2-20. 穢れ
穢れていく。
穢れていく穢れていく穢れていく。
レミリアは自らの身体を少年に触られていくたびに、自分が穢れていくというのが解っていく。
自分が自分でなくなっていく。それが、彼女にとって辛いのだ。
でも、これは初めてのことではなかった。彼女にとって封じておきたかった記憶。それは忘れたかった。思い出したくなかった。彼女が母親に捨てられてしまった……悲しき記憶。その記憶を忘れたかったのに、思い出させられた。
「……どうしたの? 抵抗しないなんてつまんないよ? 胸揉まれて気持ちいいと思わないの? 最初はアウアウ喘いでいたくせに、いや、それは僕のミスだったかな? そうだったかな? ……うーん、それは覚えてないけど、けれど、ねえ? ねえ? どうしたの? 今の主役は僕だよ? もっと楽しませろよ。もっと喘げよ。もっと気持ちよくさせろよ」
乱暴に乱暴に乱暴に乱暴に乱暴に、少年は彼女の胸を鷲掴みにする。彼女は必死に、抵抗しようとはしなかった。
もう諦めたかった。このループをさっさと終わらせてしまおうと思っていたが、この周回は無しにしようと思っていたからだ。
「……つまんないの」
そして、少年はレミリアを乱暴に嬲っていった。
◇◇◇
彼女はゴミ捨て場に捨てられていた。彼女の目は虚ろで、どこを見ているのか解らない。
彼女が着ている服はもはやボロ布のそれに近くて、何もつけていないに等しい。
イヴァンはどうなってしまったのだろう。捕らえられてしまったのだろうか。
今の彼女には、それを考えられるだけの余裕もなかった。
「ああ……もう……眠いや……」
そう言って。
そうつぶやいたかすらも忘れて。
彼女は目を閉じた。
数字がカウントされる。
1、2、3、4……。
そのカウントはいったい何のカウントなのか。
5、6、7、8……。
忘れることのできない、忘れたくないカウント。
23、24、25、26……。
対処法を掴めないまま、カウントが増えていく。
97、98、99、100……。
回数を重ねていくうちに、彼女は自然とそのカウントが『死んだ回数』であることに気づいた。
170、171、172、173……。
ループで学べる手段は少ない。
なぜなら敵が同じ方法を使う可能性は殆どないからだ。
220、221、222、223……。
諦めたくなかった。彼女は、救いを求める人なら、助けたかったから。
「なら、立ち上がるといい。なら、勇気を持って行動するといい。いつかきっとそれは叶えられるはずだから」
どこからともなく声が聞こえた。
彼女は、諦めたくなかった。
イヴァンをすくいたかった。救いを求める人をすくいたかった。
そして、彼女は。
――目を開ける。




