第134話 聖樹世界編 第1話 少年と家族
いよいよ『聖樹世界エルファリア編』がスタートします。
様々な種族、多様な魔獣、まさにファンタジーというお話になったと思います。
ポータルズならではの「枕」があるので、それが煩わしい方は二番目の「◇」からお読みください。
では、第4シーズン、お楽しみください。
『ポータルズ』
そう呼ばれる世界群。
ここでは各世界が『ポータル』と呼ばれる門で繋がっている。
『ゲート』とも呼ばれるこの門は、通過したものを異世界へと運ぶ。
この門には、様々な種類がある。
最も多いのが、二つ対になった『ポータル』で、片方の世界からもう一方の世界へ通じている。
このタイプは、常に同じ場所に口を開けており、向こうに行った後、こちらに帰ってこられる利便性から、商業活動や外交をはじめ、一般市民の行き来にも使われる。
国は通行料を徴収することで、門の管理に充てている。
他に一方通行の『ポータル』も存在する。
このタイプは、前述のものより利便性が劣る。僻地や山奥に存在することが多く、きちんと管理されていない門も多い。
非合法活動する輩、盗賊や無許可奴隷商人の移動手段ともなっている。
また、まれに存在するのが、『ランダムポータル』と呼ばれる門だ。
これは、ある日突然町の広場に現れることもあるし、人っ子一人いない森の奥に現れることもある。そして、長くとも一週間の後には、跡形もなく消えてしまう。
この門がどこに通じているかは、まさに神のみぞ知る。なぜなら、『ランダムポータル』は、ほとんどの場合、行く先が決まっていないだけでなく一方通行であるからだ。
子供が興味半分でこれに入ることもあるが、その場合、まず帰ってくることはない。
多くの世界で、このケースは神隠しとして扱われている。
◇
ある少年が『ポータル』を渡り、別の世界に降りたった。
少年の名は、坊野史郎という。
日本の片田舎に住んでいた彼は、『ランダムポータル』によって、異世界へと飛ばされたのだ。
そこには、中世ヨーロッパを思わせる封建社会があった。
違うのは、魔術と魔獣が存在していたことだ。
特別な転移を経験した者には、並外れた力が宿る。
現地では、それを覚醒と呼んでいた。
転移した四人のうち、他の三人は、それぞれ『勇者』、『聖騎士』、『聖女』というレア職に覚醒した。しかし、史郎だけは、『魔術師』という一般的な職についた。
魔術師としてのレベルも1だったが、彼には使えるスキルが『点魔法』しかなかった。この魔法は、視界に小さな点が一つ見えるだけというもの。役に立たないスキルしか持たない彼は、城にいられなくなってしまう。
その後、個性的な人々との出会い、命がけの経験、そういったものを通し、史郎は少しずつ成長していった。
点魔法も、その「人格」ともいえる『点ちゃん』と出会うことで、少しずつその使い方が分かってきた。
役に立たないと思っていた点魔法は、無限の可能性を秘めていた。
少年はこの魔法を使い、己の欲望のまま国を戦争に追いやろうとした国王一味を壊滅させた。
安心したのもつかの間、幼馴染でもある聖女が、一味の生きのこりにさらわれ、『ポータル』に落とされてしまう。
聖女の行先は、獣人世界だった。
彼女の後を追いかけ、獣人世界へと渡った史郎は、そこで新しい仲間と出会い、その協力で聖女を救いだすことに成功する。
しかし、その過程で、多くの獣人たちがさらわれ学園都市世界へ送られていることに気づく。
史郎は友人である勇者を追い学園都市世界へと向かう。そして、彼と力を合わせ、捕らわれていた獣人たちを開放する。
ところが、秘密施設で一人の少女を見つけたことから事態は新たな展開を見せる。
その少女は、エルフの姫君だった。彼女からエルフの世界への護衛を頼まれ、少年と彼の家族はポータルを渡る。
これは、そこから始まる物語だ。
◇
獣人世界でポータルを潜った、俺とその家族、つまり、ルル、ナル、メル、コルナとリーヴァスさんは、エルファリア世界にあるポータルから出てきた。
もちろん、護衛対象であるエルフ国第三王女モリーネも一緒だ。
出口は、狐人国で潜ったような巨大な神樹様の、その口からだった。
ポータルから出たところで待っていたのは、壮年の男女だった。
男性は、百八十五センチくらいの長身で、右目の上下に刀傷がある。
女性は、やはり、百七十センチくらいはあるだろう。
二人とも、日本で言うモデル体型だ。
二人とも、顔立ちが非常に整っている。
そのため、俺は最初二人をエルフかと思ったほどだ。
「ルル、待ってたよ」
男が腕を広げる。
俺は嫉妬でかっとなったが、その気持ちをぶつける必要は無かった。
なぜなら、ルルは男性ではなく、女性の腕に飛びこんだからだ。
「お母さん!」
え!? ルルさん、今、何と?
◇
ルルの母親は名前を、エレノア=マクリーンと言った。父親は、レガルス=マクリーンだ。
共にこの世界、エルファリアの中央ギルドで働いているそうだ。エレノアさんは、リーヴァスさんの娘ということになる。
少しの間、驚きの余り固まっていた俺だが、二人にナルとメルを紹介する。
娘たちは、彼らがルルの両親だと分かると、安心したようだ。
「エレノア・バーバ、レガルス・ジージ?」
ナルが、いきなり名前を確認する。エレノアさんの顔が、一瞬、夜叉のようになったのは気のせいだろう。
「エレノア・ねえね、ですよ」
結局、二人はエレノアさんをエレ姉、レガルスさんをレガ兄と呼ぶことにしたようだ。
「ところで、ルル。
彼を紹介してくれるかな」
レガルスさんが、急に真面目な顔になり、こちらを見る。
イケメンの真面目顔って、なんだか怖い。
「はい、お父様。
こちらは、シローさんです。
アリストのギルドで冒険者をしています」
「ああ、その辺のことは、キャロやマックから既に聞いてるが……」
ルルパパ、レグルスさんは、こちらをじっと見ている。
「お前とは、どういう関係かな?」
あうっ! その質問が来ますか?
「一緒に暮らしています」
「一緒に暮らしているということは、どういうことかな?」
ルルは、赤くなってモジモジしている。
「以前は、『旦那様』でしたが、今は……」
ルルさんや。それ、確実に誤解を招くよね。
「おい、お前!
どういうことだ!?」
レガルスさんが、俺に迫る。
ほら、やっぱり。
「ええと……」
俺が、しどろもどろしてると、スパーンという小気味いい音がした。
エレノアさんが、白い棒のようなもので、レガルスさんの頭を殴ったようだ。
「あなた、シロー君が困ってるでしょ」
「でも、ハニー、彼は……」
スパーン!
「ルルに……」
スパーン! スパーン!
「ルルが男と……」
スパーン! スパーン! スパーン!
白い棒は柔らかい素材のようだが、これだけ立てつづけに殴られるとダメージが入るらしい。レガルスさんは、頭を抱えてうずくまってしまった。
「ごめんね。
この人ったら、ルルの事となると周囲が見えないのよ」
「い、いえ、大丈夫です」
俺は、夫婦漫才のような光景に、思わず吹きだしそうになるのを堪えて、やっとそれだけ言った。
「お父さん、久しぶりね」
「ああ、元気だったか」
エレノアさんの挨拶に、リーヴァスさんが、優しい声で答えている。
「リーヴァスさんには、ナルとメルがとてもお世話になっているんですよ」
俺はダメージから復活しないレガルスは放っておき、会話を続けることにした。
「父さんは、妙に子供に懐かれるからねえ」
そう言うエレノアさんは、嬉しそうだ。
ナルとメルが、リーヴァスさんに抱きつく。
「じゃ、とにかく、本部まで行こうか」
「はい。
本部というのは?」
「ああ、父さんから、まだ聞いてなかったのね。
ポータルズ世界群のギルドを取りまとめる本部がここにあるの」
「えっ!
そうだったんですか」
エレノアが指さした方を見ると、空の一部の色が変わっている。地球で雨季がある地方のスコールが、あんな形をとると聞いたことがある。
「あれこそが、神聖神樹様よ」
◇
空の色が変わっていると見えたのは、全て巨木の幹だったらしい。
背後を振りかえって、俺たちが出てきたポータルを持つ神樹様を見る。
やはり大きい。
しかし、その神樹様から見ても、神聖神樹はけた違いに大きい。
恐らく、何百メートルの単位で上に伸びているようだ。
幹の太さも、百メートル単位で計った方がよさそうだ。
俺たちは二台の馬車に乗りこむと、森の中を貫く道を進んでいった。
森の木々は、今まで見たことが無いほど大きい。
鳥や獣の姿もちらほら見える。
豊かな環境を森が生き物に与えているのだろう。
見ているだけでくつろげる光景だ。
俺は初めて訪れたのに、どこか懐かしい不思議な感覚を味わっていた。
いつもお読みいただきありがとうございます。
ルルのお父さん、カッコいいのになぜだか残念な感じです。
ルルは、お母さん似なのでしょう。
お、点ちゃん、なんだい?
『(*'▽')ノ みなさん、読んでくれてありがとう。聖樹世界編おもしろいよー!』
これはこれは。紹介してくれてありがとうね。
では、明日へつづく。




