表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/75

第36話 みんなのヒーロー




「ほら!見てよ、お嬢様!おじさんは僕たちを置いて行かないって言ったじゃないですか!僕の言った通りでしょ?!」


天宝(ティエンバオ)は、去らずに残って戦う都賢秀(都賢秀(ドヒョンス))を見て飛び跳ねながら歓声を上げた。


しかし一方で梅仙(メイシェン)は、火龍と対峙する都賢秀(ドヒョンス)を信じられない眼差しで見つめていた。命を賭けて、伝説の聖獣・火龍に立ち向かう彼の覚悟が、理解できなかった。


「ど、どういうつもりで――」

「お嬢様……」


梅仙(メイシェン)が戸惑いながら呟くと、その時誰かが彼女に声をかけた。


「え?ズ、子龍(ズィーロン)……?」


それは、まさに子龍(ズィーロン)だった。


「お、お嬢様を守れ!」


国内軍の将であり領主護衛隊長である子龍(ズィーロン)が現れると、反乱軍の兵士たちが梅仙(メイシェン)を守るために彼に立ち向かった。


しかし……


「ぐっ!」


子龍(ズィーロン)都賢秀(ドヒョンス)に敗れた脚の痛みに耐えて崩れ落ち、梅仙(メイシェン)が慌てて駆け寄り支えた。


子龍(ズィーロン)!!」


反乱軍の兵士たちは、梅仙(メイシェン)子龍(ズィーロン)を気遣う姿に戸惑ったが、671番は事情を理解しているように憐れみの目で二人を見守っていた。


梅仙(メイシェン)は周囲を気にせず、子龍(ズィーロン)の状態を確認した。ずり下げたズボンからは、ひどく腫れ上がったすねがあらわになっていた。


「いったいどうしたの?白猫の聖獣を宿すお前が、こんなにやられるなんて……」


エヒョンを超えて長安国随一の剣客とまで謳われた子龍(ズィーロン)が、これほどの重傷を負うなど、誰も信じられない表情だった。


だが子龍(ズィーロン)は、むしろ楽しげに微笑んでいた。


都賢秀(ドヒョンス)公にやられました……あの男、私に拮抗するなどとても敵わない圧倒的な技量の持ち主でしたよ」


圧倒的な力量差を認めたのか、子龍(ズィーロン)は虚無感や憤りではなく、むしろ爽快そうに笑い、都賢秀(ドヒョンス)を称賛した。


その報告に皆は驚愕し、梅仙(メイシェン)もただおじさんを支えてほしいと言っただけだったから、子龍(ズィーロン)を屈服させるなど思いもしなかった。衝撃は消えなかった。


「それにしても、都賢秀(ドヒョンス)公はなぜあんなことを……?確か、危険なら撤退するとおっしゃいましたよね?」

「市民が火龍に脅かされている以上、自分が火龍を封じると言って向かったのです」


任務とは別に、市民が危険にさらされているから命をかけてでも火龍と対峙する――その高潔な決意に、梅仙(メイシェン)は涙を流した。


「ありがたい行動だとは思いますけれど……どうしてそこまで……」

「なぜって、お嬢様!都賢秀(ドヒョンス)おじさんは、僕たちのヒーローだからですよ!!」


天宝(ティエンバオ)が推しを「ヒーロー」と呼び、皆も笑い声を上げた。


「おっしゃる通りです、お嬢様。都賢秀(ドヒョンス)公は白龍に選ばれし英雄ですよ。信じてみてください」


子龍(ズィーロン)の言葉に、梅仙(メイシェン)も微笑んで頷いた。


「……そうですね。都賢秀(ドヒョンス)公なら、きっと私たちの村も、お父様も救ってくださる」


都賢秀(ドヒョンス)が命がけで戦うと決めたなら、私たちもここに残り、共に運命を歩む覚悟を固めた。


*****


子龍(ズィーロン)の剣を手に屋根の上に立つ都賢秀(ドヒョンス)は、威風堂々と火龍を見つめていた。


<そんなポーズを取れば無謀ではなくなるんですか?!>


レトムのツッコミが場の空気をぶち壊した。


「……ったく、あのバカAIめ。俺もちょっと格好つけてみろってのか」

<無謀にも程があります!はあ……800年ぶりの次元の繋ぎ手が、こんな頑固者とは…AIの身にもなりたまえ…>


最先端AIを自称しながら、80代のお爺さんのようにため息をつき、ぼやくレトム。


「うるせえ、お(レトム)!人々が危機にあるんだから、じっとしていられるわけないだろ!」


人命を優先する都賢秀(ドヒョンス)の姿勢には、レトムも反論できなかった。


ただ、心配なのは変わらない。都賢秀(ドヒョンス)が無事でいるのか、気が気でなかったからだ。


「心配するな、人工の存在よ」


その時白龍(ウカイ)が近づき、心配しなくていいと都賢秀(ドヒョンス)を励ました。


「本座は火龍と相克ですが、火龍の炎気はどうにか防げるでしょう。体は傷つかないはずです」

<それならよかった…>

「だが!」


白龍(ウカイ)に遮られ、レトムは驚き言葉を止めた。


「……本座の力で守れるのは炎だけであって、熱までは防げん」

<熱って……>

「そうだ。あの巨大な業火の中では、内部は数千度に達しているはずだ。本座の力で幾分かは抑えられても、数百度にはなるだろう」

<ということは、どうしようもないってことですか?>


炎は防げても、熱を防げなければ意味がない。サウナの熱すら数分しか耐えられない人間が、数百度の熱に晒されれば意識を失い、脱水、死に至る。


「実際にはそうだろう…人間が耐えられる限界――数分のうちに決着をつけねばならん。体力も持たねばならん、すなわち、勝敗は契約者の精神力次第ということだ」

<精神力で熱に耐えるだなんて……非科学的過ぎます。>


確かに突飛な話だった。無謀とも言える。


しかし選ぶのは都賢秀(ドヒョンス)自身。レトムと白龍(ウカイ)の視線は、自然と都賢秀(ドヒョンス)に向いていた。彼は言葉も発せず、ただ火龍を見据えていた。


その時……


「白龍か?」


下から声が響いた。まさに火龍に融合された龍煒(ロンウェイ)の声だった。完全に変わったその声は、威圧に満ちていた。


火龍は嘲笑を浮かべながら、都賢秀(ドヒョンス)白龍(ウカイ)を見据えていた。


「ククッ!まさに白いトカゲめだな。猿どもの騒動には関わらぬお前が、なぜここまで来た?」

「課せられた任務を忘れた聖獣を責めに来たまでだ」

「任務だと?そんな卑しい猿どもを助けることが、真に本座たる運命だとでも思っているのか?」

「黄玉上帝より授かった神聖なる義務を弄ぶとはな――やはり罰が必要だな」


罰という言葉に、白龍は楽しげに笑った。


「クハハハハ!! 本座と相克の気を持つお前が、何をしようというのか?しかも本座はすでにこの肉体を占有し力を発揮できているが、お前はどうだ?」


火龍は完全な力を得ているが、白龍は都賢秀(ドヒョンス)に力を全て渡せず、かつ相剋の気を持っているため、多方面で不利だった。


しかし、自分を侮る声にも白龍は冷静に答える。


「隠そうとしても無駄だ。お前が領主の体を掌握できるのも、キューブが媒介しているからだろう」


白龍(ウカイ)の言葉に、火龍はリングに隠されたキューブを後ろ手で取り込んだ。


「そうか……これが本座の唯一の弱点と言えるな」


火龍は確かに龍煒(ロンウェイ)の体を完全に支配していたが、キューブを失えば連結が断たれ、強制的に離脱する。


「だが、これを誰が破壊するつもりだ?この世には実体がないお前がするわけもあるまい。鉄の気を半分も扱えぬ猿にまかせるのか?それとも些細な計算力しかない人工存在か?」


しかしキューブを破壊するには、火龍に近づかねばならない。火龍は、都賢秀(ドヒョンス)が白龍と契約していても完全には力を発揮できず、触れることなど無理だと確信していた。


<……見上げたものです。>

「……実際、赤いトカゲめが有利なのは確かだがな」


火龍の炎の力は圧倒的で、白龍の力では熱を防げない。レトムは「本当にやるのか?」と見守っていたが……


都賢秀(ドヒョンス)は揺るがぬ目でただ火龍だけを見つめていた。


<はあ~都賢秀(ドヒョンス)さん。>

「またか?」

<勝って来てください。>


レトムがそれだけ言うと、都賢秀(ドヒョンス)はにやりと微笑んだ。


「何を心配してるんだ……心配せずに、ここで待っていろ。行くぞ、トカゲめ!」

「何と無道な人間じゃ!!」


白龍(ウカイ)が防御結界を展開し、光が都賢秀(ドヒョンス)を包んだ。そして彼は屋根から勢いよく飛び出し、火龍へ突進した。


「愚か者め!!」


火龍は防御結界に包まれ飛び込む都賢秀(ドヒョンス)を見下し、炎を放った。


都賢秀(ドヒョンス)は冥府の業火のような炎に包まれたが、白龍(ウカイ)の結界により身体は燃えず、しかし想像以上の熱で体も頭も溶けてしまいそうだった。


「ク――ッ!!」


覚悟していても、その熱さは意識を奪うほどだった。


[軽率すぎたか?どうすれば――]


都賢秀(ドヒョンス)は初めて火龍への突進を後悔した。白龍(ウカイ)はそれを感じ取り、すぐに撤退を促す。


「やはり無理だったようだ!本座が道を開く。このうちに撤退せよ!」


都賢秀(ドヒョンス)は意識が朦朧としていたため、安堵し撤退しようとしたが……


「おじさん、がんばって!!!」


天宝(ティエンバオ)の声が響いた。


「……ったく、あのガキ……他人事じゃあるまいし……」


もし自分が逃げれば、天宝(ティエンバオ)はもちろんこの地の全ての子どもたちの未来も命もない。だから自分は逃げてはいけない。


「何をしている、契約者め!さっさと退避しないと……!!」

「うるせぇ!!」


白龍(ウカイ)は撤退を促すが、都賢秀(ドヒョンス)は微動だにしなかった。


「逃げ出す暇があるならちょっとでも力を出してみろ、無能なトカゲめ!!!」


都賢秀(ドヒョンス)は退かず、戦い続ける道を選んだ。


白龍(ウカイ)はその覚悟に胸打たれ、共に力を振るった。


「……ったく、無道な人間め……よかろう!!本座の力を全て与えよう。泣き言は言うな!!」


白龍(ウカイ)は禁忌を破り、都賢秀(ドヒョンス)に100%の力を注ぎ込んだ。すると彼の背に白い光の龍翼が現れた。


「ま、まさか……!!」


火龍は都賢秀(ドヒョンス)の背に翼を見て、余裕の表情を失い、全力で炎柱を放った。


白龍(ウカイ)の防御により熱くはなかったが、白龍の力に耐える人の身体には、全身が爆発しそうな激痛だった。


それでも都賢秀(ドヒョンス)は止まらなかった。


「ク――ッ!!」

「な、なんて傲慢な猿め……」


都賢秀(ドヒョンス)と火龍の戦いは、今や意志のぶつかり合いへと変わっていた。


近づこうとする都賢秀(ドヒョンス)と阻もうとする火龍……しかし、やはり気の相性は火龍に有利だった。


「ククッ!!さすがだ……猿めが本座の力に抗えるなどない……」


火龍はすでに勝利を確信していたが、都賢秀(ドヒョンス)は朧な意識を必死に保つのがやっとだった。


「精神を失うな、契約者よ!!お前はまだ本座の力を完全に受け入れていない。この恐怖を振り払い、完全に受け入れるのだ!!」


白龍(ウカイ)の言葉に、都賢秀(ドヒョンス)はさらに歯を食いしばり、火龍へ向かって突き進んだ。


火龍は迫る都賢秀(ドヒョンス)に焦り、さらに力を込めようとしたが、その時……


「おっと!!」


火龍の左手に炎が宿り始めた。体が限界を迎えたのだ。


都賢秀(ドヒョンス)は白龍の全力を耐えしのいだが、領主の体は保たれなかった。


「今だ――!!」


間を見極めた都賢秀(ドヒョンス)はそのまま飛び込み……


ジャキンという鋭い音が響き渡った。


都賢秀(ドヒョンス)は火龍が右指にはめていたリングを正確に打ち砕き……


その場で、キューブを破壊することに成功した。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

気に入っていただけたら、ブックマークしていただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ