3-3. 伝説の武器
「ここはかつて勇者が訪れた場所と言われています。勇者が使った武器がここに保存されているのです。いつかまた、この世界に危機が訪れた時、使う人間が現れるかもしれないから……」
エルフ・クイーンは笑った。
エルフ・クイーンの言葉は、この場所が勇者に所以がある場所であるということを物語っていた。
「勇者の場所……。ここに勇者がやってきた、というのはほんとうなのですか?」
訊ねたのはエルールだった。
エルールは勇者の知識に乏しい。それどころかいまだにイヴァンのことを勇者だと認識していない。旅の道中でレミリアからそう説明はあったものの、それでも理解できなかった。
あんな小さな子供が勇者だということに驚きを隠せないのは当然のことかもしれないが、実際勇者というのは神託を受けている人間なので、誰でも『勇者』と呼ばれれば問題ないということだ。
「かつてフル・ヤタクミという勇者が居ました。彼は二人の部下を携え、ここまでやってきました。その時彼らは私たちがずっと保管しておいた三つの武器を託しました。それが、剣、弓、そして杖です」
「それさえあれば、神国教会に立ち向かうことも出来るはず……!」
レミリアが明るい表情を見せる。
それと同時にエルフ・クイーンが表情を曇らせた。
「……ですが、今はそのうち剣が行方不明になっているのです」
「ええっ?」
思わず聞き返してしまうほど、その事実はレミリアにとって衝撃の事実だった。
即ち伝説の武器は弓と杖のみ。
「杖は私が持つことにして……問題は弓。弓はどうします?」
「弓は僕でも構わないよ。一応、弓の経験もある」
手を上げながらエルールは言った。
それを聞いて彼女はほっと一息ついた。彼女としてもエルールに弓を使うよう、言う予定だったからだ。
「エルール、お願いできる?」
「いいよ、問題ない。いつもは短刀だけれど……まあ、すぐに慣れるだろう。そう時間もかからないうちに」
エルールはそう言ってエルフ・クイーンの方を見て頷いた。
「そう言ってくれると思っていました。さあ、この武器はあなたたちに授けましょう」
その言葉と同時に、エルフが部屋に入ってきた。
二人のエルフはそれぞれ横長の箱を一つずつ持っていた。
その箱の中身を、彼女たちはなんであるか理解していた。
そして、エルールとレミリアの前に箱が置かれる。
「どうぞ、お開けください。そこにはあなたに役立つものがあるはずですから」
エルフ・クイーンはそう言って二人に箱を開けるよう促した。




