第168話 聖樹世界編 第35話 準備1
ダークエルフ議長からの情報と、点ちゃんからの情報で、史郎達は戦いに備えることにしたようです。
果たして、彼らがとる策とは?
ベースキャンプに帰った俺は、『南の島』であったことをリーヴァスさん、ルル、コルナに話して聞かせた。
ミミとポルは、『コケット』の寝心地にやられてしまい、また昼寝している。
コケットというのは、苔のベッドにミミが付けた名前だ。しかし、リーダーがまだ使ってないのに、二人が先にそれを使いまくるってどうよ。
ポルには早く起きて、メリンダの世話をして欲しいんだけどね。
俺は、『聖樹の島』のエレノアさんと『東の島』のモリーネ姫に念話を繋いだ。
近いうちに、『南の島』のダークエルフが、大攻勢に出る可能性があると伝える。
貴族の中にダークエルフが混じっているから、モリーネ姫には、特に細かく注意を与えておく。
『大変だわ。
すぐ、父に知らせないと』
『さっきの注意を守って、城の中をまず固めるんだよ。
絶対に、エルフの方から攻撃を仕掛けないように。
陛下には、とにかくこのことだけは、守ってもらってくれ』
『分かったわ』
『さっき伝えたように、ダークエルフと通じてる貴族たちを捕らえるのは、敵の攻撃直前に行うんだよ』
『ええ、分かってるわ。
また、シローに助けられるわね』
『ははは。
気にする必要は無いよ。
成りゆきでやってるだけだから』
『ふふふ、あなたらしいわね』
『くれぐれも、家族の周囲には気をつけてくれ』
『ありがとう』
俺は念話を切ると、フェアリスの集落に向かう準備をするのだった。
◇
フェアリスの集落には、ミミとポルだけを連れていった。
集落のシールドを開け、広場のまん中に降りる。フェアリスの人々から、歓迎の拍手と歓声が起きた。
「うわ~、すごい!
幻の原住民だ!」
いや、ポル。それ、本人たちを前に言うセリフじゃないから。
「シロー殿、よく帰られたの。
井戸の礼もまだじゃったのに、急に見えんようになったから、心配しておったのじゃ」
村長が、話しかけてくる。
「娘たちのこと、面倒みていただいて、ありがとうございます。
それより、井戸の調子はどうです?」
「便利な事、この上ないの。
あまり水を無駄に使いすぎぬよう、見張りをつけておるよ」
「「パーパ!」」
ナルとメルが走ってくると俺に飛びつく。
「あ、ポルだ!」
二人は、ポルが来てるのに気づいたようだ。さっそく尻尾を狙って飛びかかっている。
「あーっ、やめてー」
ポルが逃げまわっている。そのうち捕まるだろう。
ミミが、見慣れないデロリンに気づいた。
「シロー、この丸っこい人は?」
「ああ、彼はデロリンさん。
料理を担当してもらってる」
「へー、ちゃんと料理ができるのかしら?」
ミミは、料亭の娘だからね。
「は、初めまして」
デロリンは、獣人に慣れていないのか、びくびくしている。
「デロリン。
一旦、ここを引きはらってベースキャンプに集合するよ」
きゅ~っと地面にうつ伏せになっているポルに乗っかり、尻尾で遊んでいるナルとメルを抱え、ボードに乗る。
「ぽるっぽー」
「ぽるっぽ、もっとしたい」
「ポルの尻尾=ぽるっぽ」、ということらしい。
「また、すぐできるよ」
二人の頭を撫でてやる。
「わーい!」
「またするー」
狙われてるポルは、大変だけどね。
娘たち二人に警戒したへっぴり腰で、ポルもボードに乗った。
「長、急ぐのできちんとご挨拶できませんが、また来ますから」
「分かった。
家はそのままにしておいて、いつでも来るとよい」
俺は、あることを思いついた。
「家は、キッチンなど1階は自由に使ってくれてかまいません。
二階には上がらないようにしておいてください」
「ふむ、シロー殿のことじゃから、何か考えがあってのことじゃろう。
分かった。
皆に言いきかせておこう」
「では、お世話になりました」
「おお、こちらこそ、本当に世話になったの」
俺たちは、フェアリスが見送る中、木々の間を抜け、ボードで空に上がる。
点ちゃん1号に乗りこみながら、また皆でここに来られたらいいなあ、と考えていた。
◇
俺たちは、ベースキャンプに戻ると『東の島』に帰る用意を始めた。
ポルは、メリンダの世話を焼くのに忙しい。
デロンチョコンビは、1号機への積みこみと、捕えた三十人余りのダークエルフの世話で、てんてこ舞いだ。
ナルとメルは、コケットの寝心地に捉えられ、お昼寝をしている。
俺は、リーヴァスさん、ルル、コルナと、これからどうするか打ちあわせていた。
「ダークエルフの大攻勢が避けられぬとなると、やっかいですな」
「ええ。
彼らの出鼻をうまく挫ければいいのですが」
「でも、お兄ちゃん。
エルフたちには期待できないんでしょ」
「そうなんだ、コルナ。
エルフの中には、自分たちの肌の色を、モーフィリンで隠している者が、思いのほか多そうなんだ。
下手をすると、大攻勢の前に、内紛でエルフ国がぺちゃんこだよ」
「シロー、ナルとメルは、どうしましょうか」
「ルル、彼女たちを危険には晒せない。
ただ、敵のグリフォン部隊に対しては、二人が絶対の力を示せるはずなんだ」
「もう、何か方策は考えられておるのでしょうな」
「ええ、リーヴァスさん。
俺たちが誰一人欠けることなく、事態を収める方法を考えています」
「お兄ちゃんは、相変わらずねえ。
本当に、そんなことができるのかしら」
「まあ、あと一つ不確定要素があるから、それさえクリアすれば、大丈夫だろう」
その時、念話が入る。ダークエルフの議長ナーデからだ。
俺は、皆に断り、別室に走りこんだ。
◇
『シロー、繋がってるかな?』
『ええ、議長、聞こえてますよ。
後は、言葉に出さなくても大丈夫です』
『そうか、助かる。
大攻勢の日取りが決まった。
もう一度確認するが、君は我々にもエルフにも与することは無いんだね?』
『はい、それは、お約束します』
『大攻勢は、十日後だ。
エルフ国が、建国祭を祝う日に決まった』
なるほど、お祭り騒ぎで警戒が薄くなったところを襲うのか。
『あと、大規模な複合魔術が使われる予定だ』
『複合魔術?』
『魔道武器の助けを借りて、複数の魔術師が、巨大な魔術を完成させるそうだ』
この前『緑山』で見た、あの箱に入ってたやつだな。
『その魔術は、何発撃てるのですか?』
『魔道武器の数が四つだから、恐らく四発だろう』
『なるほど。
貴重な情報、ありがとうございます』
『こんな情報を聞いたからって、どうすることもできないだろうが……
まあ、気休めくらいにはなるだろう』
『いいえ、すごく役に立ちました。
戦闘阻止が成功したなら、それはあなたのおかげです、ナーデ議長』
『ははは。
戦争を止められない私には、何も言う資格はないよ』
『なるべく、一人の被害も出さないようにやってみます』
『いくら君でも、それは無理だろう。
無茶をして、自分自身の命を失わぬようにな』
『ありがとうございます。
では、次は戦闘を阻止した後で、お目にかかりましょう』
『死ぬなよ』
『あなたも』
念話は、それで切れた。
俺の計画の最後のピースが揃った。後は、その場のアドリブだな。
『(?ω・) ご主人様ー、アドリブって何?』
ああ、点ちゃん。アドリブってのは、その場その場でうまく対処することだよ。
『(*'▽') なるほどー』
また、点ちゃんが語彙を増やしたな。そのうち、日本語をマスターするんじゃないか。そういえば、俺と点ちゃんって、何語で会話してるんだろう。
いつもお読みいただきありがとうございます。
史郎達は、十分な準備ができたでしょうか。
実戦で分かりそうですね。
では、明日へつづく。




