3-6. エルフとガラムド(中編)
「そういうことを言うのは……間違っていないでしょうね」
エルフ・クイーンは冷酷な目をして告げる。
「どうしてですか?」
「とどのつまり、私達の考えが間違っていたということですよ。いつかやって来る勇者のために私達は力を蓄えていた……。けれど、それは間違っていたのではないか、ということです」
「でも、私がやって来た。違う?」
イヴァンの言葉に、エルフ・クイーンは何も言えなかった。
「世界は変わろうとしているのかもしれません。もしかしたら、『勇者』というカテゴリー自体も、変異していくものなのかもしれません。現に、彼女がそうです。彼女が勇者だと、誰が信じられましょうか。彼女もまた、ガラムドの気まぐれによって生み出された犠牲者に過ぎないのです」
「彼女が……犠牲者? どうして?」
「ガラムドというのは、非常にちゃらんぽらんとした性格なのです。この世界以外にも統治しているのかどうかは定かではありませんが……いずれにせよ、この世界以外の管理もしていると推測することは出来ます。それによって、何が考えられるか」
「……えーと、手抜きになっている、ということ?」
「手抜き……。そうですね。もしかしたら、そう言えるのかもしれません」
「でも、神様は私を勇者とした。ってことは何かあるということではないの?」
「……何かある、とは?」
「例えば、勇者の使うものを使わなくてはならない機会がやって来た、とか」
「……勇者よ」
「私と、レミリアと、エルール。三人が揃っていて、神様の武器も三つある。これは即ち、勇者一行が揃ったと解釈するのが正しいんじゃないかな」
イヴァンの言葉は、今までの彼女の考えとは大きく異なっているように見えた。
まるで誰かに言わされているような――そんな感覚に陥らせてしまう。
「……分かりました。それでは、あなた達に武器を授けましょう」
そう言って、エルフ・クイーンは動き出す。
「ついてきなさい、武器を見せてあげましょう」
そして、エルフ・クイーンは奥の部屋へと歩いて行った。
イヴァン達もそれについていく格好で、そのまま歩いて行くのだった。
◇◇◇
「……ここが、武器の鎮座している場所です」
そこにあったのは、三角形の図形が床に描かれている場所だった。
それぞれの角に、剣・弓・杖が置かれている。
「これが……伝説の武器?」
「ええ。そうです。シルフェの剣、シルフェの杖、シルフェの弓……。それぞれは、あまり強い効果を発揮しませんが、しかし、それらが合わさると神にも近い能力を得ることが出来る……」
「これを使えば……天使すらも斃せることが出来るんですか?」
「え?」
「いや、だから、天使だって……」
「ちょっと待って。あなたはどうして、天使というワードを出したのですか?」
エルフ・クイーンは明らかに動揺していた。
そりゃそうだろう。エルフ・クイーンはそんなことを言うことを予想していなかったからだ。
「どうなんですか。天使を、斃すことが出来るんですか」
彼女の言葉に、エルフ・クイーンはたじろぐことしか出来なかった。




