第139話 聖樹世界編 第6話 エルフの国
エルフの国に到着した史郎たちを待っていたのは?
さっそくトラブルの気配が……。
俺たちが乗った点ちゃん3号は、暗くなる前に「東の島」の港町に到着した。
港町の名前は、ポーラ。
出発したセント・ムンデの港町と較べると、遥かに大きい。モリーネ姫によると、人口も二万人程いるらしい。
白銀の船が桟橋に着くと、大勢のエルフが集まってきた。
最初に、俺、ルル、ナル、メル、リーヴァスさんが甲板に姿を現すと、エルフたちにどよめきが起きた。この大陸では、人族がかなり珍しいらしい。
続いて現れたコルナを目にすると、群衆がより一層騒ぎだした。
「獣人だぞ!」
「獣人だ!
気をつけろ」
「何が目的だ!?」
大変な混乱だ。
しかし、コルナの後ろから現れたモリーネ姫の姿を見ると、辺りが急に静かになった。
「皆さん、私はある事情で他の世界に行っておりました。
そこで私を救ってくれたのが、この方々です。
どうか温かい歓迎を」
彼女がそう言うと、辺りは歓声に包まれた。
「姫様ーっ!」
「おかえりなさい!」
「おかえりー!」
人ごみをかき分けて、胸に飾りをたくさんつけたおじさんエルフがやってきた。後ろには、剣や弓を持ったエルフの兵士を従えている。
「姫様!
よくぞご無事で。
いったい、どこにいらっしゃったのですか?」
「マウラムか、今はとにかく急いで城へ行きたい」
「当然です。
我らが、お供しますぞ」
「不要じゃ。
護衛はこの者たちに頼んである」
心なしか、モリーネ姫の声が冷たい気がする。
「しかし、姫に万一のことがあっては……」
「この身すでに、万一の目に遭うたわ!
下がれっ!」
「ははっ」
ふむ。この男、姫から嫌われてるな。何か理由があるんだろう。
「では、シロー、頼むぞ」
モリーネ姫が俺の方を向いてそう言うと、マウラムと呼ばれた男がこちらを睨んでくる。
あっという間に敵を作ってる気がする。なんか、くつろぎとは程遠いな。
そんなことを考えながら、俺は点ちゃん3号を消した。
群衆がまたざわついたが、ここは気にしなくていいだろう。
バス型の点ちゃん2号を出す。またまた、ざわめきが起こる。
エルフの人たち、反応いいね。
全員が乗りこむと、モリーネ姫の指示に従って出発する。
点ちゃん、さっきのおじさんに点をつけておいてね。
『(・ω・)ノ もう、付けましたよー』
まあね。俺の考えてること筒抜けだもんね。
点ちゃん、ありがとう。また、3号で航海しようね。
『(^▽^)/ わーい!』
俺たちを乗せた点ちゃん2号は、街道を東に向かって進んでいった。
◇
学園都市世界との連絡が途絶え、いらいらしていたマウラムは、衝撃の報告を受けることになる。
港湾関係者からの連絡で、港にモリーネ姫が現れたというではないか。
彼は、まずそんなはずはあるまいと思ったが、念のため部下を連れ、港へ向かった。そこで彼を待っていたのは、本物のモリーネ姫か、あるいは本物そっくりの少女だった。
すぐにも拘束したかったが、周囲には群衆がおり、「姫」を守るように冒険者らしい人族の姿があった。
護衛を申しでるが、冷たく拒絶されてしまう。もしかすると、「姫」は何か気づいているのかもしれない。
港にある隠れ家に戻ったマウラムは、通信用魔道具を取りだした。
「マウラムです。
モリーネ姫が現れました」
「そんなはずがなかろう。
別人ではないのか?」
魔道具から聞こえてきたのは、女性の声だった。
「いえ、私が見る限り、本物に見えました」
「まあ、そんな可能性はまずないが、万一に備えて準備しておくか」
「彼女は、モロー街道を城へ向かっております」
「よし。
後のことは、こちらで準備する。
お前は、その女がどこから来たか、足取りを追え」
「はっ、分かりました」
魔道具の通信は、一方的に切れた。
恐らく、彼より立場が上の相手だったのだろう。
「やれやれ」
マウラムは、姫が港まで来た航路が無数にあることを考え、頭を抱えた。
◇
俺は、街から少し離れたところで、「土の家」を造った。
その夜は、そこで過ごした。
早朝に起き、街道を東に向かう。
点ちゃん2号は、舗装されていない道を順調に進んでいた。
窓から見える風景は、なだらかにうねる草原だ。
「モリーネさん、この道の名前は、『モロー街道』で合っていますか?」
俺が質問すると、モリーネ姫は不思議そうな顔をしていた。
「シローは、ここに来たことがあるの?」
「いいえ、初めてですよ」
「よくこの道の名前を知ってたわね」
「ええ、ちょっとした事情で」
俺は、2号の後ろの方の座席に座っているリーヴァスさんとルルの所に行った。
ナルとメルは、船旅ではしゃぎ過ぎたからか、朝から寝ていた。
「シロー、何かあったのですね」
さすが、ルル。
「リーヴァスさん、ルル。
よく聞いて下さい。
敵が、この先で待ち伏せているようです」
「ふむ。
で、どうしますかな」
「子供たちは俺が守りますから、迎撃の用意をしてほしいのです」
「分かりました。
ルル、ここはシローと一緒に、ナルとメルを守りなさい」
「おじい様、お一人で戦われるつもりですか」
「一人の方が、かえって戦いやすいこともあるのだよ。
ここは、私に任せておきなさい」
そういうことなら、リーヴァスさんに任せてみよう。
「分かりました。
何かあれば、声を掛けてください」
リーヴァスさんはニッコリ笑うと、隣に置いたマジックバックから薄青く光る剣を取りだした。いつかピエロッティの首に突きつけた、あの魔剣だ。
「では、敵の攻撃を合図に、俺とルルは防御、リーヴァスさんは攻撃でお願いします」
俺はそう言うと、情報収集のために点ちゃんを展開した。
◇
俺は、念話を通し、コルナにも危険を伝えた。
『コルナ、敵が襲ってくる可能性が高い。
万が一に備えて、モリーネ姫に付いていてくれ』
『分かったわ。
お兄ちゃんは、どうするの?』
『俺は、情報収集と防御だな。
今回は、リーヴァスさんだけが外に出る』
『一人だけで大丈夫?』
『まあ、任せてみよう』
『こちらも、任せてもらって大丈夫よ』
『頼むぞ』
『ふふふ、後で「お座り」おねだりしちゃお』
俺の膝に座ることを、コルナは「お座り」と名づけたらしい。まあ、ここは仕方がないか。
点ちゃん。周囲の状況はどう?
『(・ω・)ノ まだ、何もいませんよー』
何か近づいたら教えてね。
『(^▽^)/ はいはーい』
最近、この点ちゃんの落ちつきというか、緊張感の無さが心地よくなってきたな。
いつもお読みいただきありがとうございます。
次回、リーヴァスさん好きにはたまらない展開になっております。
ご期待ください。
では、明日につづく。




