第188話 聖樹世界編 第55話 里帰り
いよいよ、「聖樹世界編」も最終話です。
一時帰還か、ずっと元の地球世界に戻るか、選ぶことになった史郎。彼の決断は?
次の日、俺は、今回の依頼達成を報告するために、王城へとやってきた。
女王陛下(畑山さん)は、俺たちのために、いろいろ便宜を図ってくれたからね。フィロとキャロも、女王陛下にお礼をするため、一緒に来ている。
俺は、もう一つ、畑山さんにだけ話しておくことがあった。彼女は、ちょっと驚いたが、すぐに自分がすべきことを行った。
その後、俺たちは、フェアリスの二人を連れ、城内の森へ行った。
俺は、久しぶりにウサ子をモフれて満足だった。
驚いたのは、フェアリスの中でも神獣の伝説はあり、二人はウサ子に平伏していた。ウサ子よ、君はどこまで株が上がるのか。
城には、お礼に『フェアリスの涙』を一樽置いて帰った。中身を聞いたレダーマン騎士長が、目を丸くしていた。
◇
俺の家では、家事が急に楽になった。
掃除洗濯はチョイスが、料理はデロリンが、こなしてしまうからね。
チョイスは、家事を担当しているニーナさんというベテランに、その手際を褒められ、まんざらでもなさそうだ。
遊びに来たキツネたちが、デロリンの料理を食べ、驚いていた。料理に興味があるモヤシが、デロリンにつきまとって煩がられている。
食事の後で、コリーダをキツネたちに紹介した。コリーダの美しさに下を向いてしまったキツネたちだが、彼女が元姫君だと分かると、平伏してしまった。
コリーダは、旅の疲れも取れ、顔色も良くなり、元気そうだ。初めて会った時、俺をドキッとさせた瞳の輝きは、今も失われていない。それは、彼女が生来持っている、魅力のようだ。
猪っ子コリンはコリーダにべったりだが、時々ナルとメルと駆けまわって遊んでいる。庭がある家にしておいて、本当に良かったよ。
ルルとコルナは、コリーダの世話が無くなってきたので、フィロさんに、町を案内してあげている。キャロが休みの日は、四人で出かけるのが楽しそうだ。
俺は、ナルとメルと遊ぶほかは、ゴロゴロしていた。
それには、理由があった。
◇
俺たちがアリストに帰ってから、二週間が過ぎた。
俺は、家族を集め、話をすることにした。今日は、デロンチョコンビも、予備の椅子を出して座っている。
「今日は、私から話があります」
俺の真剣な顔を見て、ナルとメルが不安そうな顔をする。
「エルファリアで、最後に『聖樹の島』を訪れた時、フェアリスを助けたお礼として、聖樹様からあるものをもらいました」
俺は、点ちゃん収納から、聖樹様にいただいた、黒い玉を出した。
「この玉が、それです。
これを渡されるとき、聖樹様に、二つの道を選ぶように言われました」
普段と違う俺の口調に、ルルやコルナも不安そうだ。
「これを使えば、俺は、元居た世界に、戻ることができるそうです」
その発言を、みんなが理解するのを待つ。
「ただし、使えるのは一回だけで、元の世界に戻ったまま帰ってこないか、一定時間で帰ってくるかを選ぶように言われました」
「えっ!」
ルルが、悲鳴のような声を出す。
俺は、彼女を正面から見つめ、話を続けた。
「俺は、一定時間で帰ってくる方を選びました。
そして、そろそろ、この玉を使おうと思います」
それは、俺が故郷の世界を捨て、この世界を選んだことを意味していた。
ルルは、不安が少し和らいだようだ。
「俺は、他の三人と共に、この世界に転移しましたが、彼らの家族が心配しているに違いないのです。
だから、彼らの家族に会って、近況を知らせてこようと思います」
ルルは、はっと何かに気づいた顔をした。まあ、彼女なら察すると思ったけどね。
「デロリン、チョイス。
あまり働きすぎて、体を壊さないようにね」
二人が頷く。
「コリーダ。
こちらの世界に慣れないうちに、俺がいなくなるけど、大丈夫かい?」
コリーダは、落ちついている。
「ええ、全く問題ないわ。
だって、あなたは、ここに帰ってくるんでしょ」
「ああ、帰ってくる」
コリーダは、満足そうに頷いた。
「コルナ、ナルとメルを頼めるかな」
「お兄ちゃん、心配しないで。
だって私は、『こーねー』(コルナお姉ちゃん)だもん」
コルナは、ニッコリ微笑んだ。
「ルル、この家と家族を頼むよ」
「シロー、私たちは、大丈夫です」
ルルは、少し不安そうだが、きっぱり言った。
「リーヴァスさん、いつも頼ってばかりで、申しわけないです。
皆をよろしく頼みます」
「あなたの家族にも、会うのですかな」
「にも」のところにアクセントをつけてるってことは、リーヴァスさんもルル同様、気づいたようだ。
「ええ、そのつもりです」
彼は、深く頷いた。
「こちらは任せて、気兼ねなく、行ってらっしゃい」
「ありがとうございます」
最後に、俺はナルとメルの方を向いた。
「パーパが旅行に行っても、大丈夫かな?」
「「だいじょーぶー」」
二人は、すぐに答えた。エルファリアへの旅で、俺たちの絆は少し深まったらしい。
俺は、故郷の世界、地球を訪れると決めた。
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聖樹世界エルファリア編終了 地球一時帰還編の後、竜人世界ドラゴニア編に続く
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明日へつづく。




