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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第6シーズン 竜人世界ドラゴニア編
212/927

第210話 竜人世界編 第14話 濡れ衣

 リニアが竜人世界を追放された理由が判明します。

そこには、これから史郎達にもかかわる、危険な秘密がありました。


 黒竜族族長ビギは、四竜社よんりゅうしゃの入る建物で、竜闘りゅうとうの計画を練っていた。


 もう長いこと、竜闘が開かれていない。彼が知る限り、最も長い期間のはずだ。そろそろ開催しないと、その筋の不満が収まらないだろう。

 そこへ、事務を担当する、赤竜族の若者が入ってきた。


かしら、青竜族の役所から連絡です」


「何だ?」


「黒竜族の女が森で保護されたようなのですが、リニアという追放者の疑いがあります」


 リニアだと! 本当にあの女なら、都合が悪い。すぐに、対処すべきだろう。


「竜兵を十人送り、すぐこちらに護送しろ」


「じゅ、十人ですか」


「そうだ。

 そのとき、しゃべれぬよう、猿轡さるぐつわをするのを忘れるな」


「はい、分かりました」


「あと……」


「なんだ?」


「その女を連れてきたのが、迷い人のようなのです」


「迷い人か」


 これは、竜闘のネタに使えそうだな。


「どんな奴らだ?」


「人族と、獣人のようです。

 どちらも少年だということでした」


 少年か。材料としては不足だが、何とかなるだろう。


「よし、そいつらも、連れてこい」


 気が短い彼を恐れるように、青年は、そそくさと部屋を出ていった。


 思わぬところから竜闘のきっかけが舞いこみ、ビギは、一人ほくそ笑んでいた。


 ◇


 俺とポルは、豪華な部屋でくつろいでいた。


 エルフの国ほどではないが、クッションやソファーの座り心地は、なかなかのものだ。

 点ちゃん収納から、お菓子やジュースを出し、それをテーブルに並べていく。ポルが、さっそく手を伸ばしている。

 黒竜族の女は、かなり顔色が良くなり、ソファーに座っている。


「リニアさん、あなたも、遠慮なくどうぞ」


「ありがとう」


 初めはほとんど口を利かなかった彼女も、少しずつ会話するようになってきた。

 俺は、かねてから聞きたかったことを、尋ねることにした。


「答えにくいなら答えなくてもいいけど、どうして追放なんていう目にあったんです?」


 ジュースを飲みかけていた彼女の手が停まる。答えようかどうしようか、迷っているようだ。


「そうですね。

 私を連れていることで、あなた方に、ご迷惑がかかるかもしれません。

 話しておいた方がよいでしょう」


 彼女は、暗い顔で話しはじめた。


「父は、四竜社よんりゅうしゃという、この国の中央組織で書類仕事をしていました。

 あるとき、上司から大切な話がある、と言われたそうです」


 なるほど、その中央組織が四種族を束ねている訳か。


「父の上司は、組織上層部の汚職に気づいたそうです。

 それを告発しようとしたやさき、彼は殺されてしまいました。

 その場には、父の竜刀が落ちていました。

 父は、その事で『ついの森』に送られました」


 リニアは、悲痛な顔をしている。


「父が、彼を殺せるはずが無いのです!

 なぜなら、事件があった夜、病気で寝込んだ私の看病を、ずっとしていたんですから」


「あなたは、それを訴えたんですね?」


 俺にも、おおよその筋が見えてきた。


「ええ、何度も。

 その結果、私も殺害に関わっていたと濡れ衣を着せられて、追放処分となりました」


 なるほどねえ。どこの世界にも、似た話はあるもんだ。


「濡れ衣を着せたのが誰か、分かってるの?」


「恐らく、黒竜族族長のビギという男だと思います。

 父が連れていかれた時も、私の時も、彼の息が掛かっている竜兵が現れましたから」


「そのビギという男は、どんな立場なんです」


「四竜社のかしらです」


 なるほど。国家元首のような立場にある者の、汚職に触れてしまったのか。


「あなたが再び捕まれば、どうなるのかな?」


「再び追放になるか、恐らく今回は、『終の森』送りでしょう」


「俺たちにも迷惑が掛かる、と言っていたが?」


「ええ、ヤツらは、あなたにも何か仕掛けてくるに違いありません。

 こうして、私があなたに事情を話さなくても、話したという判断で、行動を取るに違いないのです」


 それは、そうだろう。


「あなたたちがすべき事は、私をここに残して、逃げだすことです。

 しかし、ポータルがどこにあるか分かりませんから、逃げだすことに、意味があるかどうか……」


「リニアは、追放の時、ポータルを使ったのだろう?」


「ええ。

 でも、その時は、眠り薬を嗅がされた状態でした」


 なるほどねえ。ビギと言うヤツ、用心深いな。

 その時、ノックの音がして、先ほどのハゲおじさんが入ってきた。


「あなた方に会いたいという人が来ておる。

 会ってもらえるか?」


 俺は、リニアと視線を合わせた。なるほど、彼女もビギという男の関係者が来たと思ってるな。


「いいですよ」


 俺は、気安く返事をした。リニアが、ちょっと驚いた顔をしている。ハゲおじさんは、ホッとした顔をした。


「では、こちらに来てくれ」


 俺たち三人は、階下に降りていく。リニアも、自分で歩いている。

 一階のホールに降りると、テーブルに着いている人々が、ジロリとこちらを見る。彼らも、俺の匂い攻撃を受けちゃったからね。

 ドアの一つを潜ると、そこは中庭のような場所だった。広さは、野球場の内野部分くらいだろうか。

 おじさんは、自分の服をくんくん嗅いでいる。


「まだ、匂いが取れぬような気がするんじゃ」


 そう言うと、こちらを恨めしそうに見る。

 彼は、庭の中央に置いてあるベンチまで、俺たちを案内した。


「ここに座って、待っておれ」


 そう言いすてると、早足に姿を消してしまった。

 俺たちは、それほど待つ必要は無かった。なぜなら、彼の姿が見えなくなるとすぐ、庭の四方から武装した竜人が現れたからだ。


「ビギの手勢です!」


 リニアが、小声で素早く伝えてくる。


 俺たちは、あっという間に、十人ほどの竜人兵士に取りかこまれてしまった。


 いつもお読みいただきありがとうございます。

また、竜闘という言葉が出てきました。

危険な匂いがしますね。

 では、明日へつづく。

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