表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/57

美咲と松茸1 五年目の別れ

 五年という時間は、永遠の始まりだと信じていた。

秋の風が吹き抜けるキャンパスは、いつもと変わらない光に包まれているのに、花沢美咲には世界が別の場所に見えた。耳の奥には、彼の声がまだ鮮明に残っている。


――ごめん、美咲。俺、留学に行くんだ。だから……もう終わりにしよう。


終わり。

その言葉はあまりにも簡単で、あまりにも冷たかった。五年間の思い出も、何度も交わした未来の話も、彼と一緒に過ごすはずだった「これから」さえも、一瞬で無に帰してしまう響きだった。


午後の光に照らされながら、彼の横顔を見上げる日々が、あと何年も、そしてその先もずっとずっと続いていくのだと思っていた。

次の冬も、次の夏も、その次の季節も――彼と一緒に歩く未来が当然のようにあると信じていた。だからこそ、目の前に突きつけられた現実は、心の奥を冷たくひび割れさせる。


美咲はベンチに腰を下ろし、視線を足元に落とした。靴先の影が揺れている。呼吸を整えようとしても、胸の奥がきゅうと掴まれるように痛む。

笑った顔も、不意に差し伸べられる手の温もりも、二人で交わした約束も、まだ確かにここにあるのに――彼の未来には、もう自分はいないのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ