第一章 取り留めのない話
ひとつに留まることが人の身にとってどうしようもなく持て余すものだと気付いたのはつい最近のことだ。
今まで真剣に考えたことなどなかったが、人生なんていうものは点けっぱなしの豆電球と本質的にはなんら代わり映えするところなく、何かが起きようが起きまいが、やがていずれはどこかでぷつりと擦り切れてしまうものの道理について、十八回目の誕生日を迎える少し手前となった今頃、ようやく僕は悟ることができた。
同時に、ただ息を吸って吐くだけでも身体を構築するフィラメントが煌々と熱されて劣化しているのだという事実が思考の一部に酷く焦げ付いてしまったがために、今日日余分な溜息が喉の奥から、使い古した鍋底よりしみ出す水漏れのように、ぽつぽつと湧く様子を抑えられなくなってもいる。
そして、この溜息が五分後も当たり前のように繰り返されるかどうか、いったい何処の何某が保証できるだろうか。身体の各所に走るヒューズがいつの瞬間に弾けるのか、病める者にも、健やかなる者にも、肝臓を果実酒に漬け込んだ大酒呑みにも、蛇の巻かれた杖つきにも、知りようなどありはしない。
だから僕は必要に駆られなければ日頃わざわざ手に取ることもないペンを片手に、この取り留めのない話を――読む人にとっては悲劇とも喜劇とも奇跡とも取れるかもしれない荒唐無稽な話を――僕の身に何が起きたのかを熱心に知りたがる物好きな記者が押しかけてきた時のためにも……数少ない友人知人家族に向かって一連の背景を順を追って説明するためにも……病室に立ち込める執拗な消毒液のにおいから僕の気をどうにか紛らわすためにも……ヒューズが弾け損ねたことによって得られた豊富な暇を有する今の内に書き記すことに決めたのである。
そう……悪いがこの奇譚は手書きで残させてもらう。
今のご時世に随分と非効率ではないかと思うところはあるかもしれないが、手を動かすことが僕の精神と身体の両面に健全を運び入れるこれ以上ないまでの換気の役を担っているものだから、眼前に広がる己以外の条理に理解が及びそれを情動のままに書き留めずにはいられない嬰児たるやの汚い文字記号にはこの際、諸君の寛大な心によって目を瞑ってもらえることを切に願う。
さて、どこから書き出すことにしたものか……




