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公爵家の女たちは男運だけがない  作者: たくみ


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29/72

29.幸せですか?

 本日は公爵邸にてキャシーの誕生日パーティーが夕方から行われている。


 煌めく高価なアクセサリーを身に着け、王都一高額且つ人気のドレスショップで仕立てた淡い水色

のドレスを身に着けたリリベルは湖の精霊と見紛うばかりに煌めき文句無しに美しい。


 広間にて彼女を見かけた人々は感嘆のため息を吐――――きかけて目をぎょっとさせる。


 ちなみにリリベルも皆と同じく目の前に立つ人物に視線を固定させたまま目をぎょっとさせ固まっていた。


「何を固まっているんだ?」


「あーー……っとーー」


 彼の言葉に金縛りから動くことはできたのだがなんと言っていいかわからぬリリベルは目をウロウロと彷徨わせる。


「キャシー様から招待状をもらったから来ただけだが問題だったか?」


「そういうわけじゃないけど…………私の手紙は読んでくれた?」


「興味がないから読んでいない」


 なんだこいつ喧嘩でも売っているのか?


 目の前に立っているのは元婚約者ではなく、現在も婚約者のマルコだ。


 婚約破棄を決意し話し合いをしようとしたリリベルだったが手紙を出せば完全なるスルー。家に突撃すれば不在の一点張り。学園で突撃しようとすれば俊敏に逃げられた。


 即ち結婚破棄は疎かまだなんの話し合いもできていない婚約状態なのだ。


 もしかして彼は婚約破棄をするのが嫌なのだろうか。リリベルの気持ちを察して回避しようとしているのか。ちらりとマルコの隣を見るがそこにはいつもいる人がいない。


「今日は一人なのね」


「ああ」


 そう言って笑うでもなく機嫌が悪くなるでもなくただ淡々と受け答えするマルコ。彼はすっと黙って軽く肘を曲げる。一瞬だけリリベルは動きを止めたがその後開けられた隙間に手を添える。


 初めてのエスコート。


 ドキドキする





 はずもなく彼女の心臓はバクバクと早鐘を打つ。

 


 セイラなしでマルコが一人で来た。


 え、やだなんか怖いんですけど。


 


 動悸が止まらないリリベルに気づいていないのか気づかないふりをしているのかマルコは程よいスピードでリリベルを伴い歩き出す。


 2人が辿り着いたのは


「ご機嫌ようエレノア様。マーシャ様、キャシー様もご機嫌麗しゅう。キャシー様パーティーのご招待ありがとうございます。」


 パーティーの主催者であるフライア公爵一家の元だった。


「「………………あ、はい……」」


 お姉様、キャシーなんて顔をしているの。なんとも珍妙な生き物を見るような目でマルコの全身をしげしげと眺めている。


「ご機嫌ようマルコ」


 常時運転でマルコに接するのはエレノアだ。どの貴族もセイラを伴わぬ彼に訝しげな眼差しを送る中、一切表情を変えぬのは彼女くらいである。


 エレノアはマルコの顔を見て挨拶した後、服に視線を移しゆっくりと首元から足元まで視線を上下させる。


 ???


 酷評でもするつもりだろうか。珍しい。なんやかんやいって母は自分に攻撃してくる者以外は基本放置するタイプのはず。まして人の見た目に関して本人に言う事などしない。


 娘を蔑ろにする相手だからだろうか。エレノアにも親心というものがあったのかと失礼なことを考えているリリベルだったが、エレノアの口から出た言葉は想像とは全く違うものだった。

 

「その服は……ご生母のデザインしたものね」


 とても柔らかく微笑み懐かしそうな愛おしそうな眼差しを服に向けるエレノア。


 そんな彼女は珍しく周囲は驚きの表情……ではなくその聖母の如き麗しい光景に感嘆のため息を吐いた。

 

「ご存じでしたか?」


「ええ、あの子があなたに着せるのだと亡くなる直前に自らの手で作ったもの。これは裾直しなどの手を加えていないのでしょう?昔見たままだもの。きっとあの子が想像した通りの青年に成長したのね」


「……そうであれば良いのですが」


「中身はどうあれ。見た目はそうなんじゃない?」


 その言葉にマルコはこの日初めて表情を崩し苦い笑みを浮かべた。


「あなたは幸せ?」


「ええとても」


「であればいいじゃない。あの子はあなたの幸せを願っていたわ」


「………存じております。父から散々聞かされましたので」


「幸せの基準は人それぞれよ」


「あの~」


 何やら2人の世界に行ってしまったエレノアとマルコに声を掛けたのはリリベルだった。


「あらリリベルいたのね」


「あらお母様こんなに美しい娘が目に入らないなんて老眼ではなくて?ちょっと離れた所に立ってみましょうか?はっきり見えたら老眼ね」


「ほっほっほっ。こおんなに近づいてもあなたの毛穴まで見えるわよぉ?もう少し肌のお手入れをした方が良いんじゃなくて?」


 ずいっとリリベルの顔に自らの鼻が触れんばかりに近づくエレノアにリリベルは仰け反る。しかしそれも一瞬のこと負けじとぐいと背中を元の位置に戻し自ら顔を近づける。


「あ~ら、そんなによく見えるのであればお母様。お母様の張りを失った肌と私のハリ・ツヤのある肌の違いもよおくおわかりになるのではなくて?天下の公爵も老いには……っぶぶっ!」


 早口で話すリリベルから一歩足を引き距離をとったエレノアは開いた扇子についているふわふわとした羽毛でリリベルの口を塞ぐ。


「まあまあ2人ともそれくらいで」


 ここぞとばかりに止めに入ったのはマーシャだ。彼女は2人の間に身体を割り込ませ距離を取らせるとドンとお尻で母を押しのけリリベルと向かい合う。


「リリベル」


「え?あ?はい」


 姉よ、めっちゃ母に睨まれているが大丈夫ですかい?


「婚約者殿と踊ってきたら?」


「…………え!?」


 躍る?ダンス?誰と?マルコと?


 固まるリリベルからマーシャはマルコに視線を移す。お互いの目が合うがどちらからもどんなことを思っているのかは読み取れない。


 ただマルコは手をリリベルに差し出した。


 


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