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婚約破棄の現場から失礼します。その「冤罪」、科学捜査(フォレンジック)で論破させていただきます 〜前世科捜研の私が、魔法世界の完全犯罪をDNA鑑定で暴くまで〜  作者: ヲワ・おわり
第2章:科学による反証とざまぁ

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第5話:青白く光る「自作自演」の痕跡

 スカーレットの断定に、ミエルがヒッ、と息を呑んだ。

 彼女は震える声で反論する。


「ち、違うわ! 怖くて……暴れたのよ! 手をバタつかせた時に、たまたま手が当たっただけだわ!」

「そうだ! 転倒の拍子に手を突くことくらいあるだろう!」


 ブラッドリーも必死に加勢する。

 だが、スカーレットはその反論さえも予測済みだった。彼女は憐れむように首を横に振る。


「いいえ、あり得ません」

「なっ……!?」

「人間には『保護伸展反応』という本能が備わっています。転倒する時、人は反射的に『てのひら』を開いて体を守ろうとするのです」


 スカーレットは自らの手を開いて見せる(暗闇で見えないとしても、その動作には説得力があった)。


「想像してみてください。転ぶ瞬間に、わざわざ拳を固めて、しかも関節部分ナックルから壁に突っ込む人間がいますか? それは生物としての反射行動リフレックスに反します」


 ボクサーでもない限り、とっさに拳で壁を殴る人間はいない。

 それができるのは、ただ一つのケースのみ。


「『意図的に怪我を作ろう』という強い意志を持って、痛みを堪えながら自ら壁を殴りつけた時だけです」


 逃げ場のない論理の檻。

 ミエルの喉から、引きつったような音が漏れる。


「う……そ……」


 カッ、と会場の魔石灯が一斉に点灯した。

 眩い光が戻り、青白い幽霊のような光は物理的に見えなくなる。

 しかし、その代わりに――。


 顔面蒼白で、脂汗をかいて立ち尽くすミエルの姿が、衆人の目に晒された。

 その右手は、痛みを隠すように震えており、包帯の下にある「拳の怪我」を雄弁に物語っている。


 会場の空気が変わった。

 ミエルの精神干渉チャームによる熱狂が冷め、代わりに冷ややかな疑念が広がり始める。


「今の説明、筋が通っているぞ……」

「確かに、突き飛ばされて拳で壁を殴るなんて変だ」

「あの青い光……自傷の証拠だったのか……?」


 囁き声が波紋のように広がる。

 スカーレットはゴム手袋を外し、パチンと弾いた。


「……青ざめた顔色の犯人をご覧いただけましたか?」


 勝負あった、かに見えた。

 だが、ブラッドリー王子だけは、まだ認めようとしなかった。彼は充血した目でスカーレットを睨みつける。


「ぐっ……屁理屈を! たまたまだ! 偶然拳が当たっただけかもしれないだろう!」

「ブラッドリー様……!」

「そうだ、確率がゼロじゃない限り、断定はできない! 自作自演などという妄想で、ミエルを侮辱するな!」


 見苦しい悪あがき。

 だが、スカーレットはそれさえも「想定内のノイズ」として処理していた。

 彼女は小さく嘆息し、眼鏡をかけ直す。


(予想通り。確率論(偶然)に逃げ込みましたね。……では、確率0%の証拠データで蓋をしましょう)


「想定通りの逃げ道ですね、殿下」


 スカーレットはツカツカとミエルに歩み寄る。

 そして、逃げようとするミエルの手首を、ガシッと掴んだ。


「ひっ!? な、なに!?」

「先ほど貴女は『私には触れられていない』と証言しましたね?」


 スカーレットの瞳が、顕微鏡のレンズのように絞り込まれる。


「その言葉が嘘であることを、貴女自身の『爪』が語っていますよ。……では、『第2の実験』に移りましょう」

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