第15話 追跡
史郎は、ダンからもらった手がかりを元に、賢人会の拠点を追いかけます。
俺は、髪染めの液体とポルの血、その両方をダンに送った。
ダンからの報告は、思った通りのものだった。
髪染めは、ポルの血とほぼ同一のものであることが分かった。
「こりゃ、えれえことだぞ、おい」
彼は俺たちの住居まで、直接自分で報告に来た。
この件には、危険を冒す価値があるということだ。
俺たちは、ダンが髪染めを入手した男を起点にすることにした。
今回は失敗ができないので、俺だけが動く。
これにはダンが反対したが、コルナの説得で最終的には折れてくれた。
まあ、点ちゃんを使いまくる予定だから、誰かいると困るんだよね。
D地区にある繁華街の外れに、その酒場があった。
夜のとばりが降りる前に、通りから目につかない位置を見つけておいた。酒場が見張れるその場所で、俺はダンから渡されたシートを覗きこんでいた。
それには、背が低いダルマのような体形の男が写っている。
彼が、髪染めをダンに売った男だ。
夜露に濡れながら、二時間は待ったかもしれない。
写真の男が、店にやって来た。
俺は、男に特別な『・』を一つ貼りつけると、その場を立ちさった。
その『・』からは映像と音声が送られるが、今回は位置情報も表示される。
◇
写真の男が誰かに会うたびに、分裂した『・』が相手にくっつき、その人物がまた誰かに会うと『・』がくっつく、という仕組みだ。
三日後には、すでに膨大な数の『・』が、都市中にばら撒かれていた。
千くらいまでは、俺も数えていたが、急に数が増えだしたので、数えるのをやめた。
今、点魔法で作ったパレット(板)の上には、町中に広がった『・』が表示されている。
さて、予想が当たるかな。
俺は、ある条件を満たした『・』が現れたら、知らせてもらうよう、点ちゃんにお願いしてあった。だから、パレットを見続ける必要もない。
普通に学園に行き、授業を受け、タイタニックでくつろぐ。そういう、学生としての生活を送っている。
五日目、待ちに待った連絡が来た時、パレットの上は、表示された『・』で塗りつぶされるほどになっていた。
『(・ω・)~* ご主人様ー、点が一つ、学園都市から外に出たよ』
来たか!
よし、点ちゃん、『・』はどっちに向かってる?
『(・ω・) 中央山脈の方向だよ』
授業中だった俺は、お腹が痛くなったという定番の仮病を使い、学校を早退した。
路地裏で点ちゃん1号に乗りこみ、一気に上空へ。
学園都市の外へ出た『・』を追う。
点ちゃん1号は、すぐにそれに追いついた。
もちろん、高度は下げていない。
下方は、学園都市と中央山脈との間に広がる荒野だ。見晴らしがいいのに、人の姿も、乗り物の姿も見えない。
それは、つまり、『・』が地下を移動していることを意味していた。
しかも、このスピードだと、何か乗り物を使っているはずだ。
地下の『・』から映像を送ると、案の定、カプセルのようなものに乗る女性の姿が映った。
音声情報も送ってくるが、静かなものだ。
俺は、視点を上空からのものに切り替え、さらに『・』を追った。
『・』は、中央山脈中央、山々が最も高い辺りで静止した。
また、視点を切りかえると、女はカプセルから、降りるところだった。
『・』を、女の上一メートルくらいに設定して、辺りを見回す。どうやら、地下に設置されたチューブのようなものを通って、ここまで来たようだ。
三十歳くらいに見える女は、ドアを潜りぬけると、長い廊下を奥へ奥へと進んでいく。
途中、エレベーターのようなものも利用しながら、上に進んでいく。
ある場所の前で立ちどまると、呪文を唱えた。
壁に入り口が開き、彼女は中へ入った。
そこは、研究施設なのだろう。さまざまな形をした透明な容器や、機械類が複雑に絡みあっていた。広さは、学校の教室分くらいはある。
片側は窓になっており、学園都市全域が見渡せた。
となると、ここは、中央山脈の学園側の山麓だということになる。
女が研究作業に入ってしまったので、俺は点ちゃん1号内に設置した風呂に入ることにした。
点魔法で作った縦横二メートル、深さ一メートルの箱からフタを取りはずす。
そこに、お湯の魔石に水魔術を付与し、湯を張っていく。温度調整用の水の魔石も使う。
服を脱ぎ、お湯につかる。
景色を見るために、点ちゃん1号の横と上は透明にしてある。
おおー、絶景の中でのお風呂、こりゃいいね。露天風呂以上だ。
俺は、中央山脈の美しさと、大陸西側の緑を見ながら、ゆっくり入浴する。
「あ~、いい湯だな~」
いつもお読みいただきありがとうございます。
史郎が賢人会の拠点をつきめました。
次回は、賢人の隠れ家を調査しつつ、なぜか海でバカンス。
では、つづく。




