第147話 聖樹世界編 第14話 評議会
エルフ王と、貴族が森の異変について話しあいを行うようです。
良い案が見つかればよいのですが……。
夕闇の中、俺は点ちゃん1号を王城の庭に降下させた。
点ちゃん1号は、外側を黒くしてあるから、近づかないと見えないだろう。
点ちゃん1号を仕舞うと、パリスとロスには、庭でそのまま待機してもらう。
ルルが許可をもらって出てくるまで待つ。
「お帰りなされたか」
ルルではなく、リーヴァスさんが、迎えに来てくれた。
魔道具の灯りが照らしだした彼の顔を見たとたん、パリスが固まる。
「も、もしかして、雷神リーヴァス……」
「パリス、雷神ってなんだい?」
ロスが尋ねる。
「十年前の事件の時、この国を救ってくれた方よ」
「え!
あの救国の英雄!?
この方が?」
「もう、昔の話ですよ」
リーヴァスさんが苦笑している。
「わ、私、あのときパレードでリーヴァス様の姿を見て、冒険者になると決めたんです!」
パリスは、自分の英雄に会えたので有頂天だ。
握手をしてもらい、倒れそうになっている。騎士が出てきて二人を連れていかなければ、パリスはその手をずっと離さなかったろう。
ナルとメルが空いたリーヴァスさんの両手にぶら下がる。
俺たちは、用意された部屋に戻った。
◇
俺は、リーヴァスさんから国王の決定を伝えられた。
それは、評議会を開き、至急事態に対処するというものだった。
「リーヴァスさん、評議会とは何です?」
「国として重要なことを決める時に招集される、貴族の集まりです」
なるほど。その辺は、どこの国でも変わらないのか。
「今回は、私たち家族にも出席の要請が来ています」
「え?
家族というと、ナルやメルもですか」
「ええ。
恐らく、ワイバーンの件があるからでしょうな」
そのような場所に家族を引っぱりだすのは気がすすまないが、ここは陛下に従っておこうか。
「コルナさんは、遠慮してほしいとのことです」
やはり、獣人に対する偏見があるようだ。
「では、彼らに、こう伝えてください。
コルナが出席できないなら、私たちも出席できない、と」
リーヴァスさんが微笑む。
「確かに、そう伝えます」
彼もコルナの件に関して、こころよく思っていなかったようだ。
彼が部屋を出ていくと、俺、ルル、コルナ、娘たちで、評議会に向け、大まかな打ちあわせをしておいた。
次の日、エルフ王城イビスでは、エルフ王と貴族、そして俺たちによる評議会が開かれた。
◇
俺の家族も出席した評議会は、体育館くらいの広さがある、大きな部屋で開かれた。
内装が緑で統一されている。
灯りは、壁に埋め込まれた下向きの魔道具による間接照明という凝った造りだ。評議会などでなければ、くつろげる空間になるはずだ。
俺は、そんなことを考えていた。
ロウソクを載せた、大きな長方形のテーブルが置いてあり、短い辺の中央に、国王陛下が座っている。毒の影響からほとんど解放された彼は、非常に精力的な顔をした威厳ある姿だ。
長方形の長い方の辺に、向かいあう形で座っているのが貴族だろう。
座っている貴族に男性しかいないことを考えても、ここがかなり保守的な社会だと分かる。
俺たち家族は、陛下の向かい側に座ることになった。
娘たちの椅子も用意されていたので、俺とルルが二人をはさむように座る。
俺たちが席に着く時、何人かの貴族が、コルナの方をジロリと見た。
「では、緊急の評議会を始める。
聖なる木のもとに」
「「「聖なる木のもとに」」」
開会を告げる陛下の言葉と、それに応える貴族達の言葉で、評議会が始まった。
「まず、報告をします。
東の森に生息する魔獣の行動が、通常とは違うということです。
すでにスルースの町が襲われました。
最新の報告によりますと、たまたま森にいた冒険者が魔獣の暴走に気づき、住民を逃がしたため、数人が怪我をしただけのようですが、建物はそのほとんどが壊されてしまったとのことです」
陛下のすぐ右に座る男が発言をする。
その向かいに座る大柄な男が立ちあがる。
「だから、どうしたのだ?
評議会まで開く必要があったのか?」
「報告をした冒険者は、魔獣が王都を襲う恐れを指摘しておりました」
「ふん、冒険者の意見など。
たかが魔獣ごときに、この王都がどうにかなるわけでもあるまい」
そこで、国王陛下が発言した。
「たとえ王都まで魔獣が攻めてこずとも、民に被害が出ておるなら、ここで話すべきことじゃ」
さきほど反論した男は、苦虫を噛みつぶしたような顔をして腰を下ろした。
右列に座る、若い貴族が発言を求める。
「魔獣は、いかように普段と違うのですか?」
報告を伝えた貴族がそれに答えた。
「異なる種類の魔獣が集まって一つの集団を作っています。
そして、その集団ごとに、まるで意思があるような動きをするそうです」
貴族たちがざわついた。
「シロー殿、実際に魔獣の襲撃を目撃したそうだが、何か気づいたことはないか」
陛下が、俺の方を見る。
「先日、王女様を狙ったワイバーン同様、冒険者を襲ったジャイアント・ウルフにも、魔術が掛けられていました」
「な、なに!?」
「どういうことだ!?」
「誰かが仕組んだということか?」
貴族たちが、騒然となった。
しかし、陛下の左側に座る大柄な男の発言で、場が静寂に包まれる。
「シローと言ったか、その方らが城に来てから魔獣がおかしくなったのは偶然か?」
どうやら、俺たちを疎ましく思っている貴族がいるらしい。
「彼ら自身が、王城へ来る途中で襲撃を受けておるのだぞ」
さすがに、陛下が口を出した。
貴族が、それに反論する。
「しかし、その襲撃は、エルフによるものだったそうではありませんか。
そこの娘たちが、ワイバーンを操ったという話も聞いております」
男は、俺たちの方を指さした。
俺が反論する前に、コルナが口を開いた。
「ほう。
エルフというのは、礼節を重んじる人々と聞いておったが、あれは嘘のようじゃな」
「な、なにをっ!
お前のような獣人風情が!」
大柄なエルフの貴族が、まっ赤な顔で大声を上げる。
陛下の前であることも忘れているようだ。
コルナは、落ちついた声で続けた。
「ここにいるシローは、異世界で囚われていたモリーネ姫を遥々ここまで連れてきた。
それだけではない。
お后様とモリーネ姫が魔道具で殺されるところを助けた。
陛下に毒が盛られていたことまでつきとめ、その命を救った。
その上、ワイバーンから、シレーネ姫、マリーネ姫も救った」
ここで、コルナはゆっくり居ならぶ貴族を見まわした。
「しかし、誰一人、彼に感謝の意を表した者を見ておらぬぞ。
しかも、挙句は、あろうことかその彼の娘まで疑う始末。
これのどこに礼節があるか聞かせてくれ」
小柄なコルナが、大柄なエルフの貴族をじっと見ている。
青くなった貴族の顔で、どちらが打ち負かされたか明白だった。
「それは、私からも謝罪しよう。
シロー殿への礼は、公の場できちんと行うつもりであった。
しかし、この者の先ほどの発言は、礼節を欠いたと言われて当然じゃ」
陛下が、こちらに向け頭を下げる。
「他国の者に対して、王の頭を下げさせるなど、お前はその地位にふさわしくないの」
コルナが、先ほどの貴族を指さす。ああ、これはナルとメルを疑われ、本気で怒ってるな。
コルナにズダボロにされた貴族は、陛下に頭を下げると、足音高く部屋を出ていった。
コルナがこちらを見て頷く。気が済んだということだろう。
「しかし、森の魔獣に対処するにしても、いつ襲いかかってくるかも分からぬとなると、どうしたらいいのだ」
左列に座った、高齢のエルフが発言した。
「そのために、ここに集まっておるのですから何とかしませんとな」
これは、右列で一番年かさの貴族だ。
『(・ω・)ノ ご主人様ー』
お、点ちゃんか。どうしたの?
『(・ω・) たくさんの魔獣が、こちらに向かってくるよ』
何だって! 点ちゃん、およそでいいから魔獣の数は分かる?
『(Pω・) うーん、分かってるだけで一万はいるよ。
でも、これは一部だけだから、もっといると思う』
分かった。ありがとうね、点ちゃん。
『(〃´∪`〃)ゞ えへへ』
俺が、突然立ちあがったので、評議会の面々は驚いた。
「魔獣の群れが、王都を襲ってきます。
その数は、一万以上です」
部屋から音が消えた。少しして、やっと口を開いたのはエルフ王だった。
「どのようにしてそれを?」
「スキルに関することなので、詳しいことは話せません。
しかし、これをお見せすることはできます」
俺は会議室の壁にスクリーンを展開し、そこに森で今まさに起きていることを映しだした。
いつもお読みいただきありがとうございます。
ここぞというときに活躍するのが狐っ娘コルナです。
かっこよかったですね。
次回、無数の魔獣にシロー達が立ちむかいます。
ドキドキしながら明日へつづく。




