表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奇怪島  作者: 赤井"CRUX"錠之介


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/32

島の正体

 公生は、必死で逃げていた。

 先ほどは、百目鬼に襲われ押し倒された。が、そこで苦しみ出し、悶え始めた。同時に、彼の体が離れる。

 何が起きたのかはわからない。ただ、チャンスと思い逃げ出したのだ。

 やがて、公生の足が止まる。どのくらい走ったろうか。振り返ると、百目鬼の姿は既に見えなくなっている。

 ホッとして、その場に崩れ落ちた。と、そこで声が聞こえてきた。


「公生くん、呑気に座っている場合ではないよ。状況が変わった」


 ペドロの声だ。公生は、慌てて立ち上がる。


「ど、どこに行ってたんですか! 僕は、百目鬼に襲われたんですよ! 殺されるかと思いました!」


「大丈夫だ。彼は死んだ。しかしね、今から恐ろしい敵が来る」


「へっ?」


 公生は、間抜けな声を発していた。

 だが、それも仕方ないだろう。彼は、状況が全く飲み込めず完全に混乱していたのだ。先ほどは、百目鬼に殺されかけた。やっと逃げ出したと思ったら、今度は恐ろしい敵ときた。

 そんな公生に向かい、ペドロは淡々と語り続ける。

 

「空気が変わった。島の処刑人が、俺たちをターゲットに決めたらしい。こうなった以上、取るべき手段はひとつ。島の機能を停止させるしかない」


「な、何ですかそれ?」


「説明している暇はない」


 言った時だった。突然、ペドロが公生を引き寄せる──


 直後、拳大の石が飛んでいった。凄まじい速さで、ペドロと公生のすぐ横を掠める。当たっていたら、怪我では済まないだろう。

 唖然となっている公生だったが、異変はそれだけでは終わらなかった。今度は、頭上から何かが降ってきた。大量の木の葉と、鋭く尖った枝だ。

 ナイフのような形状の枝が、続けざまに落ちてくる──


「うわあ!?」


 思わず叫んだ公生だったが、ペドロは冷静そのものだった。立ち止まったまま、枝を避けようともしていない。

 枝は、全てペドロの周囲に突き刺さっている。当たれば、命を奪われても不思議ではない。ただし、彼には傷ひとつ付けていない。無論、彼のすぐそばにいる公生にも当たっていない。


 なんて凄い人なんだ──


 公生は、こんな状況であるにもかかわらず感動していた。ペドロは、落ちて来る枝の軌道を一瞬で見切り、動けば刺さると判断し、あえて動かなかったのか。

 もしペドロのそばにいなければ、自分は死んでいた……公生は、ペドロに対し信仰心のようなものすら感じていた。

 その時、ペドロが口を開く。


「攻撃が止んだ。おそらく、奴も混乱しているのだろう。こんな相手は、完全に計算外だろうからね」  


 何を言っているのか、公生にはよくわからなかった。だが、わかったこともある。今までのものは、人為的な攻撃らしい。


「ひょっとして、今のが処刑人なんですか?」


「ああ。これが処刑人の正体だよ。島そのもの、なのさ」


「島そのもの?」


「そうさ。この島は、AIによって支配されている」


 ペドロが答えた時、さらなる異変が彼らを襲う。今度は、大木が音を立てて倒れてきた。それも一本ではない。目の前に生えている数本の木が、立て続けに倒れて来たのだ。

 そんな中、ペドロは驚くべき行動に出る。公生を抱きかかえたかと思うと、この異常な事態をものともせず進み出した。

 たちまち、ふたりめがけて木が倒れて来る──


「そんなぁ! ちょっと止まってくださいよ!」


 悲鳴をあげる公生に構わず、ペドロは前進していく。倒れてくる木は、全て紙一重のところで外れていった。当たる寸前で軌道が変わり、ふたりを避けていったのだが、公生にそれは見えていなかった。

 今の公生は、もはや何もわからなくなっていた。島に生えている木が、次々と倒れて来る……こんなことを、AIがしているというのか。

 何のために?


「なんなんですかこれ!? AIがやってるんですか!?」


 叫んだ公生に、ペドロはそっと答える。


「そうさ。ここまで派手なことをやるとは、俺も聞いていなかったよ。この状況から見るに、AIは故障してしまったらしい。おそらく君のせいだ」


「僕の!?」


 公生が言った時、今度は地面に変化が生じる。周囲の土が、凄まじい勢いで盛り上がって来たのだ。土は、ふたりを呑み込もうとすべく襲いかかる……はずだった。

 しかし、土は停止する。見えない壁に遮られているかのように、ピタッと止まっているのだ。

 直後、土の波は一気に崩れていった──


「な、何ですかこれ!?」


 叫んだ公生に、ペドロが冷静に答えた。


「どうやら、限界が来たらしい」


「限界?」


「そうさ。この島の土や植物は、全て特殊なものなんだよ。島のAIが発する電波により、植物や土を動かすことが可能だ。ここは本来、AIが管理する無人の監視所として使われる予定だった……らしい」


 聞いている公生は、さらに混乱してきた。話があまりにも非現実的すぎて、ついていくのがやっとだ。


「じゃあ、これは全部AIがやったんですか?」


「そうだよ。しかし、ここまで大規模な現象を起こしたのは初めてだったのだろう。やり過ぎたためオーバーヒートしたらしい。言ってみれば、攻め疲れを起こした状態だよ。したがって、今は何もできずにいる」


「じゃあ、もう大丈夫なんですか?」


「いや、大丈夫ではないな。いずれは、攻撃を再開すると思う。なので、今のうちに機能を停止させる。ついて来たまえ。俺のそばから、離れるんじゃないよ。これは命令だ」


「は、はい!」


 言われなくても、公生はペドロのそばを離れようとは思わなかった。何せ、今までの攻撃を躱してのけたのは、ペドロがいたからなのだ……と信じていたからだ。

 公生は、ピタッとペドロの横についた。そのまま、彼と共に歩いていく。

 島の地形は、今や完全に様変わりしていた。あちこちが歪み、木はバタバタと倒れ、草花はあちこちに散乱している。

 そんな中を歩いていた公生だったが、突然その足が止まった。少し離れた位置に、全裸の男が寝ているのだ。


「あ、あれ何ですか?」


 思わず尋ねた公生に、ペドロは面倒くさそうな様子で答える。


「あれは沖田くんの死体だよ。土に埋まっていたものが、今の騒動で掘り起こされた形になったようだね」


「えっ? 沖田さん?」


 公生は愕然となった。沖田といえば、ペドロに喧嘩を売ったものの相手にされなかった若者ではないか。

 二日ほど前に「処刑人」に殺され、死体はどこかに消えていたはずだ。

 その死体が、今になって出てくるとは……。


 沖田の体は、既に変化が始まっていた。皮膚は黒ずんでおり、映画のゾンビのようである。腹は異様に膨らんでおり、気のせいか異臭が漂っているような気もした。

 そんな死体をじっと見つめていた公生であったが、ペドロに腕をつかまれた。そのまま、ぐいっと引きずられていく。


「あんなものを見ている時間はない。今は、AIの機能を停止させなくてはならないのだよ。早くしたまえ」


「す、すみません」




 やがて、ふたりは奇妙な場所に来た。

 小高い丘のような場所に、金属製の扉が設置されている。あまりにも場違いであったが、ペドロは何のためらいもなく扉を開けた。

 途端に、けたたましい警告音が聞こえてきた。室内で鳴り響いているらしい。公生は思わず耳を塞ぐが、ペドロは音を無視して中へと入っていく。公生も、入っていくしかなかった。

 そこは、緑に塗り込められた島とは真逆の、無機質な銀色の世界だった。

 巨大な真四角の部屋。ひとつの壁には、複数のモニターがびっしりと埋め込まれている。 まるで昆虫の複眼のようであった。

 部屋の中央には、円形のテーブルが設置されている。どうやら、タッチパネルになっているらしい。

 テーブルには、文字が表示されていた。公生にも、はっきりと読み取れる文字だ。


 ワタシハ コワイ

 ワタシハ コワイ

 ワタシハ コワイ

 ワタシハ コワイ


 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ