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大橋の授業

いやあ。最近体調が優れなくてね。困ったもんですよ。

「今日は、孔子の論語を読んで来いという話であったな。古橋、やってきたか。」

大橋先生は見えない圧力をかけながら私に迫ってくる。

「ああっ。はい。やってきましたよ。」驚いたように返事をする。この先生生理的に無理かもしんない。


「読んでみろ。」

「学びて思わざれば即ちくらし、思いて学ばざれば即ち危うし。」

驚きながらもなんとか読み切った。こうして生徒の立場になって授業を受けると、いつも口酸っぱくして勉強しろと言っている私達が情けなく感じる。

「いいぞ。他のみんなもやってきただろうから。少し、漢文の文法でも学ぼうか。」

大橋はスルーするかのように、漢文の解説を始める。

これじゃ当然、生徒の心をつかめず、みんな寝てしまうのも一理ある。最近の教師には常識が欠けている。ただの教える機械に成り下がっているんじゃないかとつくづく思う。


要するにゴリ押しじゃ人の心はつかめない。中学の授業や高校の授業では不平不満が聞こえる授業でも一応成り立つが、大学の講義では閑古鳥が鳴く授業になりそうだ。


「麻友、最近の授業ってこんなにつまらないの?」私は本来愛梨がやりそうも無い、授業中に手紙交換で会話するという悪行に及んでいた。

「愛梨。先生にバレたら没収だよ。あの先生教え方は下手だけど、成績評価はキツいんだよ。」

「そうなのか。麻友。それは悪かった。授業に集中する。」


「こら!前野。寝てんじゃねえ。俺の授業が受けらんねえのか?」大橋は男子生徒に詰め寄る。

LINEもTwitterもFacebookも無い。しかし、皆の我慢は限界でテレパシーが広がった。

「その言葉有り難く受け止めておきましょう。大橋先生、僕は先生の授業が嫌いです。今すぐ出て行きます。」

俺も。私も。皆、そう言って教室を出て行く。次の授業も有るというのに。

「お、おい。待てよ。俺しか教えられねえじゃねえかよ。漢文とか。」


「残念ですが。大橋先生。俺達、中学生じゃ無いんで。それじゃ。」

「な、何やそれ。どういうこっちゃ。」大橋は気を失ってしまった。


実は、大橋が生徒だと思い込んでいたのは全員、塾講師で息子や娘に顔がそっくりな恐ろしい人たちであった。

「どういうことなの。これ。」私は何も知らずそのことに驚くばかりであった。



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