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公爵家の女たちは男運だけがない  作者: たくみ


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39.いざ顔合わせへ

 カーン!カーン!


 激しく剣を打ち合う音が学園内にある訓練場に響き渡る。軽い手合わせのはずなのに剣舞のように軽やかで本当の戦のように力強く振り下ろされる太刀筋に同じく訓練をしている学生たちは見惚れる。


 カーーーーーーン!!!


 一際大きい剣を弾くような音がしたかと思うとわあと歓声が上がる。


「リリベル様最高ーー!」


「ウィリアム様もっと頑張らないとーー!」


 そんな声が聞こえてきてリリベルは艶やかに笑い、ウィリアムは苦い笑みを漏らす。


「なかなか勝てないな」


 タオルで汗を拭うがなかなかすっきりしないのは気持ちの問題でもあるのだろうか。好いた女性に負けるのはなんとも情けない限りである。まあ手を抜かれるよりは良いのだが。


「ふふっ私最近気分がいいの。そのおかげかしら身体が軽くて軽くていつも以上に冴え渡るのが自分でもわかるわぁ」


 あまり気にしていないつもりだったが、重い鉛のようにあの伯爵家は身体にのしかかっていたよう。


「君の機嫌が良いのは大歓迎だが、何もしなくて良いのか?」


「いいのよ。今私は幸せだから」


「……甘いな」


 伯爵は妻の願い通りに息子が幸福になりハッピー。


 マルコは愛しい女を自分だけのものにできてハッピー。


 夫人は新たな男を捕まえようとして失敗し牢屋にいる。目をつけた男性の奥方の怒りを買ったのだ。奥方がどんな手を使ったのかはわからないが宝石盗難の罪を着せ牢獄行きとなったらしい。


 そしてセイラはマルコに囚われの身。


「女性陣はさておき君を蔑ろにしたマルコが幸せそうなのが俺は気に食わない」


 リリベルの脳裏に以前ちらりと見かけた彼の姿が浮かぶ。学園をやめた彼は平民となりながらもとても生き生きとし幸せそうだった。


「私はあの男と無関係になれたことでお腹いっぱい。というかもう二!度!と!関わらなければオールオッケー!」


 彼の理想の愛の形を成就するために利用されたことには少々思うところがあるが、自らを家をも没落させた彼には憎しみよりも天晴という気持ちが湧いてしまったのだ。


 まあ、あんなヤバい変態野郎とは関わるべからずだ。


「それにセイラさんにとっては絶望的状況だと思うわよ。それだけでもう十分。元婚約者ではなく、彼に心を寄せられた女の不幸を喜ぶなんて私も女だったのね」


 マルコの想い人だからではなく普通に嫌いだっただけだと思うウィリアムだったが、口には出さなかった。そしてあることを思い出す。


「そういえば顔合わせは来週の予定のままで大丈夫か?」


「ええもちろん。多忙の中なんとか調整した公爵家同士の顔合わせだもの。熱が出ようとも這ってでもいくわ」


 きり、と力強い目と剣の柄を強く握りしめる様はまるで今から出陣する武将のよう。


「無理はするなよ?」


「そういうわけにはいかないわ、母もあなたの父上もなんとかもぎ取った休みだもの」


「なんだそれ?」


「隣国との支援物資に関する話し合いをする予定があって2人に陛下が命令を下そうとしたらしいのよ。そしたらその日は顔合わせだって駄々をこねたらしいわ。でどうすんだってなって宰相とラミア公爵に命令をと申し出たそうよ。でも宰相もラミア公爵も嫌だってなって皆弁が立つから決まらなくて、もう陛下行けよってなって……」


 ぎょ、と目を剥くウィリアム。どいつもこいつも陛下に生意気なことを物申す強者である。


「陛下が属国相手に王自ら出るなんておかしいだろうってぶち切れて1時間お説教コースになって……」


 だろうな。むしろ説教だけで済むなんて幸運である。


「で結局もうポーカー一発勝負で決めちゃおうってなって、宰相とラミア公爵が担当することになったとか」


 陛下と母とリース公爵の雄叫びと宰相とラミア公爵の咽び泣く声が王宮の廊下まで聞こえたとか。

 

「…………………………」


 頭がくらくらする。そんな交渉ごとの担当をポーカーで決めるなど。誰が担当しようとうまく纏める力があるからこそできることなのだが。改めて帝国の人材の豊富さを実感するが親世代の生意気さには頭が痛い。


「というわけで死闘を繰り広げ見事勝ちを得た母やリース公爵のためにも欠席なんてなった日には切腹ものですからね」


「いや、うちの親は大丈夫だと思うが……」


 エレノア様からは雷が落ちそうだ。それこそ気絶せんばかりの。

 

「というわけでお互い顔合わせまで無病息災でいましょうね」


「……ああ」


 ウィリアムはなんか疲れてしまった。




~~~~~~~~~




 慎重に慎重を重ね無事顔合わせの日まで体調を崩すことなく、なんなら肌のコンディションも万全、顔色も万全に整えたリリベル。


 彼女はマダム受けしそうなシンプルで落ち着いた紺色のドレスを身に着け、髪の毛を緩やかに結い上げ顔合わせに望むべく入念に自室の姿見で身だしなみチェックをしていた。


「ふぅーーーーーっ」

 

 顔合わせはリース公爵邸で行われる。公爵夫妻とは同じ公爵家というもののほとんど交流はない。何度か一言二言挨拶を交わしたくらいだ。公爵はヒゲを蓄えた強面イケメン。夫人は母のような華やかな美人系統ではなく楚々とした清楚系美人である。


 物静かな印象だが妙な存在感があり、流石公爵夫人といったところだ。


「落ち着けー……落ち着けリリベルー……相手は同じ公爵家。陛下も信頼する家。あの伯爵家みたいな非常識な相手なわけなし。やつらと違い普通の人間だー……」


 ぶつぶつと姿見に映る自分に言い聞かせるかのように独りごちるリリベルを侍女たちは微笑ましげに見つめる。前の婚約者では見られなかった身だしなみを気にしたり緊張をしたりとリリベルがウィリアムを思うからこその行動に笑みが溢てしまう。


 他者から見たら奇怪に見えるだろうが、こんなリリベルを見られるのが嬉しくて堪らない。


「リリベル様お時間ですわ。本当にお美しいですからご安心ください。あとは外面を貼り付ければ完璧ですわ」


「あ、ああ外面ね」


 ほい、と気の抜けるような声の後に現れるは柔和な微笑みを浮かべたリリベルだった。


「お気をつけて行ってらっしゃいませ」


「外面を外してはいけませんよ」


「リリベル様がんば!」


 そんな声に送り出されながらリリベルはリース公爵邸に向かった。

 





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