第156話 聖樹世界編 第23話 ダークエルフを追って
『西の島』でフェアリス族をさらっていたダークエルフたち。
史郎は、大胆な推理で彼らの居場所を探ります。
フェアリスの集落に来て二日目。
俺は、一旦フェアリス族が張ったシールドの外に出ると、点ちゃん1号からデロリンとチョイスを連れてきた。
二人は、まず森の中の集落に驚き、そこに住んでいる人たちに、二度驚いていた。
チョイスによると、エルフの間では、『西の島』から消えた住人が小さな人々だったという言いつたえはあったそうだ。
『土の家』に関する雑事をデロンチョコンビに任せ、次の目的地を決めることにする。
リビングに家族を集め、地図を出す。フィロさんにも参加してもらっている。
「フィロさん、ダークエルフが現れた場所は、分かりますか」
「言い伝えでは、大陸南東部の仲間が最初にさらわれたということです」
南東といえば、凶悪な蟻がいるところだな。
「奴らは、船を利用していたのでしょうか?」
昨日、キャロが船で密航したという話を聞いていたので尋ねてみる。
「そういう話は伝わっていません。
ただ、彼らは飛行型魔獣に乗っていたという話はあります」
「飛行型魔獣ですか」
「言い伝えでは、グリフォンということです」
「この大陸に、グリフォンの生息地はありますか?」
「いいえ。
だから、グリフォンの話は眉唾だと考えています」
「山岳地帯にも、鳥型の魔獣がいますよね」
「ああ、ビッグピークですね。
あれは、騎乗できませんよ。
余りに原始的な生きものなので、魔術を使ってもコントロールできないでしょう」
「そういえば、この大陸の西域は、魔獣がいないですね」
「ええ。
あなたたちが通りぬけたシールドの他に、南北に魔獣除けの結界を張ってあります」
「なるほど、そういうことでしたか」
ここ『西の島』の謎が、また一つ解けたことになる。
「大陸東部にある港町も、フェアリスの方々が住んでいたのですか?」
「ええ、そう伝わっています。
そこが、フェアリス国『フィン』の都だったようです」
「やはり、そこもダークエルフが?」
フィロは、つらそうな顔で答えた。
「そう聞いています。
都市で大規模な戦闘があったということです。
ダークエルフは、魔道武器を沢山使ったと言われています」
魔道武器か。やはり、ここでも学園都市の影が見えるな。
少しずつ、大きな謎の輪郭が浮かびあがってくる。学園都市の秘密施設で、フェアリスは一人も見つかっていない。
ということは、既に殺されているか、どこかに囚われているかだろう。囚われているとすると、恐らくダークエルフの本拠地だろう。
俺は、ある可能性に思いあたったが、あまりに荒唐無稽な気がして、皆には黙っておいた。
◇
二日目夕方、俺はデロリンに頼み、フェアリスの人々に、ご馳走でお返しすることにする。
長に火の使用を許可してもらう。
「煙を全く出さないように、火を使えるものですかな?」
彼が納得できないようなので、キッチンに案内する。
グリル上部には、地球の換気扇にあるようなフードがついている。これには、風魔術の仕掛けがしてあり、煙を集める。集めた煙は、一つの点に納められるようになっている。
この点の内部は、ものすごく大きな空間になっているから、少々の煙では一杯にならない。
実際に煙を出し、それが全てフードに吸いこまれるところを見せると、やっと長も納得してくれた。
ナルとメルは、今日もすごい人気で、小さな子供たちを体中にぶらさげて歩いている。
コルナは、昨日と今朝、子供たちの相手をしたので、疲れが出て昼寝中だ。
コルナがいないと、ボードの許可が出ないのでナルとメルは不満そうだ。夕方前にコルナが起きてくると、ほとんどの子供がボードに群がった。
夕食前、長の許可をとり、広場に大きなテーブルを作る。単純な形なので、点魔法で一瞬だ。
テーブルは、フェアリスの人々に合わせ、低くしてある。椅子も、ベンチ型の低いものを作った。
俺たちには低すぎるが、そこは地面に座ることで対処する。
食事の用意ができても、小さな子供はナルとメルから離れなかった。
「昨日は、歓迎の宴、ありがとうございました。
今日は、ささやかながら、私たちからお返しがあります。
皆さん、存分に召しあがってください」
俺が挨拶して、食事が始まる。
料理はデロリンが『土の家』にあるキッチンで作り、それをチョイスが運んでくる。土魔術で、大量に作った小さな食器も各自に配られる。これは、そのままフェアリスの人々にプレゼントするつもりだ。
俺、ルル、コルナがチョイスを手伝う。
リーヴァスさんは、長の隣に座り、相手をしている。
デロリンの料理を口にしたフェアリスたちが、驚きの声を上げる。
「な、なんだこれは!」
「旨すぎる!」
「めちゃくちゃ、美味しー!」
口々に叫びだす。甲高い声がうるさいほどだ。
まあ、俺たちでも驚いたくらいだから、火が使えなかったフェアリスの人々にとっては、まさに信じられない美味しさだろう。
フェアリスの人々が、デロリンに群がるのを俺がさばいている。そのままにしとけば、料理が進まないからね。
料理が終わったら、調理教室をすることにして、自分の席に着いてもらった。
お酒は持ちあわせが無かったので、エルフの町で仕入れたジュースを出す。
これは、『東の島』特産の果物から作られるもので、発酵してすこし炭酸が入っている。
味は、アップルサイダーに近い。
ルルが好きだからと、大量に購入しておいたのだが、それが役立ったようだ。
ジュースは、大人たちはもちろん、子供たちにも大受けで、ジュースを注ぐ係のナルとメルが大わらわだ。
食事が終わると、長が俺のところに来る。
「なあ、人族は高慢で残酷だと思っとったが、あんたらを見とると、それは間違っとったようじゃな」
「いえ、ダークエルフと結託しているような、悪い人族がいるのも事実です。
俺たちは、フェアリスの方々のために、できることは喜んでやりますよ」
「ははは、嬉しい事を言うてくれる。
楽しみにしておくぞ」
「わずかの間ですが、よろしくお願いします」
「うむうむ。
困ったことがあったら、何なりと言うてくれ」
彼はそう言うと、自分の家に入った。
俺はその後、フィロさんにキャロの話をせがまれた。話を聞いて、キャロが本当にみんなに好かれて幸せなのが伝わったのだろう。
フィロさんは、涙を流し、喜んでいた。
◇
その夜、みんなが寝静まってから、俺はフェアリスのシールドから外に出ると、一人で点ちゃん1号に乗りこんだ。
例の荒唐無稽な考えを確かめるためだ。
じゃ、点ちゃん、行ってみようか。
『(*'▽') ういういー』
ここのところ大活躍の点ちゃんは、ご機嫌だ。
俺たちは、大陸の形がはっきりするところまで高度を上げた。
点ちゃん1号は『西の島』から南東方向に飛行する。そこには、大陸が無い。広大な海面が広がっているだけだ。
俺は、その上空から点をばらまく。
少し経つと、点ちゃんの声がする。
『(Pω・) ご主人様ー。
ご主人様の予想通りだったよ』
俺は予想が当たったのに、かえって驚いていた。
なるほど、そういう事だったのか。
俺は、はっきり浮かびあがってきた事柄の大きさに呆然とするのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
史郎の推理とは?
次回、ダークエルフの居場所が暴かれます。
明日へつづく。




