ビッチ、お前に兄は渡さない!
ビッチ撃退ざまあ話。
なんかビッチが勝手に自爆した感半端ない。
兄さんが朴念仁でよかったと思う。
そう緋月は溜息を吐いた。
恋愛ごとに鈍くなければこんな女に捕まっていたかもしれないと考えると、朴念仁のままでいいとさえ思う。
まあ、物事をしっかり見ている兄さんならこんなクソビッチに捕まりはしないだろうが。
いつもは自宅でのんびり趣味のゲームでもやっていただろうが、
兄さんの手伝いで出向いた先で兄さんを狙う女に
気が付いてから奴の邪魔ばかりする日が続く。
顔のいい男どもを侍らせ、お姫様気分でいるクソビッチに大事な兄を渡してなるものか。
男どもはクソビッチの下僕だ。あれは信者と言う名の下僕だ。
記憶違いでなければ、あの女の取り巻きのうちの何人かは、仲のいい恋人や婚約者がいたはずだが。ほとんどビッチのせいで破局した。
兄の手伝いで出向いた時に彼女たちと会ったことがあったが、普通に性格のいい優しい女たちだったと思う。何回かイチャイチャしていたのを見たこともあったので、彼らが恋人を大事にしていたのは知っている。
そんな恋人たちを引き裂いて、自分の下僕にするあの女にだけは兄は渡さない。
クソビッチは信者を侍らせながらも、
兄や兄の友人、その他顔のいい男に熱視線を送っている。
顔良し、頭良し、性格良し、運動神経良しと、
どこかチート並みにハイスペックな兄にクソビッチなど勿体なさすぎる。
第一、そんなこと弟である僕が許さない。
現在、喫茶店”森のひよこ”でコーヒーを飲みながらあの女を撃退する方法を考えている。
日和と、ビッチに婚約者を奪われている日和の友人、神崎詩織と3人で。
「海翔くん、どうして……」
「詩織……」
「クソビッチの下僕になってるよ」
「緋月くん!!」
泣き出した友人を見て日和が怒る。
「私、あの人に何もしてないのに、酷いことしたって海翔くんが……」
「だったら絶対的なアリバイを用意すればいいんだよ」
僕の言葉に2人はどうすればいいのと目で尋ねる。
2人にニヤリと笑って作戦を話した。あとは奴が行動に移してからだ。
――2日後、神崎詩織はクソビッチと婚約者に呼び出された。
ここは兄の会社にあるホールだ。よく僕が手伝いで来る場所でもある。
周りには作業をしていた僕や兄さん、兄さんの同僚や友人もいた。
クソビッチは信者の後ろに隠れて、
神崎詩織をあざ笑うように見ていた。
「海翔さん、私怖いわ……」
怯えたように神崎の婚約者の腕にしがみつくビッチ。
(僕に言わせればお前のオメデタイ思考の方が怖いわ)
「俺が護るから安心して」
「海翔さん……」
ビッチと神崎の婚約者は見つめあって二人きりで甘い空気を作っている。
……茶番だ。
こんなふざけた茶番を見せられるこちらの身になってほしい。
「彼女は篠崎と付き合っているのか?」
……兄さんは平常運転だった。
この状況で平然としている我が兄はある意味最強だと思う。
ただ、今は黙っていてほしい。
「……海翔くん、何のようなの?」
茶番を見るのに疲れたのだろう神崎が用件を尋ねる。
「詩織。一昨日の夕方、香奈を階段から突き飛ばしたらしいな」
「怖かった」
(テメエは黙ってろクソビッチ!)
瞳を潤ませながら神崎の婚約者、篠崎海翔に擦り寄る女に、
緋月の額に青筋が浮かんだ。
「一昨日はお昼から夜まで日和のお店にいたわ」
そうなのだ。
一昨日仕事が休みだった神崎は、昼から閉店の夜までずっと日和の店にいた。
僕や日和に彼女が泣きついていたあの日だ。
ちなみに兄さんや兄さんの友人も何人かいたので証人はいる。
「嘘よ!証拠もないのに」
(そういうそちらはどうなのだ)
「その日のレシートならあるけど」
「!?」
「僕や他の常連さん達も何人か一昨日の夕方なら店にいたけど、彼女いたよ?
それにあの店監視カメラあるから、確認すれば分かるんじゃない?」
日和の店には一応監視カメラもある。
それに神崎を見た証人もいるのだと、僕はビッチ共に分からせた。
「なんだって!?
じゃあ香奈が言ってたことは……」
クソビッチは顔を真っ青にした。
いい気味だ。
「おい香奈、言ってたこと嘘だったのか?」
――監視カメラの映像を見て、真実を知った篠崎やビッチの取り巻きはビッチを捨てた。
おそらくもう誰にも相手にされないだろう。本当にいい気味である。
その後、あの女がどうなったかは知らない。
しかしあの女のせいで引き裂かれた
神崎と婚約者は、今はよりを戻して幸せそうだ。
2人で”森のひよこ”に来ることもあるらしい。
日和は常連が増えたと喜んでいた。
僕としてはあの女に兄さんが捕まらずに済んで一安心だ。
クソビッチを撃退できて気分がいい。
まあ、兄さんは曲がったことが嫌いだから
あんな性悪女に捕まるなんてありえないけれど。
「ああ、彼女か?
恋人のいる男に媚びを売るのは人としてどうかと思う」
後日、兄さんにあの性悪女について聞いてみたら、
こんな答えが返ってきた。
……気づいていたなら、僕がどうにかしなくとも
兄さんは引っかかったりしなかったな。
緋月は「アリバイを裏付ける証拠になるレシート等はとっておいた方がいい」と言ってレシート類を保管させただけ。
色々準備したけど、ビッチが丁度その日のことを出して自爆したので出番回ってこなかった。
あとで証拠はビッチの取り巻きに渡してさっさと帰りました。