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公爵家の女たちは男運だけがない  作者: たくみ


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22.父親の部屋

 顔では平静を装いながらも心は浮足がちにリリベルの後について公爵邸の廊下を歩くウィリアムはあることに気づく。


「リリベル今書庫を通り過ぎたようだが」


 ちらりと先程通り過ぎた重厚な両開きの扉に視線を向ける。濃茶の果物と蔓の模様が施されたその扉から本を持った司書らしき人物が出てきたのが見えたのでそこが書庫だと思ったのだが。


「そうですね」


 そうと言いつつ、リリベルは前を向き歩みを止めない。


「?書庫にあると言っていなかったか?」


「あれは勘違いでした」


「?」


 ではどこに向かっているのだろうか?




 それからまた歩くこと数秒。


「で、ここはなんの部屋なんだろうか?」


 リリベルがガチャリと扉を開けた部屋は……倉庫?いや、あそこに少しだけちらりと見えるのは執務机っぽい。ということはここは誰かの部屋?


 ゴクリと息を呑むウィリアムの目の前には積み上げられた?雪崩を起こした?本の山が部屋中に広がっている。



「ここは父の部屋です」


 ほう。二度と公爵邸に足を踏み入れることは許さないと公爵が宣言したと聞いていたので部屋を残してあるとは意外である。


 あの女帝なら綺麗に部屋を片付けて彼が使っていたものや所有物などを全て燃やしてしまうくらいのことはしそうだと思ったのだが。散らかっているとはいうものの埃などは一切なく綺麗に掃除されている。


「他国の機密事項や重要なことが書かれたものばかりで燃やすには勿体ないそうですよ」


 まじか。この凄まじい量の書物にそんな内容が。


 そんな貴重なものをこんな乱雑に置いて?まき散らかして?いるとは。


 頭が色々な意味でフラフラしてくる。


「王宮に移動させたり書庫に置かないのか?」


「まあ父が得た他国からの戦利品というか戦争の時にパクってきたものとか父が調べた敵の弱点を纏めた日記なので公爵家の所有物らしいですよ。母が父の邪悪な念が渦巻いてそうだから書庫には所蔵せずここに一つに纏めておきなさいって。必要ならここから持ち出しなさいって言っているんです」


 盗まれでもしたらどうするんだと言葉が出そうになったが寸前で止まる。ここは天下のフライア公爵家だ。警備の質、使用人の質は王宮並み、いや王宮以上なのだ。


 ここに置いておくのが安全かもしれない。


 うんうんと一人納得していたがはたと気づく。


 なぜ書庫ではなくここに連れてこられたのかを。


「……まさかここに軍法書が?」


「ピンポーン。流石ウィリアム様」


「この山から探せと?」


「雪崩を起こしているし、どこに何があるか誰も把握していないので後片付けの必要もないのでバッサバッサやっちゃってください」


「……2人で?」


「使用人には触らせられませんもの。重要な機密情報というのは下手に知らないほうが良いものだとおわかりでしょう?」


 それはそうだ。余計なことは知らないに限る。


 だが……


 これは今日中に見つかるのだろうか。


 そびえ立つ山はなかなかの大物だ。


「緑色で隣国の文字で軍法書と書かれているもので間違いないですね?さあ張り切って探しましょう!」


「お、おー?」


 リリベルが片手を上げたので思わずつられて声を上げてしまった。どこから手を付けて良いのか迷ってしまい、リリベルを見ると彼女はバッサバッサと本をかき分けながら部屋の隅に向かっていく。

 

 ならば自分は逆の隅からと足を一歩踏み出す。


 が。


 ガッ


 あ、本を蹴り飛ばしてしまった。


 また一歩。


 ズリッ


 あ、本を踏んでしまった。


 足元をしっかり見て少しでも傷つけないように努力しよう。じっと目を凝らす。少しでも隙間を見つけるために。


 …………ひっ!


 出かかった悲鳴をなんとか男のプライドだけで押し殺す。目を凝らしたのがいけなかった。本の題名や開かれた本の中身が目に入る。


 隣国の弱み。


 A国の弱み。


 B国の弱み。


 C国の弱み。


 王族や高官たちの家族構成愛人構成趣味趣向性癖あらゆる情報が書かれている。これは見てはいけない。だが軍法書は欲しい。


 もう一度リリベルの方を見る。


 お、おー…………。


 バサバサ


 ドンドン


 バサバサ


 ドンドン


 彼女が歩いた後に本のタワーができている。かなりのハイスピードだがまだ見つからないよう。


「ウィリアム様そんなちんたらやってたら終わらないですよ」


 ち、ちんたら……生まれてこの方そんなこと言われたことがないのだが。

 

「大丈夫ですって!破れたら貼り付ければいいんですから!皺だって伸ばせばオッケーです!」


 人の家のものを壊して平気でいられる神経は残念ながら持ち合わせていない。


 だが再びリリベルを見ると先程のタワーが2倍に増えている。彼女に全てを任せるのも違う気がする。


 ええいっ!


 バサッバサッと本が足に当たるのを感じながら進む。ああ、なんか顔が載っているページを踏んだ。妙な罪悪感が。あ、またなんか踏んだ。趣味や性癖?なんか見ちゃって踏みにじってすみません。


 なるべく視界に入れないようにしてなんとか隅まで辿り着いたウィリアムはリリベルと同じように一つ一つ確認し、確認が終わったものをタワーにしていく。


 黙々と確認作業を進める2人。


 モクモクモクモク


 モクモクモクモク


 明るかった窓の外は薄暗くなってきた。


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