表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/57

千春とモンブラン6

その夜は、モンブランの甘みとワインの余韻を感じながら、二人は新しい事業について話し続けた。

具体的な細かい事ではなく、ただ可能性を想像しながら、アイデアを交換するだけでも十分だった。


「えっと、今のアイデア、もう少し詳しく聞かせてください。順番に話してもらえますか?」

啓介は真剣そのものだが、順序にこだわりすぎて少し不器用に見えることもある。

千春はそれも含めて、彼の魅力なのだとわかっていた。



気づけば時計の針が深夜に差し掛かっていた。千春はため息をつき、肩を緩める。

「そろそろ……寝ないとね」

長い一日の終わり、ほっとひと息つく瞬間だった。

啓介は静かに頷き、ベッドの端を指さした。

「千春さん、ベッド使ってください。僕はリビングで寝袋を敷きますから」


淡々とした言葉に、不思議と安心感が広がる。

彼の穏やかな気遣いは特別な演出ではなく、日常の延長として自然に存在している。それが千春には居心地のよさとして感じられた。

普通なら、恋人でもない大人の女性が、男子大学生の部屋に泊まるなど考えられないことだろう。しかし、千春にはわかっていた――啓介は変なことは絶対にしない。

彼は恋愛や異性に興味がなく、女性としてどう扱うかなど、頭にないのだ。


何度か、こうして泊まったこともある。仕事で遅くなった夜、アイデアを温める夜、あるいはただ気持ちを落ち着けたい夜。

そのたび、啓介は変わらず穏やかで、彼女の存在を特別視することもなく、でも無意識に安心感を与えてくれる。


千春は毛布にくるまりながら、静かに目を閉じる。

この安心感と、彼と共有した温かい時間が、胸の奥でじんわりと広がるのを感じながら。

リビングの寝袋からは、啓介の呼吸がかすかに聞こえていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ