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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第4シーズン 聖樹世界エルファリア編
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第171話 聖樹世界編 第38話 ダークエルフ侵攻1

 ダークエルフの大攻勢が始まります。

襲いかかる、無数の魔獣にグリフォン部隊。

 史郎たちは、どう対処するのでしょうか。


 大攻勢の前日は、静かに過ぎていった。

 嵐の前の静けさとは、このことだろう。


 パーティ・ポンポコリンも、すでに準備を終え、明日に向け細かいところの確認に移っている。

 パーティは、リーヴァスさん率いるミミ、ポル、コルナ四人の班と、ルル、ナル、メル三人の班に分けた。 


 ルルの班には五匹のワイバーンが所属する。娘たちは、明日わずかな時間だけ参加するが、安全には万全を尽くした。

 俺は遊撃ということで、一人だけ別行動だ。まあ、点ちゃんと一緒だから、本当は、一人とは言えないけどね。


 ナーデ議長から念話が入る。


『シロー、聞こえるか』


『ええ、どうぞ』


『全て予定通りに進行している』


『攻撃は明日ですね』


『そうだ。

 こちらは何もできないから、君に任せるしかない』


『まあ、できるだけのことは、やってみますよ』


『命を粗末にするなよ』


『ありがとうございます』


 モリーネ姫に、侵攻が予定通り明日行われることを、念話で告げておいた。


 その日、俺は緑を敷いたハンモック、コケットで初めて寝ることができたが、余りの寝心地の良さに、横になるとすぐ眠りに落ちたため、何か納得できなかった。


 ◇


 エルフ国建国祭当日。


 祭りが開催される城下町には、早朝から多くの人が訪れた。

 今回、屋台などは、城の西エリアから北西エリアに出される。このことで、住民を戦闘地域から遠ざけることができる。

 城の東側から南側にかけては、大規模な軍事訓練を理由に、立ち入り禁止となっている。これも、ぎりぎりになって王城から連絡が来たので、祭りの関係者は大変だったはずだ。


 日が高くなり、祭りの人出が最高に達した頃、城の東に赤い煙が立ちのぼった。

 これは、獣人世界ケーナイのギルドで教えてもらった連絡法だ。

 待機しているエルフの軍勢に緊張が走る。煙は、ダークエルフ侵攻が始まったことを意味するからだ。


 最初に、王城南側の森から無数の魔獣が現れた。

 城と森の間には草原があるが、そこを魔獣が埋めつくしていく。


 闇魔術の名手として名高い、ラシンダ将軍が魔獣を操る。

 以前、魔獣を率い王都攻撃に失敗したメリンダの上司でもある。


「はははは! 

 行け行けー! 

 エルフどもを喰いちらせ!」


 森の端で草原を埋めつくしていく魔獣を見て高笑いしていた、ラシンダ将軍の顔色が変わる。


「な、何が起きた!?」


 自分と魔獣たちとの魔術による繋がりが、ぷつりと切れた感覚があった。

 魔獣は、そこが棲み処の森ではないと気づき、当惑している。

 ようやく目の前に森があるのに気づいたのか、数頭の魔獣が、そちらに向け走りだした。それを見た他の魔獣も後に続く。

 雪崩のように、魔獣の群れが森へ押しかえした。


 魔獣の後を追い、飛びだそうと待機していた、二万人あまりのダークエルフ兵は驚愕した。

 それはそうだろう。

 攻めこんだはずの魔獣が、なぜか自分たちに向かってきたのだから。

 兵士の中には驚きから我を失った者もいた。暴走する魔獣の群れに挑んだ彼らの体が、軽々と跳ねとばされる。


「木だっ! 

 木に登れー!」


 冷静な兵士は木に登り、なんとか難を逃れる。

 無数の魔獣は、森の中に散っていった。


 ◇


 ダークエルフの三軍を束ねる統合軍本部では、連行されてきたラシンダ将軍が、スコーピオ総帥の前に引きだされていた。


「よくもやってくれたな、ラシンダ」


 総帥の静かな声が、かえってその怒りの大きさを物語っていた。


「そ、総帥! 

 私は何もしておりません! 

 魔獣が勝手に――」


「ええいっ! 

 この期に及んで言い訳などよいわ! 

 お前のせいで、初手が台無しだ。

 軍籍の剥奪だけで済むと思うなよ。

 確実に、『西の島』送りにしてやる!」


「お待ちを、お待ちをー!」


 ラシンダが叫ぶが、兵士が彼の両脇を抱え、天幕の外へ運びだした。

 自分の叫びが、かつて魔獣による王都襲撃をしくじった際の、部下メリンダのものと同じだとラシンダは気づかなかった。

 そして、総帥の言葉が、メリンダに投げかけた自分の言葉そのものだということにも。


 ◇


 魔獣が森から現れたのと同じ頃、グリフォン部隊は、予定通り東の空から王城へ急襲を掛けた。


 いや、掛けようとした。

 王城から飛びたった黒い影が、あっという間に彼らの前に立ちふさがる。

 五匹のワイバーンだ。


 グリフォン隊の隊長は、冷笑を浮かべた。

 いくらワイバーンが強くても、五匹だけでは百匹のグリフォンに敵うはずもない。

 彼は右手を上げ、それを振りおろしながら叫んだ。


「突撃ーっ!」


 しかし、いつもなら機敏に反応するグリフォンが、全く動かない。

 周囲を見まわすと、全てのグリフォンが、その場で羽ばたいているだけで、動こうとしていない。


「な、何が起きた!」


 ふと気づくと、彼らの上空を、二匹の飛行獣が舞っている。

 円を描くように飛んでいる黒い獣は下から見ると、ワイバーンのように見える。不思議なことに、二匹の獣はかき消すように空中からいなくなった。

 グリフォンは、相変わらず命令しても同じ場所で留まっているだけだ。


 血迷った一人のグリフォンライダーが、自分のグリフォンを刺そうと短剣を振りあげた。五匹のワイバーンの内一匹が一瞬で飛んでくると、そのライダーを足に掴み、グリフォンから引きはなした。

 ワインバーンはライダーを殺すつもりはないらしく、彼を地上に下ろすと他の四匹と合流した。

 五匹のワイバーンはグリフォンの上空で三回ほど円を描くと、東の方角、つまりエルフ王城とは反対方向に飛びはじめる。


 驚いたことに、今まで乗り手の命令を聞かなかったグリフォンが、その後を従順についていく。彼らは、あっという間に戦闘地域から離脱した。


 グリフォンライダーたちは、なすすべもなく、ただ茫然とするしかなかった。



 いつもお読みいただきありがとうございます。

史郎たちは、ダークエルフの出鼻を挫けたようです。

問題は、ここからですね。

二万人の兵士と恐ろしい複合魔術「メテオ」。

史郎は、独力でこれを抑えると言っていましたが、可能なのでしょうか?

 では、明日へつづく。

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