7.
この作品は8話で完結します。
ジイジが運転士に指示を与えた。
指さした方向はパトカーやバリケードで塞がれている。だが所詮は急ごしらえだ。
運転士はジイジの指示に従ってスピードを上げると、パトカーやバリケードに車体をぶつけて強行突破し、最短距離で刑務所の表門に横付けした。対応する余裕を与えない型破りな行動に、警察官はなす術もなく後退している。
バリケードを突破するには、車重のある大型車両と強力なエンジンを生かす。シンプルだが、これが一番効果的なのだ。
ジイジは、犯人に拳銃を返した。
犯人のおばちゃんは、由芽を引きずるようにして車外に出た。
右手に持った拳銃は由芽の頭部に向けられている。由芽は恐怖で歪んだ顔を作り、か弱い人質になり切った。
猿島という囚人の女は、由芽が電話で指示した通り、刑務官に付き添われて出入口に立っていた。
おばちゃんは、猿島の正面に立つと「このヤローがぁ!」と振りかぶり、銃のグリップを顔面に叩きつけた。続けて二発、三発。刑務官に制止する隙を与えない、躊躇のない攻撃だった。
猿島は切れた唇から血を噴き上げて倒れた。
バスを振り返ると、ジイジがドアの非常コックを開けたところだった。
乗客が、次々にバスの外に飛び出してきた。
これには警察官が慌てた。
なにしろ犯人は拳銃を手にしているのだ。でも実際にはこれ、ジイジが弾丸を抜いてある。
由芽が、すばしこい動きでおばちゃんのもとを逃げ出して乗客に合流したのを見て、SATが、防弾盾を前に立てて犯人のおばちゃんを包囲した。
SATが犯人との距離を縮める一方、制服の警察官はバスから出てきた人質の収容を急いだ。
ほどなく「確保、確保―ッ!」という声が辺りに響き、包囲していた警察官が殺到した。
混乱のなか、由芽とジイジは誰にも気付かれずに現場を離脱した。




