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公爵家の女たちは男運だけがない  作者: たくみ


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45/74

45.欲しいものは手に入れる

「お早いお帰りねお姉様。ルイスはまた途中でいなくなったの?」


「そうよリリベル」


 帰宅したマーシャを居間で迎えたのはリリベルだった。


「ふぅん」


 自分で話しかけたものの興味がないのか彼女は自分の手元に視線を向けたまま何やら手を動かし続けている。


 ヒョイと覗き込むとそこには真っ白なハンカチが1枚。そしてリリベルはそこに今にも飛び出さんばかりの迫力のある龍を刺繍していた。


「あらまた腕を上げたんじゃない?」


「でしょう?この完璧な出来ならあの未来の姑というババアも文句などつけられまい」


 むふふふふとご満悦な笑みを浮かべるリリベルは気味が悪い。だがその出来は本当に素晴らしい。欠点の一つでも言えば見る目を疑われるだろう。


 笑みは仄暗いがなんともやる気に満ち溢れたリリベルは幸せそうだ。新しい婚約は彼女に苦労を強いながらも更に輝かせる活力となっているよう。


「ねえリリベル」


 ぎしりとリリベルの横にある一人掛け用の椅子が鳴った。


「んー?」


「私今ね欲しいものがあるの」


「ほー。何が欲しいの?」


 姉への受け答えをしながらも針を動かし続け最終仕上げに入るリリベルの表情はとても真剣だ。その横顔を見ながらマーシャは言う。


「お・と・こ」


 その言葉にビクリと指を震わせたリリベルはちょいお待ちをとだけ言うと玉止めして出来上がった龍柄のハンカチを侍女に預け姉に向き合う。


「病気持ちの男にあたらないように祈っているわ」


「そういう意味ではないわ」


 誰が男の身体が欲しいと言った。我が妹は娼夫を買うとでも思ったようだ。


「違うなら何よ?誰かに恋に落ちたとでも言うの?お姉様が?ははははははまっさかぁ!」


 失礼な妹である。人を心の無い機械か何かだとでも思っているのだろうか。


「恋には落ちていないけれど、婚約者にしたい人がいるの」


「ふぅん。見た目?若さ?金?土地?権力?頭脳?どこが気に入ったわけ?」


 なんだその条件の列挙は。せめてそこに中身を加えろ、中身を。


「婚約者を一途に思うところよ」


「……それって婚約者がいるってこと?婚約者に惚れてる人を無理矢理自分のものにするのはちょっとどうかと思うわよ」


 姉の言葉に動きを止めた後、どんどん顔を引きつらせていくリリベル。


「あれは惚れてなどいないわ」


 婚約者に一途なのに惚れてないとはどういうこった?頭に?マークを浮かべるリリベルにマーシャは微笑む。


「相手を好きでもないのに婚約者だからと我儘に付き合い、権力者にも物申し守ろうとするような人。いつ縁が切れるかわからないたかが婚約者というだけでそんなことするのよ?そんな人なら私の婚約者になっても大切にしてくれると思わない?」


 なんか酷い言い草だな。そんなんだからいつも他に女を作られてしまうのでは?と思うものの、余計なことは言わぬが吉。お口にチャックだ。


「心は要らないの?」


「そうではないけれど……私だって誰かに一番の扱いをされたいのよぉ」


 歴代の婚約者はマーシャを敬うものの一番にはしてくれなかった。


「気持ちは理解できなくもないけど、ルイスはどうでもいいけれどお相手の婚約者の方に申し訳ないじゃない。流石にお姉さまが我慢するべきよ」


 相手の家にもよるが公爵家の力があれば恐らく婚約破棄など無理矢理させることは可能だ。だからこそ姉が想いを抑えるべきだとリリベルは思う。


 あまり無茶苦茶なことをするのは公爵家にとっても恥となる。


「あ、それは大丈夫。だって私の婚約者に色目を使う最低女が相手だもの。私の婚約者に手を出したのだから、私が同じことをして何が悪いのよ」


 いや、同じではない。彼女はマーシャからルイスの心を奪うことはできても婚約自体をどうこうすることはできない。だが自分はどのようにもできる。


 それだけの力の差が2人にはある。


「あーー……」


 リリベルの頭の中にぽやんと2人の男女が頭に浮かぶ。


 確かルイスが夢中になっているのは勘違いぶりっ子性悪女ユリアだったはず。そしてそんな女に軽んじられてる男ルシアンは地位はそれなりの確か……あれ?なんか隣に立ってる映像が浮かんでこない。


 そんな感じの2人の仲を裂くのなら問題ないのか?


 うーん……同じことをやり返して良いとも思えないが、ユリアの言動をそのまま放置するのも違うようなと頭の中がぐるぐるして考えが纏まらない。


 あ、なんかもう問題ない気がしてきた。


 だがふと気づく。


「相手がルシアン様って…………。お姉様でも無理なんじゃない?」


「私を誰だと思っているの?」


「え?私のお姉様。いてっ」


 ぺしりと軽く扇子で頭をはたかれた。痛くはないがなんとなく頭を撫でる。


「欲しいものは必ず手に入れてみせるわ」


 そう言って艶やかに微笑む姉は文句なしに美しい。


 ぞっとするほどに。


 リリベルはこれから不幸が舞い降りるであろう者達に向け自然と手を合わせていた。







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