第180話 聖樹世界編 第47話 特産品
経済が停滞していた『南の島』。
史郎のアイデアで、何とか突破口がひらけそうです。
バカンスが終わり、『東の島』に帰った俺は、注文を受けた分のコケットを一気に作り上げた。
後は、これを正規品に取りかえていくだけである。苔はそのまま使えるから、ハンモックだけ替えればよい。受注生産にしたからか、余裕もでき、正規品の在庫が次第に増えだした。
販売員は点魔法で作ったコケットとの入れかえで大変な目にあっているが、なんとか商売が軌道に乗ってきたという手ごたえがあった。
そこで俺は、『南の島』のナーデ議長に連絡を取った。
『議長、聞こえますか』
『ああ、聞こえるよ。
少し待ってくれ』
人払いをしているのだろう。
『シロー君、何の用かな?』
『直接お話したいので、そちらにうかがってもいいですか?』
『ああ、それはいいが、君は今どこだ?』
『エルフの王城ですが』
『なら会えるのは、一週間後かな?』
『いえ、今すぐ会えますよ』
『うーん、君は、時々できそうもないことを言うが、今までそれをやってきたからなあ』
『そちらにうかがっても?』
『ああ、ここは中央官庁にある、私の仕事部屋だけど、それでいいかな?』
『では、行きますね』
言葉が終わると同時に、俺はナーデが仕事をしている机の横に立っていた。
「ははは、君とつきあってると、常識が無くなりそうだよ」
「それより議長、今日は、大事なお話があるんですよ」
「何だい?」
「この大陸の特産品を、見つけたんですよ」
「特産品か。
海産物かな?」
「いいえ、『緑苔』です」
「え? 苔が特産品になるのかい?
そう言えば、君の推薦で、モーデ博士の苔研究に予算をつけたな」
「前にお渡しした、コケットのふわふわな素材が『緑苔』なんですよ」
「なんと!
あのふわふわは、『緑苔』だったのか」
「そこで提案なのですが、俺たちの『ポンポコ商会』に『緑苔』を売ってほしいんですよ」
「売るっていっても、生育地にい行けば、いくらでも採れるだろう」
「だから、それを国で管理して、特産品にするのはどうでしょう」
「……君には、なんの得も無い話じゃないか。
むしろ、タダで採っているものに、金を払えば損だろう」
「そうでもありませんよ。
苔と言っても無尽蔵ではありません。
幸い生育スピードは一年と早く、簡単には採りつくせないでしょう。
しかし、今から国で管理するのが大事です」
「しかし、それほどの需要があるかな」
「ええ、それは確実に。
すでに、『東の島』では、コケットがものすごい勢いで売れています」
「ああ、そういえば、私もいろんな筋から、あれが欲しいって言われてるな」
「学園都市世界でも、ものすごい反響が出ています」
「えっ?
もうそんなところまで手を伸ばしてるのかい?」
「はい。
ちょうど宣伝活動から戻ってきたところです」
「ははは。
君と話すと自分の視野の狭さを痛感させられるよ」
「ああ、それと、よろしければ、この国でも宣伝をしておきたいのですが」
「どうやるか知らないが、議会から許可を出そう。
二三日は、待ってくれよ」
「はい、それは大丈夫です」
こうして、経済活動の停滞していた『南の島』に、景気回復のきっかけが生まれた。
いつもお読みいただきありがとうございます。
「緑苔」を、『南の島』大陸の特産品にするという、史郎のアイデアは、上手くいきそうです。
次回、史郎たちは、その功績に対して恩賞をもらうようです。
何か、すごいことになりそうですね。
では、明日へつづく。




