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奴隷少女の勇者道  作者: 巫 夏希
第二章 大盗賊の子、エルール
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2-9. 作戦会議(前編)

 その頃。

 『グレーフォックス』アジトでは作戦会議が執り行われていた。


「……というわけで作戦会議を行う」

「わーぱちぱち」


 そう言ったのはイヴァンだった。エルールは溜息を吐くが、流石に「お前の責任だ」とは言えなかった。

 彼も見ていた、あの魔法かどうかも解らなかった何か。

 何が恐ろしいといえばリングを用いていないこと。確かにリングを使わずとも魔法が行使出来る人間がいないわけでもないが、そんな人間は貴重すぎるし相当な鍛錬を積まないと無理なことである。

 しかしながら、この少女はそんな鍛錬を積んでいるようにも見えないにもかかわらず、そこまで強力な魔法を使っていた。その魔法をエルールは見たことがなかったし、きっとここにいる人間があれほどの魔法を見たことはなかっただろう。

 だからこそ、怖かった。

 無邪気に、自分が潰したい人間を潰していくスタイルが、もし彼女に根付いてしまったら?

 今はシスターのレミリアがいる。彼女がいる限り『正しい』魔法の使われ方をしていくだろう。

 だがもし彼女が居なくなってしまったら?

 精神が強くないうちに、そのスタイルが根付いてしまって、レミリアがいないタイミングになったら……きっとイヴァンは『勇者』というよりは『魔王』に近いポジションになるだろう。この年齢でこの魔法が使えるのは、敵に回せば脅威になるのは火を見るより明らかだからだ。


「……エルール、どうかした?」


 ――そんなことをエルールが考えているとは微塵も思っていないイヴァンは彼に訊ねた。彼はそのことを考えていたから、ずっと上の空になっていたのだ。


「ん、ああ。大丈夫だ。……作戦会議といこう」

「いや、それさっき言ったから」


 レミリアからの厳しいツッコミが入る。

 咳払いしてエルールは話を続ける。


「それじゃ……どうやって『ワイルドウルフ攻略作戦』を立てていくか。まずは俺の考えたプランを話す」




 そう。

 彼らが話しているのはさきほどイヴァンが幹部を倒してしまった盗賊団『ワイルドウルフ』を倒すための作戦についてだ。

 どうしてこのようになってしまったかといえば、レミリアのこんな一言がきっかけだった。


「私たち、とんだとばっちりを受けているわけでしょう。実際はイヴァンが凍らさなければどうにかなったんだから。……だったらいっそ、こっちから攻撃をしてみないかしら」


 その言葉に賛同したのはエルール以外のグレーフォックスのメンバーだった。

 白と黒の衣服を重ね着したような感じの女性――ティアは笑って何度も頷いていた。目は輝いていた。楽しいことを聞くといつもこうなるのはエルールも知っている。

 巨大な手提げ鞄を持った男性――アーツは何度も頷いていた。彼も了承しているようだった。

 そしてイヴァンも目を輝かせてその言葉を聞いていた。

 ――結果として、エルールの味方になる人間は、このグレーフォックスのアジトにはいなかった。

 

 

 

「ワイルドウルフのアジトはいったいどこにあるの?」


 その質問をしたのはレミリアだった。


「ワイルドウルフのアジトはこの『裏街』の中心部にある、ウルフタワーだ。その目の前にはかつて大盗賊……俺の父さんを処罰した『断頭台』がある。そこは記念スポットめいたものになってしまって久しいけれど、そこまで行くのはそう難しくない。寧ろ問題なのは……」

「その中、アジト内部ってことね」


 その言葉にエルールは頷いた。

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