第173話 聖樹世界編 第40話 ダークエルフ侵攻3
ダークエルフ軍の大侵攻が、終わったように思えましたが……。
史郎がダークエルフ軍を打ちまかした、その秘密も明かされます。
ダークエルフに投降を呼びかける声は、城の前面に展開したエルフの軍勢にも届いた。
両手を上げたダークエルフの兵士が、森から次々に現れる。
エルフ軍からは、歓声と勝鬨が上がった。
史郎が予想していた通り、若いエルフの指揮官に率いられた一団が、投降したダークエルフたちへ、駆け足で近づいていく。
「奴らに、目にもの見せてやれ!」
ヨレヨレで泥まみれの軍服を着た、ダークエルフの兵士たちは、武器も無く、それに抗える術はなかった。
勢い勇んで駆けよるエルフ兵の前に、銀髪の老人が現れた。
「貴様、人族だな!
奴らの味方をするなら、生かしてはおかんぞ」
若い指揮官が、目を吊りあげ、老人に詰めよる。
「やれやれ。
馬鹿な若者は、どこにでもいますな」
老人は、苦笑いしている。
落ちつきはらったその態度に、若い指揮官は一瞬ひるんだが、剣を抜いて叫んだ。
「こいつもろとも、殺してしまえ」
若い指揮官の剣が老人を袈裟懸けにした、と見えたが、それは彼が動いた後の残像に過ぎなかった。
剣を抜いていた者、全員の手首から先が、宙を舞った。
剣を抜いていなかった者も、あっというまに、見えない何かに取りおさえられた。
エルフの軍勢から、騎乗した一人の文官が駆けつける。
「リーヴァス様、お手数をおかけします」
「ははは。
まあ、彼らには良い教訓になるでしょう」
利き手を失った者は、突然姿を現した、三人の獣人が応急手当している。
「なんか、面倒を押しつけられてる気もするけど……」
「ミミ、何言ってるの?
リーダーは、二万人の兵士を無力化したんだよ。
ぐずぐず言わずに手を動かす」
「はいはい。
もー、ポン太ったら、ほんと偉そうなんだから」
リーヴァスの所に、大柄なダークエルフの武人が近づく。
彼だけは、腰に剣を差したままだ。
彼は胸に手を当て、軽く礼をした。
「名のあるお方と、お見受けする。
部下の命を助けていただき、感謝する。
私は、プーダと申すもの。
ぜひ、お名前をお聞かせ願いたい」
リーヴァスは、軽く会釈を返した。
「リーヴァスと申します。
部下の方々のことは、お礼には及びませんぞ。
彼らを守るのが、エルフ王からの依頼ですからな」
「依頼……冒険者ですか。
冒険者でリーヴァスという名前……。
もしや、『雷神リーヴァス』殿では?」
「ははは。
誰かが付けた二つ名ですが、確かに私の名ですよ」
「リーヴァス殿、あなたを見こんで頼みがある。
ぜひ、私と手あわせ願いたい」
「手あわせ?
なぜですかな?」
「わが軍は、すでにエルフ軍に降った。
しかし、私は、どうしても、戦ってから身を処したい。
愚か者のたわごとと、お笑いください」
「私が受けねば、どうするおつもりかな?」
「エルフ軍に切りこんで、彼らを一人でも倒します」
「……うむ。
分かりました。
お相手しよう」
「おお!
受けてくれるか。
雷神殿ならば、相手にとって不足は無い」
二人は、五メートルくらいの距離を取って対峙した。
「リーヴァス様、無駄なことは止めてください」
ミミが叫ぶ。
「ミミ、これは、武人の血から、止められぬもの。
黙って、見ていなさい」
プーダ、リーヴァスともに、その手が、剣の柄にかかる。
一瞬、二人の姿がぶれたと思うと、それぞれの位置が入れかわっていた。
「見事!」
ダークエルフの将軍は、そう言うと、前のめりに倒れた。
「コルナさん、頼めるかな」
コルナが、プーダに駆けより、彼に治癒魔術を掛ける。
「……大丈夫です」
彼女には、リーヴァスが急所を避けて剣を振るったことが、すぐに分かった。
こうして、王城付近で行われた戦闘は、全て終わった。
◇
どうして、戦闘があのようなことになったか、知りたいって?
最初、城に向け襲いかかった魔獣の群れを、闇魔術から解き放ったのは、俺の点魔法だった。
聖属性の魔術を点に付与し、それを魔獣に付けた。
魔獣を操っている闇魔術を、その魔術が打ちけしたというわけ。
グリフォン隊の上空に現れた二体の飛行獣は、ナルとメルだ。
透明化の魔術をかけたボードにルルが乗りこみ、サポートしていた。
ナルとメルがグリフォンのコントロールを奪うとすぐに、俺は娘たちとルルを、『西の島』フェアリスの集落にある、『土の家』の二階に転送した。点魔法の「連結」と「付与 空間」の合わせ技だ。
この合わせ技は、『メテオ』を地面に誘導するときにも使った。一つの点で魔術を吸いこみ、もう一つの点から出したのだ。
ダークエルフには、吸収した『メテオ』を使うと脅したが、実のところ、点に収納した魔術が時間をおいて再び使えるかどうかは、定かでない。
だから、あそこでダークエルフが降参しなかったら、いろいろ面倒な手順が必要になっていた。
結局、その手順は不要になったんだけどね。
点ちゃん、今回も大活躍だったね。
『(^▽^)/ いっぱい遊べて楽しかったー』
まあね。いつもの点ちゃんだね。
俺は1号機の中でコケットに横になりながら、明日から、いかにゴロゴロするか、その計画を練っていた。
いつもごろごろする計画を練っている、この史郎という少年、実のところ勤勉なのでは?
いつもお読みいただきありがとうございます。
プーダ将軍VSリーヴァス、一瞬の戦いでした。
大侵攻を凌ぎきった史郎たち。
後は、何もなければよいのですが……。
ほっとしつつ、明日へつづく。




