第166話 聖樹世界編 第33話 議長との会談
史郎は、『南の島』最高権力者、ダークエルフの議長と会見を行います。
果たして彼は、ダークエルフが『東の島』を襲うことを、阻止することが出来るのでしょうか。
強力なくつろぎグッズが登場します。
俺は、ここのところずっと休んでいないミミとポルを寝かせるため、特製ベッドを作ってやった。
点魔法で、自立型のハンモックを作り、そこに張ったネットに『緑山』から採ってきた苔を載せる。
苔は繊維が長く、ふわふわしている。
まず、ポルを寝かせてみる。
「な、なんですか!
この気持ち良さは!」
さっそく驚いている。
「えっ!
リーダー、私のも早く作って」
ミミにせがまれ、すぐ同じものを作る。
「なに、これ!
ふわふわ~」
二人の「ふわふわ~」の合唱は、すぐに寝息へと変わった。
シローは、新しいくつろぎグッズを手に入れた、ピロロ~ン。
『♪(?ω・) ご主人様、ピロロ~ンって、何?』
ああ、点ちゃん、それはまた今度ね。それより、さっそく仕事に行くよ。
『(^▽^)/ はーい!』
◇
俺は上空から議長の家を調べた後、一人用ボードで降下した。
屋根に降りると、そのままボードで建物の壁を下向きに滑る。
通常の重力を、壁の方向に変えてあるから、下に落ちることはない。
壁をするりと滑り、ある部屋のベランダに立つ。部屋の周囲に、見張りはいないようだ。
開いている窓から、室内に入る。
ベッドには、初老の男女が並んで寝ていた。俺は、女性に睡眠の闇魔術を掛ける。
男の肩を軽く叩く。目が覚めて俺を見た男は、全く動揺する気配が無かった。
「今晩は。
このような、やり方で失礼します」
「君は、人族だね。
誰だい?」
「俺は、冒険者でシローと言います。
あなたと、少しお話したくて来ました」
「妻は、どうなってる?」
「睡眠の魔術を掛けてあります。
安全な魔術ですから、ご安心を」
「そうか……。
何の話がしたい?」
「あなた方は、『東の島』を攻撃するつもりですか?」
「……ああ、そのことか。
状況が変わらないなら、そうなるだろうな」
「状況とは?」
「ある筋からの援助が、途絶えてね。
この国は、放っておくと、滅亡するしかない」
学園都市世界からの援助だな。
「俺は、エルフ王と話したのですが、彼はあなた方との関係改善を望んでいましたよ」
「時すでに遅し、だね。
私一人がそのことで動いても、この国はもう止まるまい」
「どうやっても、無理でしょうか」
ダークエルフの議長、ナーデは、少しの間、黙って考えていた。
「エルフ王に、その気があるなら、もしかすると、全ては解決していたかもしれないね。
しかし、問題は、先ほど言ったように、すでに事態が動きはじめているということだ」
「明日の議会で、エルフ王の意見を他の議員に知らせることはできますか?」
「どうやって明日議会があることを知ったか知らないが、そんなことをしても無駄だろうね」
「そうでしょうか?」
「我々ダークエルフの中には、心の底からエルフを憎んでいる者もいるからね。
そして、それが故無き事ではないから、始末が悪い」
「それだけで、国全体が動くものですか?」
「人々の憎しみをかきたて、戦争に向かわせる者がいる。
君は、他の世界から来たようだが、どの世界にもそういう者がいるはずだ。
自分の利権のために、数えきれないほど多くの命を悪魔に売りわたす者がね」
俺は、彼の正論に、言いかえすことが出来なかった。
「どうすれば、戦争が止められるでしょうか」
「そうだね。
どちらかが、圧倒的な力で片方の武力を排除するしかないね」
「……」
俺の予想を超えて、事態は進んでしまっているらしい。
「出来るなら、議会の力で戦争回避に動いてもらいたかったのですが……」
「君はどうやら、エルフだけに肩入れしている訳ではないようだね。
だけど、もう、どうしようもないだろう」
彼はそう言うと、無念そうに眼を閉じた。
「なんとか、ぎりぎりまで戦争回避を模索してみます。
何かの時には、力になっていただきたい」
「ははは。
私が言うべきセリフを、先に言われたようだな。
いいだろう。
君が命懸けで我々のために働いてくれるなら、私は約束を守ろう」
「俺は、どちらのためにも働きませんよ。
戦争を止めたいだけです」
「その言葉で十分だ。
我々の事は、かなりのところまで把握できてるんだろう?」
さすが、切れ者議長だ。
「ええ、情報をいただく必要はありません。
エルフ王と関係ある人物と接触したと知れたら、あなたの身が危ないですから」
「ははは。
人族の少年から、命の心配をしてもらうとはな」
「じゃ、俺は、もう帰ります。
どうしても俺と連絡を取りたい事柄ができたら、他人に聞かれないところで、俺の名前を口に出してください」
「シローだったな。
君は、勇者か何かか?」
「ははは。
俺は、しがないただの魔術師ですよ」
「まあ、いいか。
それでは、命があれば、またどこかで会おう。
よい風を」
よい風か。まさに、今の俺に必要なものだな。
「ナーデ議長、あなたにも、よい風を」
俺はベランダに出ると、ボードに乗り、一気に空へ上がった。チラリと下を見ると、ベランダに人影が見えた。月明かりでは、はっきりしないが、きっとナーデだろう。
ナーデからは見えないだろうが、俺は彼に手を振ると、さらに高度を上げた。
いつもお読みいただきありがとうございます。
ダークエルフの議長と会談するという目的は達した史郎。
しかし、その会談によって、ダークエルフの大攻勢が避けられないことを知ります。
これからパーティ・ポンポコリンは、どう動くのか?
そういえば、「コケット」登場しましたね。
くつろぎグッズとして、私にも欲しいですね。
えっ? 何ですって点ちゃん?
『( ̄ー ̄) 作者は気持ちよく寝てないで、ただ書けばいいんだよ~』
……そうですか。シクシク。
明日へつづく。




