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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第3シーズン 学園都市世界アルカデミア編
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第18話 獣人救出計画始動

 史郎の獣人解放作戦の最初の一手は?

 


「ボクに首輪を付けたのは、この人です!」


 テコは、俺が助けた女性をまっ直ぐ指さした。

 俺は、女性に話しかける。


「本当ですか?」


「……」


 答えられないということは、事実なのだろう。これで、少なくとも三人の人族が、猿人の後ろにいたことが分かった。

 これまでの情報を合わせると、『賢人会』主導で、組織的に獣人の略取が行われていたことになる。

 俺は、すぐダンと

連絡を取った。彼は、危険を冒して、またこちらの住居までやって来た。


「秘密施設まで見つけたのはすごいが、救助のためとはいえ、嗅ぎまわっている誰かがいると、気づかれたのはまずかったな」


 ダンは、渋い顔だ。


「今のところは、彼女が施設内に隠れていると思われているようだけどね。

 まあ、逃げたと気づかれるのも、時間の問題だろう」


「ということは、計画は早めるべきだな。

 青写真は、もうできているんだろう?」


「ああ、やっと最後の欠片かけらそろったところだ」


「よし、じゃあ聞かせてくれ」


 俺は、ダンに獣人開放計画を話して聞かせた。


 ◇


 パルチザンの参加が決まり、いよいよ計画が本格的に動き出した。

 この計画には、大きく分けて、四つの柱がある。

 その四つとは、俺の行動、加藤の行動、獣人たちの協力、パルチザンの協力だ。

 まず、まっ先に行動を起こしたのは、加藤だ。


 加藤は学園に行き、彼をイジメていた三人を探し、その前に立った。

 彼らはローブの色が、赤とオレンジから、オレンジと茶色に降格していた。

 当然のように、加藤に恨み言をぶつけてきた。


「おい、カトゥー!」


 オレンジローブの男子が、突っかかってきた。

 加藤は、史郎が言った通りに事が運ぶので、驚いていた。


「お前のせいで、降格されたんだぞっ!」

「お前のせいだ!」

「責任取れよ!」


 口々に騒ぎたてる。

 これまで繰りかえしてきたように、オレンジローブが、加藤の背中を蹴ろうとした。しかし、彼の足は加藤の背中に、当たらなかった。


 そのとき、加藤は既に、オレンジの後ろにいた。

 オレンジの背中に軽く足を添える。

 すっと押すと、オレンジローブが、ものすごい勢いで吹っとんだ。

 飛んでいった先にあった、中庭の植えこみに突っこみ止まる。枝による擦り傷で、顔がひどいことになっている。


 ほぼ同時に、茶ローブの二人が加藤に掛かっていったが、同様の結果に終わった。

 やっと立ちあがった、オレンジが叫ぶ。


「貴様、覚悟はできてるんだろうな! 

 ボクの父さんは、研究者なんだぞ!」

「そうだぞ!」

「お前なんか、学園を追いだされちゃえ!」


 とてもうるさい。

 周囲は、騒ぎを聞きつけて集まってきた生徒たちで、埋めつくされている。

 加藤は、おもむろに、両手をパンと合わせた。

 それを合図に、加藤の髪が、茶色から黒色にさっと変わる。

 今まで、ざわついていた周囲の生徒がシーンとなる。


「く、黒髪!?」


 三人の顔が青くなる。


「た、ただ黒髪なだけだろ!」


 オレンジが叫ぶが、集まった生徒たちは、彼の言葉など聞いていなかった。


「黒髪! 

 素敵ーっ!」

「ボクたちのクラブに入らないか?」

「サイン下さーい!」


 少年少女が、加藤をとり囲む。


「勇者でもないのに、大きな顔するな!」


 オレンジがそう言った時、強い風が吹いて、少女のスカーフが空高く舞いあがった。


 ばっ


 加藤はジャンプすると、空中でさっとそのスカーフを掴み、五階建ての校舎、その屋上に立つ。そのまま、ひょいと屋上から飛びおりる。

 彼は音も立てず、地上に降りたった。


「「「ワー!!」」」


 先ほどまで取りかこんでいた生徒たちが、また、どっと加藤の周りに押しよせる。

 驚きから立ちつくしていたオレンジと茶のローブが、突きとばされ、踏みつけられている。

 騒ぎを聞きつけ、何人かの教師が中庭へ出てくる。


「この騒ぎは、いったいなんだ?」


「先生! 

 黒髪の勇者様です!」


「えっ!?」


 予想外の答えに、教師が言葉を失う。

 生徒たちがつくる輪の中心には、確かに黒髪の少年がいる。

 しかも、彼はこの学園のローブを着ているではないか。


「生徒に黒髪の勇者が!?」


 教師は、すぐシートを取りだし、勇者の存在を学長に報告した。


 ◇


「ようこそ、トリビーナ学園へ」


 学長室では、ターランが加藤を歓迎していた。


「しかし、勇者様が、我が学園に在籍しておられるとは……」


 ターランは、加藤の右手を両手で包みこみ、腰を曲げている。


「気づくのが遅れ、誠に失礼いたしました」


「いや、こちらにも、いろいろ事情がありましたから」


「どうか、このまま我が学園にご在籍下さい!」


「はあ、とりあえず、そのつもりです」


「ありがとうございます!」


 ターランは、揉み手せんばかりだ。


「そうそう。

 このことは、中央政府にも知らせてよろしいですか?」


「ああ、そうですね。

 まあ、構いませんよ」


 加藤は、史郎と決めてあったセリフを言った。


「今、どちらにお住まいで?」


「えー、やや遠方の小さな宿ですが」


「おお、それなら、学園の特別室を用意いたしますゆえ、どうぞ、そちらにご滞在ください!」


「それは……ありがとうございます」


「後程、歓迎の宴を開きます。

 それまでは、どうぞ、お部屋でおくつろぎを。

 スーシェ先生」


「はい、学長」


「勇者様を、ご案内さしあげて」


「はい、承りました。」


 加藤は、スーシェに連れられ、特別室が並ぶ区画まで来た。


「どうぞ、お入りください」


 加藤は、思わず笑いだしそうになった。 なぜなら、その部屋が、史郎の待機部屋『タイタニック』に、そっくりだったからだ。

 しかも、何と、『タイタニック』の隣部屋だった。

 今、隣の部屋には、自分と念話のチャンネルを開いた史郎がいるはずだ。


「それでは、お部屋の説明を……」


「ああ、今は、いいですから」


「え? 

 そうですか。

 では、また改めてご説明に上がります」


「ありがとうございます」


「勇者様のクラスは、今日から最上級となります。

 私が、担任です。

 よろしくお願いします」


「ああ、ありがとう」


 スーシェが出ていって少しすると、加藤は隣の部屋のドアをノックした。


「どうぞ」


 加藤が『タイタニック』へ入ると、やはり、史郎がいた。


 ◇


「隣部屋になったときは、ホントびっくりしたぞ」


 俺は笑いながら、そう言った。


「しかし、はるばる異世界まで来て、また同級生になるとはな」


 加藤も笑っている。

 俺たち二人は、転移する前、高校のクラスメートだったからね。


「部屋の方は、どうだ?」


「ああ、ここと同じだから、勝手知った感じだな」


「そりゃ、良かった。

 それに、今後連絡しやすいから助かるな」


「まあ、そりゃそうだ」


「予想通り、政府関係者が食いつけばいいが」


「自信ないのか?」


「いや、まず、大丈夫だろう。

 プライドの高いヤツが、黒髪の勇者と接触しないなんて考えられない」


「まあ、お前が言うんならそうだろうよ。

 で、この後、俺は何をすればいい?」


「加藤は、とりあえず普通に学園生活を送ってくれ。

 次に活躍してもらうのは、政府関係者に会う時だな」


「その後は?」


「きっと『賢人会』が出張ってくるはずだから、そこが正念場だ」


「分かった」


「じゃ、明日からよろしく頼むよ、同級生」


「ははは、本当に同級生だから、冗談にならないな」


 俺と加藤は、束の間のおしゃべりを楽しんだ。


 いつもお読みいただきありがとうございます。

 今回も、モブキャラとして出てきたオレンジローブ、茶色ローブは名前すら出してもらえませんでした。

 女王畑山に叱られないうちに、作者は失礼します。

 では、明日につづく。

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