10.作戦2
一方そのころリリベルも友人と共に馬車に揺られていた。
その表情はうんざりとしていた。
「ねーねーリリベルーウィリアム様いい男だったでしょう?」
「彼なら恋人役にぴったりですわ」
「マルコのやつ調子に乗ってるから懲らしめちゃおうよ~」
「セイラ嬢に吠え面かかせてやりましょう?」
「リリベル~」
「リリベル様~」
「………………」
先程からレイチェルとリナリーが浮気を勧めてくる。2人がマルコとセイラに腹を立てているのさ理解しているし、それが自分のためだということもわかっている。
だがこう何度も何度も言われると非常に鬱陶しい。
「浮気じゃないわ!」
「浮気ではありません!」
うおっ!心を読まれた。怖い。
「あの男にリリベルを放っといたら他の男に取られちゃうわよって警告するだけよ」
「マルコ殿もセイラ嬢を優先しておられますし、2人は常にベタベタしておられますわ。兄妹の域を超えております。ましてお二人に血の繋がりはないのですよ?それにマルコ殿は明らかにセイラ嬢に恋慕していますわ」
「だからといって同じ浮気するような女に私はなりたくないわ」
ギロリとリリベルに睨まれレイチェルとリナリーは一瞬黙る。浮気が良いか悪いかと言われればそりゃあ悪い。
2人は攻める方向を変えようと頷き合う。
「……エレノア様だってたくさんの男性と食事やお話をされているわ。あれを浮気だというの?」
「それは……違うけど。あれは仕事というか、様々な人とコミュニケーションを取るのは大事でしょう?」
「でしたらリリベル様がウィリアム様と接してなんの問題がありますの?ベタベタするわけでも、一線を越えるわけでもないのです。それに何よりリリベル様にお心がなければなんの問題もありませんわ」
「でも……」
「マルコに約束を反故にされたときに少しお出かけするだけでも駄目?それくらい浮気でもなんでもないわよ。まして彼は公爵家の人間なのよ?これから先公爵家同士として交流していくことになるのだから友人として仲を深めるのは決して損にはならないわ」
「…………」
お、少し揺れている?チャンスとばかりに2人の目が輝く。
「リリベル様……ウィリアム様がお相手では不足ですか?」
「そんなことないわよ。素敵な人だと思うわ。特に見た目なんか」
言葉少なかったリリベルだったがリナリーの言葉に慌てて否定する。剣技一つ見るだけでもあれは相当努力していた。それだけでも好印象だ。それに見た目が本当に素晴らしかった。毎日でも眺めていたいほどに。
「そう本当に見た目最高男よねー!私もハリスがいなかったら狙ってたくらいよ」
ハリスの婚約者はレイチェルだ。彼女は未来の第二皇子妃である。2人は仲睦まじくレイチェルの学園卒業と同時に結婚式を挙げることになっている。
「要するに彼はとおってもモテるってことよ?ねえリリベル?浮気浮気って言うけど彼があなたに恋に落ちると思っているの?」
「リリベル様がそんな思い上がりをするわけないじゃないですか!ね、リリベル様?」
かあと頰を赤くしたリリベルがコクコクと頷く。そうだ。浮気浮気と。フリをしてもらうだけなのに厚かましいことを考えてしまった。
「マルコがあなたを優先すればなんの問題もないこと。あくまで彼にドタキャンされた時にウィリアム様と過ごせば良いのよ。彼があなたの大切さに気づきあなたとの時間を優先するようになれば自然とウィリアム様とは過ごす時間が減っていくわ」
「難しく考える必要はありませんわ。彼は公爵家のご子息。彼と友人になるのは決してリリベル様にとって不利益になることはありません」
「まあ、確かに」
「あ!今同意した!」
「あ!今同意しましたわ!」
「「では決行で!!!」」
そう言い手を取り合い喜ぶ2人に呆れた視線を向けるリリベル。どうせウィリアムにはハリスが今説得に向かっているのだろう。彼が頷くかもわからないのにこの喜びようはなんなのか。
「あなた達図ったでしょ?ていうか絶対にウィリアム様とくっつけようとしているでしょ?」
リリベルの言葉に2人はニンマリと笑う。
「フリだって言ってるでしょ?でもそれはあなたの心次第で変わるかもね?ね?リナリー」
「ええ私達ではリリベル様の心を動かすことはできませんもの。リリベル様の心はリリベル様のものですわ」
やっぱり華闘を利用したんじゃない。剣を扱う者にとって良きライバルは意識せずにはいられない。ましてあんなイケメンで金持ちであれば。
「ウィリアム様の心がどうなるかはわからないけれど、あなたの心を動かす勝算は十分にあると思っているわ」
「へー……」
レイチェルよ、その自信はどこから来るのか。リリベルは挑発的な視線を2人に向ける。2人はそんな視線をものともせず余裕たっぷりの様子でハモった。
「「だってウィリアム様、顔面偏差値激高だし」」
その言葉にリリベルは言葉を失った。




