
加藤が頭を下げる。
それを見ていたアンデが、聖女に尋ねる。
「聖女様、彼は一体?」
「この勇者は、シローの友人です。
今回の旅には、自分から希望して参加しました」
「「「ええっ!」」」
アンデだけでなく、冒険者たちからも、驚きの声が上がる。
「さあ、そろそろじゃ。ニャニャ」
猫賢者の声が谷間に響くと、崖の先端が金色に光りだす。日の出だ。
リーヴァスが宝玉を取りだし、猫賢者の杖が示す高さに持ちあげる。
猫賢者が片手を上げる。その合図を受け、ポンポコリンのパーティメンバーと加藤を除き、みんなリーヴァスから遠ざかった。
「マンマ……」
ルルに抱えられたナルが寝言をもらす。メルもコルナに抱かれて寝っている。
猫賢者は、手を振りおろすと、呪文を唱えはじめた。
リーヴァスが掲げた手の上で、黒い宝玉が紫色の光を発する。三つの玉が空中にゆっくり浮きあがると、回転を始めた。
その上に、黒い靄が現れる。
ポータルだ。
ポンポコリンのメンバーは、お互いに視線を交わし頷くと、ポータルに近寄った。まず、リーヴァス、そして、子供たちを抱えたルル、コルナがポータルを潜る。
コリーダ、ミミの姿が消えると、後は加藤だけになった。
彼は、舞子の方を見て、ニヤリと笑う。
「ボーには、返しきれない借りがあるからな。
その三分の一くらい、返しに行くよ。
必ず連れかえるから、安心してくれ」
「加藤君も、気をつけるのよ。
できるなら、史郎君と二人で帰ってきて」
「ああ。
じゃ、行ってくる」
彼は、コンビニにでも行く気安さで片手を上げると、そのままポータルを潜った。
後には、旅立った皆の無事を祈る、聖女の姿があった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
ついにポータルを開くことに成功したリーヴァス一行。
果たしてうまく転移できるのでしょうか?
明日へつづく。




