14/17
美咲と松茸8
気がつくと、美咲のまぶたは重く、体はふわりとした眠気に包まれていた。ふと顔を起こすと、テーブルで寝てしまっていることに気付きベットに移動しなければと、ふらつきながらも立ち上がった。
無意識に寝室のドアを開けながら、ぽつりと小さな声が漏れた。
付き合うのなら……「……すずきさん……がよかったな」
眠気に溶けた声はかすかで、空気に吸い込まれるように消えていった。美咲自身も、なぜ自分がこんなことを言ったのかもわからない。
そしてそのまま、ベッドに身体を投げ出し、深い眠りに落ちていく。
啓介はリビングで片付けをしながら、寝室のほうをちらりと見たが、静かに微笑むだけだった。
「しゃーないな」と小さく呟き、寝室は美咲に譲り、自分はリビングの床に寝袋を広げて寝ることにしようかと考えていた。
部屋には松茸の香りと、穏やかな沈黙が漂っていた。