2-0. 極刑
ガラムド暦2774年、大盗賊リムファス・ゴルールが捕まった。
理由は自らの出頭によるもので、それを聞いた世界は大きくざわついた。
リムファス・ゴルールは彼の首を代償に、彼がリーダーを務める盗賊団『黒い狐』の無罪を要望した。
神国教会の神官レヴールはそれを了承し、リムファスを逮捕した。
しかし、神国教会はリムファスを斬首刑に処したあと、『黒い狐』を徹底的に破壊し壊滅し残滅し殲滅した。破壊の限りを尽くした。
リムファスには子供がいないと言われている。しかしながら、彼と関係を持っていた女性はあまりにも多いため、その判別がつかないという現状もあった。
雨が降ると、私は『あの記憶』を思い出す。
高い高い塔の上で、父さんが男の人に捕まっていた様子。
それを見ていた人たちは父さんを助けることもなく、何か言っていた。
――やめて。
――怖いよ。
父さんがいない。
いつもなら、父さんが抱きしめてくれるのに。
父さん、父さん、父さん。
父さんはどうしてそこにいるの?
父さんは何をしてしまったというの?
父さんは悪くない。父さんは悪くない。
やめて、父さんを悪く言わないで。
やめて、父さんをどうするというの。
男の人は持っていた刀を、父さんの首目掛けて振り下ろした。
その時のニヤリと笑みを浮かべた表情を、私は忘れることが出来ない。
雨が降ると、私は未だにその笑みを思い出して――震えが止まらない。
もうやめて、もうやめて。
父さんを――つれていかないで。
そして、あの日を最後に、『私』は『私』を捨てた。
雨が降っている。
雨は嫌いだ。あの記憶を思い出すから。
雨が嫌いだから、雨の見ない場所へ行こう。
でも、そんな場所なんて見つからない。
だから今日も――僕は動く。
この世界を、町を、人を呪って今日も生きる。
泥水を啜ってでも、僕は復讐してやる。
あのことをした――男を、僕は絶対に許さない。