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蟻の家

作者: ロングテール

僕達はどうして生きているんだろう。


お母さんは兄弟を増やすために今日も奥にこもってる。

兄弟たちはお母さんや子供達のために今日もせっせと食べ物を集めている。

生きるために食べる。

そこに生きている意味なんてない。



僕はある時ふと考えた。僕はどうして生きているんだろうって。

みんなはそんなこと考えたこともなかったようだし、これから考えるつもりもまるで無いみたいで、なぜそんなことを聞くのかと笑われてしまった。


お母さんも「生きるためよ」としか言ってくれない。


それは答えじゃない、答えになってない。




僕はみんなが家を作っていく様子を見ながら、ご飯を運び続け、ようやく家ができたら今度は兄弟を増やすためにご飯を運び、食べて、また運んだ。




理由なんかないけど、ご飯を運んでみんなで食べて、よしまた働くぞと元気を出して、家を作って兄弟を増やして。



それで良いかと思っていたある日、自分よりもとてもとても大きな生き物に、家を壊された。



その生き物は僕たちがご飯を運ぶのを邪魔したり、兄弟を踏み潰したり、迷ってしまった兄弟を殺したりしてくる最悪の生き物だった。



他の生き物達はよほど邪魔しない限り僕たちのことなんて無視するし、わざと踏み潰したりなんてしない。



昔、長く生きた兄弟から教えてもらった事がある。



あの生き物は頭が良い。自分たちのようにただご飯を集め、家を作り、兄弟を作っていくだけでは満足せずにいろいろな生き物を殺して回る悪魔だと。



その兄弟の言葉はその時よくわからなかったけど、僕の家を壊された時にやっと分かった。なぜそんなことをするのかは分からないけど。




その生き物たちと同じ種類ではあっても周りと比べると幾分か小さいそいつは、僕たちの家の目の前に兄弟たちを踏み潰しながらしゃがみ込み、わざわざ物に入れて持ってきた水を


僕たちの家に流し込んだ、



何をするんだ、と思った。



僕は、すごく怒った。



家からはたくさんの兄弟たちが命からがら這い出てきて、散り散りに逃げ惑った。



お母さんも命からがらでてきて、他の兄弟たちと逃げた。


逃げ遅れて出てこない兄弟も、溢れてくる水に浮いている兄弟もたくさんいた。




その生き物はその残酷な様子を興味深そうに、目をキラキラさせて見ていた。



恐ろしい生き物だ。



みんなも怒ったり恐れたりしているのだろうと兄弟たちを見ると、彼らはお母さんを守るようにただ歩いていた。





なぜ……



次の家を作る場所を探して歩いていく兄弟が異様なものに見えた。



たった今家が壊され、兄弟も大量に死んだのに、この生き物にやり返してやろうと思わないのだろうか?





その時やっと僕は僕がおかしいのかと気がついた。



周りから見れば僕はかなりおかしいと思う。



なぜ生きる意味を聞く?

生きることに一生懸命であれば意味などいらないだろう。




なぜ家を壊されて怒る?

家を壊されたならこれから暮らす場所を早く作らねばならないのに。

怒る暇なんてないのに。






生きていることが生きる意味なのに。


今生きているから必死こいて生きようとするのだと。




それだけだった。




そしてそんなことを考えることよりも、まずは一生懸命生きることが大事なんだと。



僕は気づけた……





気づけた瞬間、








僕は踏まれた。




 人生で悩んだ時、原点に戻ってシンプルに考えることで問題が解決したり、気持ちが軽くなることもあるように思います。

 このお話は(本当のところなんてわからないけど)色々考えず愚直に生きている蟻たちの中で、ただ1匹の蟻が“生きる意味”に疑問を持ち、悩み、答えを探して行くものです。

 小さな蟻1匹の悩みなど、存在にさえ気づかず踏んでしまうこともある私たちからすると、とてつもなく小さなものですが、それは世界から見た私たち一人一人にも当てはまるんじゃないかなとか考えながら書き殴った自己満小説です。

 悩んでいる人の何かのとっかかりになれれば、なんか幸せだなあとか思っています。

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