2-19. 夜伽
様々なパターンを考えても、結局先ずはエルールたちに会わなくては話も始まらない。動く物語も動かないのだ。
だから彼女はエルールたちに出会うために行動を開始した。どこに向かうか?
それは簡単だ。
彼女にとってはトラウマたっぷりな夜の道だった。
「あとはここで私のロザリオが盗まれるのを待つだけ……」
「レミリア、何か言った?」
「いいえ、イヴァン。何も言っていないわよ」
思わず思考が漏れてしまったようだが、それがイヴァンに聞かれていることはなかった。仮に聞かれていたとしても彼女がそれを理解したかどうか怪しいのもまた事実であるが。
ともかく、彼女は急いでイベントを起こさなくてはならない。そのイベントは一つ。
――エルールにレミリアのロザリオを盗んでもらうこと。
こうしなくては自然、エルールのアジトに入るための正当性が失われてしまう。
「……見つからないわねえ」
だが。
彼女はやってこなかった。
「……なぜだ。どうしてやってこない?」
「レミリア、どうしたの?」
イヴァンが疑問に思って訊ねたが、彼女はそれを表情に出さないように注意して、ただ微笑んだ。
何もないよ、と思わせるためだ。
だが、イヴァンはそのことで払拭されていないということに――レミリアはまだ気づいていなかった。
◇◇◇
結局、収穫はなかった。エルールと合うことはなかったのだ。
「この前のループのままでいくなら……、明日の朝にはあれが起きる」
未だに忘れられない、あの惨劇。
あの惨劇を、また繰り返すわけにはいかない。
「これは……強行突破するしかないのかしらね」
そう独りごちり、彼女はベッドに潜った。すでにイヴァンはふかふかのベッドですやすやと寝息を立てていた。
それを見て、レミリアは微笑みながら、微睡みの中に落ちていくのだった――。
声が聞こえた気がした。
それを聞いて、彼女は目を覚ました。
そこには暗闇が広がっていた。どうやら今は夜中のようだった。
だが、何か気配を感じる。
「……誰」
イヴァンを起こさないように、彼女は言った。
それを聞いてくつくつと笑い声を上げる何か。
「……あなた、何者?」
「君に名乗る名前なんて、僕には存在しないよ」
レミリアはゆっくりと近づくそれに対処しようと起き上がろうとしたが――彼女の身体はそれに反して動くことはなかった。
「あー、そうそう。言ってなかったけど、君の身体は魔法で動けないようにしているから、そこんところよろしく」
そう言って、ついにそれはレミリアの目の前に立った。
そこに立っていたのは――前回のループで現れた少年だった。
このパターンは初めて……! そうレミリアは考えていると、少年が強引に布団を剥ぎ取った。
「ねえ、シスター・レミリア。僕と楽しいことをしよう?」
「拒否の意思なんて、どうせ与えられないんでしょう?」
「そのとおり」
そう言って、少年は彼女の身体に手を当てる。すると服がするりと抜け落ちた。
生まれたままの姿になって、何もかも曝け出している彼女だったが、恥ずかしいと思わなかった。いや、感情に出していないだけかもしれない。
「……屈辱だとは思わない? 初めて会った人間に、何もかも見られてさ」
「私はこんなの屈辱の中にも入らないわ」
「そう? だったらいいんだけど」
そう言って少年は、彼女の下腹部へと指をなぞらせていく。そして、その下腹部にある割れ目をなぞる。それを触られるたびに彼女は細かく身体を震わせた。




