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『猫の怨返し』    作者: Thomas F Knitter


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2/2

NORANEKO

「猫の怨返し」という物語には、実は語られなかった「もう一つの顛末」が存在する。 男が辿り着いたのは、単なる破滅の先にある、価値観が逆転した異世界の入り口だった。 元となった原案を、特別エピソードとして公開。

真っ暗な山道だった。


久しぶりの道、曲がりくねったこの道は人生のよう‥‥などとのん気に考えながら走っていた。 

大きなカーブを曲がった時だった。急に1匹の野良猫が飛び出してきた。そして、猫は一瞬、しかし、しっかりとこっちを見た。


危ない!と思ったが、もう間に合わない。ガッと鈍い音がした。


(ヤった‥‥。轢いてしまった)


と思ったが、もう遅い。振り返るのも怖い。

振り返らないまま、車をそのまま進ませ、その夜は終わった。



翌朝、気になって、もう一度、その道を走った。

しかし、不思議なことになんの痕もない。

車を止めて外に出た。その時、1台の車が通りすぎた。

その車が通り過ぎるのを待って反対側の崖を覗いたが、やはりなにもない。

あたりをきょろきょろ見回したが、なにもない。

しかたなく自分の車に乗り込んだ。


(‥‥あれは、夢だったのかなぁ)


何気に腕時計を見るとちょうど1時間遅れていた。



それから、しばらくして、職場の納涼会があった。


めずらしく三次会まで付き合って夏の短い夜はもう明けようとしていた。

しかし、始発にはまだ早い。


タクシーチケットが1枚。

通りかかった空車のタクシーに手を挙げた。


NNタクシー? 聞いたこともないなぁ。個人か?

まぁいいや。

行き先を告げると眠り込んでしまった。


夢をみていた。

昔の仕事をしている自分。

仲間の中で日々の仕事に追われながら働いている自分。


その時、ガツッという大きな衝突音がして目が覚めた。


‥‥そうかタクシーに乗ってたんだ。寝ちまったなぁ。

なんて思いながら、運転手横のメーター脇の時計を見ると7時を指していた。


そういえば何かに当たったような音がしたな。

それも夢かとも思ったが、運転手に訊いてみた。


「おい、今、何かぶつからなかったか?」

「えっ? ‥‥ああ、ヒトですよ。よくあるんです。気にしなくていいですよ」

「ヒトって‥‥、人間を挽いたってことか?」

「そうですよ」

「何言ってるんだ。大変じゃないか!」


その声をさえぎるように、


「お客さん、心配しなくていい。どうせあれはノラだ」

「の、のら‥‥?」

「そ、ペットじゃないでしょ、首輪もなかったし。だから大丈夫」

「何言ってんだ、人間だぞ」

「そうですよ。だからノラビトだって言ってるじゃないですか」

「莫迦なこと言うな、人にノラもペットもあるもんか、動物じゃないんだぞ」

「こまるなぁ、お客さん。人間だって動物じゃないですか」

「そりゃ、そうだが、‥‥」


まったく要領を得ない運転手に、


「おい、止まるんだ。おい」


肩をゆすると運転手は、急ブレーキをかけた。

キー!大きな音がして車が止まった。

反動で体制が大きく崩れ、頭を前のシートにぶつけそうになった。


「危ないじゃないか」

「それはこっちの台詞ですよ、お客さん」


急に一段低い声で運転手が言ったので一瞬たじろいだ。


「お忘れですか? 私を」


運転手が振り向いた。

その顔に光る目はあの晩、オレが轢いた猫だった。


「オ、オマエは、あの時の・・・」

「そうです。やっと思い出して頂けたようですね」

「オ、オレをどうしようって言うんだ」

「別にどうもしません。ただ私はあなたを迎えに来ただけですから・・・」


そういうとニヤっと笑った。


「迎えに来た?」

「ええ。」

「どういう意味だ?」

「いやだなぁ、気づかないんですか。あなたはもう死んでいるんですよ」

「何を莫迦なことを、オレはここにいるじゃないか」

「だから死んでるんですよ。さっき轢いたノラビトはあなたなんだから」


彼が含み笑いで自分の後方に目線をやったので、恐る恐る後ろを振り返った。

するとそこには、白いTシャツにジーパン姿の男が倒れていた。

あれは、まぎれもなく・・・自分だ。


「やっとわかったようですね」


「‥‥どういうことだ? じゃ、ここに居る俺はなんだ?」

「ここはね、猫が支配する世界ですよ。人間をペットとしてね」


(何を言っているんだ、コイツ?)


オレが怪訝な顔をすると、猫は言った。


「人が動物に悪いことをして死ぬとその動物が支配する世界に行くことになってるんですよ。

‥‥まぁ、信じられないでしょうね。でも今、あなたはここにいる。それは事実でしょう?」


‥‥確かにオレはここにいる。


「さぁ、行きましょう。会ってほしい方がいる」


そういうと、またハンドルを握りアクセルを踏み込んだ。


「どこへ行くんだ?」

「どこだっていいじゃないですか。今更、じたばたしても仕方ないでしょう。」


ふふんとにやけた声で言うと更にアクセルを強く踏み込んだ。

車は闇の奥へ、奥へと突き進んで行った。


(終)

いかがでしたでしょうか。 エピソード1が「罪の報い」だとしたら、エピソード2は「存在の変容」を描いています。 どちらが本当の結末なのか……それは、あなたがどちらの世界の住人であるかによって決まるのかもしれません。

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