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奴隷少女の勇者道  作者: 巫 夏希
第一章 シスター・レミリアは笑わない
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1-6. 解除(後編)


「な……! どういうことだ……?!」


 これほど巨大な炎の塊を、魔法で発現したのは男もレミリアも見たことはなかった。

 そしてレミリアは直ぐに、少女が泣いているのを見つけた。



 ――まさか、彼女が?



 そんなことを考えたが、それは彼女の容姿を見て、直ぐに否定された。

 何故なら彼女の手首にバンドが装着されていないからだ。

 この世界で魔法を使うには、素質以上に大事なものがある。それがそのリングだった。リングには『魔導鉱石』というものが組み込まれていた。魔導鉱石とは、ある鉱山でしか採掘することの出来ない鉱石で、それにはエネルギーが相当量含まれている。だが、必ずしも無限ではなく限りがある。そのため、替えの魔導鉱石が常に必要となるのだ。

 因みに魔導鉱石やそのリングは神国教会から支給される。この魔導鉱石によって、魔法を簡単に使うことが出来るようになった。神国教会がこの世界で高い評価を得ている一因でもある。


「は……はははっ! 『上』からどうしてあれほど迄にしつこく捕縛を命じられたのかが解った! まさかリング無しで尚且つノーモーションに魔法を発動出来るとはな!」


 男は笑った。それは自分の任務の真の意味を知ったからだろうか? それとも自分にはこの魔法を何とか出来るといった傲りからだろうか?

 レミリアはそのどちらでもない、もう一つの答えを導いていた。

 恐怖。恐れているのだ、その火球を、少女を。リング無しで魔法を発動出来る、イレギュラーな彼女を、ただ恐れていた。

 男は身体を震わせる。何処と無く汗もかいているようだった。


「見くびるなよ……。私は『聖天使隊』に所属し、神の加護を手に入れているのだぞ!! リング無しで魔法を使ったからとはいっても所詮は子供! 私に勝てるはずが――」


 そこで、唐突に男の言葉が途切れた。

 火球がさらに膨らんだためだ。床すれすれまで膨らんだそれによって、床にも火が燃え移っていた。


「なんっ……!」


 男が魔法を発動する暇も与えられなかった。何故なら男は巨大な火球に吸い込まれるように消えていったのだから。

 レミリアはそれを見てただただ驚くばかりだった。

 まさか、神国教会はこれを知っていたとでもいうのだろうか?

 だが、今はもう消し炭になってしまっただろう男は、そんなことを知らない様子だった。

 男を燃やし尽くした火球は、男を完全に焼き尽くしたのを確認したからか、自動的に姿を消した。

 そして、少女はその場に倒れ込んだ。


「……!」


 レミリアは少女の元に急いで駆け寄り、先ずは彼女の意識を確認した。結果として彼女には意識が残っていて、どうやら疲れが出てきたためか眠りについてしまったようだった。

 レミリアは今あったことをもう一度思い起こしていた。神国教会からの刺客が、この教会にやって来て戦闘を開始した。ただそれだけのことだ。

 しかし、どう糸口を探しても、あの少女はあれほどの火球を放ったそれほどのエネルギーを持っているなんてことは見つからなかった。


「……それにしても、随分と凄いのね。ノーモーションであれほどの高出力魔法を使える少女、か」


 レミリアは呟く。それは、彼女の過去と少女の姿を、重ね合わせているようにも思えた。


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