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公爵家の女たちは男運だけがない  作者: たくみ


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7.華闘

 なぜ今自分はこんなところで彼を見ているのだろうか。


 ここは学園の訓練場。


 目の前にはカーン!カーン!と剣を打ち合う学園の制服を着た男と女。彼らを中心としてぐるりと取り囲む学生たちからは2人を……いや、女生徒を応援する声が多数飛ぶ。


 カーン!!!


「あ~ん!」


 剣を弾き飛ばされ尻餅をついた女生徒から悔しいのか嬉しいのかよくわからない声が漏れる。


『あー……』


 周囲からもまた残念そうな嬉しそうなどちらの色も含まれる声音が漏れる。


「あーんもう負けてしまいましたわ!ウィリアム様お強いですわ!…………少し手加減してくださってもよろしかったのでは……?」


 開けた胸元をぎゅっと腕で強調し、うるうると目を潤ませ上目遣いで目の前に立つ麗しき男――ウィリアムを見上げた女生徒はすっと片手を上げる。


 彼はその手に気づくと至極面倒そうに無言で手を差し伸べる。女生徒の目がキラリと輝く。その手に自らの手を重ね立ち上がる際によろめいて胸元にダーイブ





 ………しようとしたが


 さらりと身を躱され地面に倒れ込む。


「酷いですわ!」


 叫ぶ女生徒にウィリアムはハンカチを取り出し先程まで彼女と触れていた手を拭く。


「なっ!」


「ああ、すまない。破廉恥な女性は趣味じゃなくて……つい」


 その言葉に顔を真っ赤にした女生徒はその場から走り去って行った。


『酷ーい』


『男としてあんな言葉を言ってみたいものだな』


『冷たいところが素敵』



 ガヤガヤと騒ぐ外野たち。彼らはただ訓練を見ていただけではない。この学園のあるイベントを見て盛り上がっていた。


『次の挑戦者はいるか?』


 そんな声が聞こえてくるのをぼんやりと聞いていたリリベルにレイチェルが声をかけてくる。


「リリベルチャンスよ!あなた次行きなさいよ」


「え!?」


 チャンスとは?


「華闘よ、か・と・う!彼に勝ってデートするのよ!」


 この学園には華闘なる制度がある。華とは女性のことであり、女生徒が男子生徒に剣での闘いを申し込む。そして女性が勝てば願いを叶えてもらうという制度だ。


 願いと言っても無理難題や相手の尊厳を奪うものは駄目だし、一応負けた男子生徒に拒否権もある。だいたいデートや食事といったもので相手へのアピールに使われる。


 サラテナ帝国の富国強兵、女も強くあるべしという概念。


 学園長の女子もガンガン男子にアピールせよ、身分性別関係なしに交流するのも一興という思想により成立した制度。


「いや、私一応婚約者いるんだけど」


「何言ってるのよ!彼とデートでもしてセイラをギャフンと言わせてやりなさいよ!」


「いやいやいやいや、浮気は駄目でしょ」


 セイラの悔しそうな顔は見たい気もするが、婚約者がいる身で華闘を申し込むなど宜しくない。


「義妹なんて口ばかりじゃない!実際は一人の女として見てるんだから、あいつがやってるのは浮気よ!あなたが他の男とデートしたって文句なんか言う立場じゃないのよ!」


「でも」


「リリベル様ごちゃごちゃ煩いですわ」


 ドンッ


 え!?リナリー今背中押した!?


 ……っとと。あの穏やかな笑みから繰り出されたとは思えない力強さに2、3歩踏み出してしまったリリベル。


 その途端爆発的な歓声がその場に起こる。


『きゃあ!リリベル様ー!』


『公爵家同士の闘いか、面白いな!』


『リリベル様ー!その妬ましすぎる男をコテンパンにしてやってくださーい!』


『ついにあのシスコン変態野郎を捨てる気になったんですねー!』


『勝ってあんなクズ捨ててウィリアム様とくっついちゃいましょー!』


 応援してくれる声の中に婚約者のマルコをディスる声に苦い笑いが浮かぶが、今はそれどころではない。リリベルは前に立つ男子生徒――ウィリアムを見る。


 その目は驚きからか微かに見開かれている……ように見える。たぶん。普段のお顔がよくわからない。


「さあ、お次のお相手はサラテナ帝国が誇る最強公爵家の次女リリベル様だあ!それではーーーーーfight!」


 まじか。


 普通に始まってしまった。


 司会者が華闘用の剣を投げてきたので思わず受け取る。


 って――――ブンッと胸元目掛けて剣の切っ先が迫ってきたのを慌てて避ける。速い。ズンッズンッと力強い突きが繰り出されるのを身軽に躱し、軽くトンッと跳ぶと距離を取り、鞘から剣を抜く。


 始まってしまったものは致し方なし。


 気は進まないが……


 フライア公爵家の娘たるものお遊びだろうが大衆の面前で簡単に負けるわけにはいかない。


 す――とリリベルの瞳が細められ、煌めく。


 纏う空気が変わったリリベルに距離を詰めようとしたウィリアムの足がギクリと止まる。その隙をリリベルは逃さない。


 一歩足を踏み出すと目にも留まらぬ速さで剣を矢継ぎ早に繰り出す。その動きはヒラヒラと舞い踊る蝶のように美しく観衆たちから感嘆のため息が零れる。


 ウィリアムが薙ぎ払い攻め手に転じればリリベルが華麗にいなし攻め手に転じる。そのやり取りが何度続いただろうか。


 ――おーーーーーー!


 

 観衆達から一際大きい歓声が上がった。


 彼らの目の前にはウィリアムのお腹に剣を押し当てしゃがみこむリリベルとリリベルの首に剣を押し当てるウィリアムの姿があった。


「なんと、なんと引き分けだーーーー!流石リリベル様素晴らしい!ウィリアム様もお見事ー!両者公爵家として負けられぬ闘い、見事引き分けに持ち込んだーーーー!一個人としてはかっこいいウィリアム様が負けるところを、リリベル様の麗しい笑顔を見たかったので残念だー!お二人に盛大な拍手をーーーー!!!」


 司会者の本音か冗談か読み取れぬ言葉にどっと盛り上がる場は盛大な拍手の後、解散となった。

 


 


 

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