第7話 試験結果と違和感
史郎の試験結果は?
どこかおかしい学園都市です。
受験後、俺が家に帰ると、ポルとテコが少し疲れたような顔をしていた。
まあ、一日中家の中にいるから、飽きちゃったんだろうね。
俺は、二人を庭に呼んだ。一目では獣人と気づかれないよう、テコはフード付きローブを羽織っている。
二人を点ちゃん1号に乗せ、一気に空へ上がる。
テコは、目を丸くしている。
学園を探すために上空からこの世界を調べたとき、目をつけておいた場所へ向かう。
大陸北東の海上に浮かぶ群島だ。
上空から人がいないのを確認した後、島に降下する。
目の前には、まっ白な砂浜とコバルトブルーの海が広がっている。
「うわーっ!」
「すごーい!」
二人は服を脱ぐと、一直線に海へ飛びこんでいった。
まあ、点を付けてるから、海生の魔獣に襲われても大丈夫だしね。島に大型の魔獣がいないのは、すでに上空から調べてある。
俺たちは、海で泳いだり、近くにあった古い難破船を調べたり、暗くなるまで遊んだ。
家に帰ると、コルナがおかんむりだった。
「一体、どこ行ってたの!
お兄ちゃんとポルはともかく、テコがいなくなったら心配するでしょ!」
あちゃ~、島で念話しとけばよかったよ。
ポルが島で泳いだことをミミに話して、余計に叱られている。
「あんたたちだけ遊んでたの!?」
俺とポルは、ミミとコルナの前に正座させられ、長いことお説教された。
◇
次の日、ギルドから貸しだされている建物に、赤い制服を着た男が、受験で使ったものに似たシートを持ってきた。
どうやら、地球でいう「郵便配達」のような仕事をしているらしい。男は俺にシートを渡すと、サインを求めてから去っていった。
シートに触れると、名前と受験番号が表示される。番号をタップすると、ローブを来た老人が画面に現れた。
「シロー君、合格おめでとう!
私は、学長のターランだ。
君は特待生として、我が学園に入学することとなった。
授業料、学費共に免除となる。
寮に入りたいなら、それも無料だ。
詳しい説明は、明日学園で行う。
九時に受付まで来てくれたまえ。
では、そのときに会おう」
メッセージが終わると、シートは黒くなった。
俺はコルナに、学園の調査に向かうことを告げた。
「私たちは私たちで、やることがあるから」
コルナは、何か心に決めた計画があるらしい。
俺は彼女にテコの世話を頼むと、次の日に備えて早めに寝た。
◇
次の日、俺は予定の時間、九時ぎりぎりに、学園の受付に到着した。
そこには、スーツのような服の上から黒いローブを羽織った人が、俺を待っていた。
「シローさんですね?」
二十台後半だろうか。落ちついた雰囲気の女性だ。
俺は、黙って頷いた。
「私は、スーシェといいます。
この学園の教師です。
今日は、あなたを学長のところまで案内する役を、おおせつかっています」
教師が、わざわざ一生徒を案内する? 俺は、警戒を高めた。
早足に歩くスーシェの後をついていく。
受験会場を越え、どんどん奥へ進むと、彼女が突きあたりの壁に触れる。そこが開くと、中は、いつか見たこの世界のエレベーターになっていた。
扉の数字が「5」になり、俺たちはエレベーターから外へ出た。端が見えない長い廊下には、赤い絨毯が敷きつめられている。
降りてすぐ、目の前にある扉の前で、スーシェが呪文を唱える。きっと、ノック代わりだろう。
扉は音もなく内側に開き、俺は中に入った。
◇
その部屋は二十畳はあり、壁の三面は書籍で埋まっている。
残った一面は、外の景色が見渡せた。
山頂に雪を頂いた、この大陸の中央山脈が見える。
まさに絶景だ。
その景色を背に、昨日シートの映像で見た老人が座っていた。
思っていたより小柄だ。
うりざね顔をしている。
前髪が後退したのか、額がやけに広い。
肌の色は青白く、あまり健康そうには見えない。
「シローさんを、お連れしました」
そう言うと、スーシェは扉の横まで後ろへ下がった。
「おお!
君がシロー君か。
この学園へようこそ」
ターラン学長はそう言うと、革張りの椅子から立ちあがり、俺の前まで来た。手を差しだしているのは、握手しろということだろう。
俺は仕方なく、その手を握った。
しかし、これは明らかに一介の学生への対応ではない。王族としての証明書が利いているのか、黒鉄の冒険者であることが伝わったのか。
とにかく、そういったことは相手に任せ、今は情報を引きだすことに集中しよう。
「シローと言います。
よろしくお願いします」
『(・ω・)ノ ご主人様ー!』
なんだい、点ちゃん。
『(・ω・) この部屋って、いろんな種類の探知機がいっぱいあるね』
なるほどね。ただ挨拶してるだけじゃないんだね。
「本来、入試で一番の君が新入生挨拶をすべきなのだが、今回はコーネリアがその役をすると、以前から決まっていてね」
「コーネリア?」
「ああ、今回の入試で二番だった子だよ。
赤髪の目立つ子だから、見知っているかもしれない」
ああ、信号機ちゃんか。
『(・ω・)ノ ご主人様ー、それはひどいんじゃない?』
だって、最後は点ちゃんも、ちょっと怒ってたでしょ。
『(^ω^) でも、ご主人様といっぱい遊べたから』
そうだね、また遊ぼう。
『(^▽^)/ わーい!』
俺が点ちゃんと話している間、学長はいろいろ学園について説明してくれていたらしい。
聞いてませんでした。どうも、すみません。
「……ということなんだ。
では、よろしくお願いしますよ」
俺は学長が話した言葉の最後だけ聞いて、なんとか反応した。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「では、スーシェ先生、シローさんを、待機部屋までご案内してさしあげて」
「はい。
シローさん、こちらへどうぞ」
どうも、この世界は居心地悪いな。くつろぎを邪魔する匂いが、プンプンする。
同じ階の一室に案内される。
部屋は、学長の部屋と同じくらい広さがあった。
内装、家具共に学長室より豪華だ。
な、なんじゃこりゃー!
俺は、心の中で突っこんでおいた。
これはギルドで、マウシーが案内してくれた部屋と同等以上だ。つまり、生徒なのに、なぜか国賓待遇以上?
「このお部屋は、シローさん専用となります。
ご自由にお使いください」
どうなってんのこれ?
いつもお読みいただきありがとうございます。
史郎、合格おめでとう。
まあ、点ちゃんのおかげだけどね。
しかし、一体この好待遇にはどういった意味があるのか?
学園都市の謎ですね。
さて、学園入学を果たした史郎ですが、果たして勇者加藤を見つけることが出来るのでしょうか?
次回へつづく。




