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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第6シーズン 竜人世界ドラゴニア編
214/927

第212話 竜人世界編 第16話 リーダーを追って2

 ケーナイの町に集まった史郎の仲間達。

皆の協力で、彼らは、追跡を始めます。

彼らは、どうやって史郎にたどりつこうというのでしょうか?


 次の日、ケーナイのギルドでは、冒険者の威勢いい声が、朝から飛びかっていた。


「おう! 

 それは、こっちじゃねえのか?」


「いや、大きさと形の指定があるから、同じものだが、こちらに入れるぞ」


「分かったぜ」


 冒険者たちは、自分が出来る仕事を見つけ、キビキビと働いている。それは、アンデにとって、ギルマスとしての充実感を覚える時でもある。

 彼は、部屋の隅に控え、あまり口だしをせず、皆の仕事に目を配っていた。


 その時、外が騒がしくなると、ピエロッティがドアから入ってきた。彼が開けたままにしたドアから、聖女が入ってくる。


「せ、聖女様!」


 冒険者たちが、膝をついて礼をする。

 聖女は、みなに立ちあがるよう、手を振った。


「聖女様、このように朝早く、何のご用です?」


「猫賢者さんから頼まれていたものを、持ってきましたよ」


 彼女がピエロッティに合図すると、彼は肩に下げたカバンから、布に包まれたものを取りだした。聖女がそれを受けとり、手の上で布をめくる。

 そこには、二つの大きな青い魔石があった。


「こ、これはもしや、治癒の魔石では?」


「ええ。アリストにいる時に、向こうのギルドから、これを用意するように言われて持ってきたのです。

 猫賢者さんが、使い方を教えてくれて、準備が出来ました」


「このように貴重なものを、どこから?」


「アリストの宝物庫です」


「えっ!? 

 では、国宝なのでは?」


「女王陛下から、下賜かしされました」


 アンデが、呆れた顔をする。


「女王陛下は、シローの友人なんですよ」


「ええっ!」


 アンデは、シローの顔の広さに驚いていた。


「驚くのは、まだ早いですよ。

 出発は、明日でしょう? 

 その時、もっと驚くものを用意しています」


 アンデは、さすがにこれ以上驚くことはないだろうと思ったが、黙っておいた。


「聖女様、シローのため、本当にありがとうございます」


「ええ。

 そ、それは、当たり前です」


 赤くなった聖女を見て、「シローの奴め!」と思ったが、アンデは、それを顔に出さないようにした。


 ◇


 リーヴァスたちが転移を試みる、その日が来た。


 猫賢者の勧めで、転移する場所には、史郎がポータルに落ちた、『竜のあぎと』が選ばれた。時間は、その時と同じ、日の出とした。

 日の出前の薄明りの中、アンデが、当日の事を思いだしながら、史郎が転移した位置の特定をしている。


「俺が隠れていたのがこの岩で、台車が止まっていたのがあそこだから……」


 冒険者の一人が、旗を持ち、犯人が台車を停めていた場所を示している。地面に残った足跡も計算に入れ、史郎が転移した位置が決まった。

 猫賢者が、近づいてくる。


「宝玉の高さは、どのくらいじゃった?」


「このくらいです。

 そのあと、浮上して、このくらいまで上がりました」


 アンデが、へその辺りと胸の辺りを指ししめす。


「なるほどのう」


 猫賢者は、目を閉じ、何か計算しているようだ。指が、空中に文字を書いている。


「よし、ここらでいいじゃろ。ニャン」


 彼は、アンデが特定したところから、三メートルほど離れた地面に、杖で印を描いた。

 ギルメン、聖女が見守る中、ポンポコリンのメンバーがいよいよ転移に向けて動きだそうとしたとき、遠くから声が聞こえた。


「おーい、待ってくれー!」


 朝焼けに染まる谷あいの道を、恐るべきスピードで走ってくる影がある。影は聖女の横で止まると、黒髪の少年となった。

 冒険者たちが、戦闘の構えをとる。

 ピエロッティが、すかさずそれを手で制し、深々と礼をした。


「勇者様」

 

「「「ええっ!!」」」


 加藤を知らない者が、一斉に声を上げる。


「加藤君、もう、何してるの!」


 聖女舞子が、珍しくきつい声を出す。


「いや~、寝坊しちゃった。

 ごめんごめん」


「ゆ、勇者……。

 しかも、黒髪」


 アンデが、口をぽかんと開け、驚いている。


「勇者殿、この度は、シローのために、ご助力感謝する」


 加藤の参加を前もって聞いていた、リーヴァスが礼をする。


「いや、奴は俺の親友だから、礼はいらないよ。

 むしろ、こっちが、お願いしなくちゃ」


 加藤が頭を下げる。

 それを見ていたアンデが、聖女に尋ねる。


「聖女様、彼は一体?」


「この勇者は、シローの友人です。

 今回の旅には、自分から希望して参加しました」


「「「ええっ!」」」


 アンデだけでなく、冒険者たちからも、驚きの声が上がる。


「さあ、そろそろじゃ。ニャニャ」


 猫賢者の声が谷間に響くと、崖の先端が金色に光りだす。日の出だ。

 リーヴァスが宝玉を取りだし、猫賢者の杖が示す高さに持ちあげる。

 猫賢者が片手を上げる。その合図を受け、ポンポコリンのパーティメンバーと加藤を除き、みんなリーヴァスから遠ざかった。


「マンマ……」 


 ルルに抱えられたナルが寝言をもらす。メルもコルナに抱かれて寝っている。

 猫賢者は、手を振りおろすと、呪文を唱えはじめた。


 リーヴァスが掲げた手の上で、黒い宝玉が紫色の光を発する。三つの玉が空中にゆっくり浮きあがると、回転を始めた。

 その上に、黒いもやが現れる。


 ポータルだ。


 ポンポコリンのメンバーは、お互いに視線を交わし頷くと、ポータルに近寄った。まず、リーヴァス、そして、子供たちを抱えたルル、コルナがポータルを潜る。

 コリーダ、ミミの姿が消えると、後は加藤だけになった。

 彼は、舞子の方を見て、ニヤリと笑う。


「ボーには、返しきれない借りがあるからな。

 その三分さんぶんいちくらい、返しに行くよ。

 必ず連れかえるから、安心してくれ」


「加藤君も、気をつけるのよ。

 できるなら、史郎君と二人で帰ってきて」


「ああ。

 じゃ、行ってくる」


 彼は、コンビニにでも行く気安さで片手を上げると、そのままポータルを潜った。


 後には、旅立った皆の無事を祈る、聖女の姿があった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

ついにポータルを開くことに成功したリーヴァス一行。

果たしてうまく転移できるのでしょうか?

 明日へつづく。

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