相談?真鍋が好き?お前に関係ない?
どうやら僕は選択肢を間違えたようだ。真鍋の死を目の当たりにして気づいた。
警察はすぐに到着し、僕らは事情を聞かれた。
「なぜ、旧校舎の理科室にいたのですか?」
上茶谷が蛇のような鋭い目つきで聞いてきた。
「真鍋先生を探していて……」
「なぜ、探していたのですか?」
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A:真鍋先生に脳のことで相談したくて
B:真鍋先生のことが好きで
C:お前に関係ないだろ
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BやCを選ぶとややこしいことになると思うので、僕はAを選択した。
「脳?」
上茶谷は怪訝そうな顔をした。
「あ、僕は記憶喪失になっていて、そのことで色々質問がありまして」
「なるほど」
一応、納得してくれたようだ。僕が記憶喪失なのは、警察も周知の事実のようだ。
「真鍋先生は、あの、殺されていたのでしょうか?」
僕が聞くと、彼は頷いた。鑑識結果によると、真鍋先生は一度の殴打ではなく、何度も執拗に殴られたようだ。
「怨恨の線も考慮して捜査中だ。魅力的な女性だったので、男関係で何かしらあるとみている」
僕は生前の真鍋を思い出し、心が痛んだ。阻止できたかもしれないからだ。
「自殺騒動があったので、赤西巡査には見回りするように言ってあったが、そんな中、こんな事態になるなんて」
上茶谷はしち面倒くさそうに嘆息した。
「大丈夫?」
事情聴取が終わった後、真実が顔を覗き込んできた。
「ああ。うん。真実こそ、平気か?」
僕が聞き返すと、彼女は首肯した。
「それにしても、なんで、真鍋先生が……」
目を潤ませ、真実はつぶやいた。コンティニューすれば真鍋先生への凶行は止められるかもしれないが、あいにく、僕のスキルは死なないとコンティニューできない仕組みだ。
「どうしてだろう?」
僕は考えた。選択肢が出る。
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A:真鍋は何かを見つけた
B:真鍋は何かに気づいた
C:真鍋は共犯関係にあった
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殺されたので、Cはなさそうだ。となると、AかBだろうか。――考えた末、僕はAを選んだ。
「練炭事件に繋がる何かを見つけたんだ」
「何かって、何?」
真実は首を傾げて聞いた。
「わからない。保健室にいけば、なにかあるかもしれない」
僕たちは保健室に行った。
「ここは立ち入り禁止だ」
警官たちに門前払いされた。考えることは彼らも同じようだ。
「警察に任せて、帰ろうよ」
真実が提案した。
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A:まだ調べたい
B:わかった帰ろう
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Aを選択しても、警官に睨まれて終わるだろう。僕は帰ることにした。
「ねえ」
帰宅途中、真実が深刻そうに言う。
「やっぱり、犯人は学校の誰かなのかな?教師や生徒の中に……」
「そうだろうね」
僕は断言した。
「学校には出入口に防犯カメラがあるし、不審な人物がいれば、とっくに警察が捕まえていると思う。そもそも、赤西さんが巡回していたし」
「たしかにそうね」
真実は露骨にがっかりした。知り合いに殺人者がいるかもしれないというのが嫌なのだろう。
「じゃ、明日また」
僕と真実はお互いの家に入った。
「おかえりなさい」
玄関に入ると、母が心配そうな顔で僕を迎えた。学校の事件はすでに知っているだろう。
「ただいま」
母は何か言いたげだったが、僕は素知らぬふりをして二階に上がり、自室へ行った。
反省点は多くあるが、ひとつ言えることは、練炭事件は自殺ではなく他殺の可能性が高いということだ。それの何かを掴んだ真鍋は、犯人によって口封じをされた。
僕は何かを見落としていたのだろう。何だろうか?
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A:学校を調べよう
B:家で待機しよう
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僕は迷わずAを選んだ。危険なので真実に声はかけず、単独行動だ。
「出かけてくる」
キッチンに立つ母に一言いうと、僕は自宅を出た。
外はすっかり暗くなっており、カアカアと遠くから鴉の鳴き声が聞こえた。
学校は夜なのであたりまえだが、ひとけはない。何名かの教師は残っているのだろうか。職員室だけ明かりが見える。
旧校舎へ歩みを進めていると、足音が聞こえてきた。誰か近づいてきている。
僕は慌てて物陰に身を隠し、その人物を確認する。
(あれは……。なぜ、あいつがこんな時間に?)
僕は音を立てないように、その人物の後をつけた。旧校舎に入っていく。
(まさか。犯人!?)
そろりそろりと後を追う。
その人物は、真鍋先生が死んでいた理科室の前で立ち止まった。きょろきょろと辺りを伺うと、立ち入り禁止のテープを無視し、中に入っていった。
僕は理科室に近づこうとした時だった。後頭部に激痛が走った。
「なんで……」
頭がぐわんぐわんする。血も流れている。誰かの足元が見えた。
そいつは、何も言わず、二発目を僕に食らわした。
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コンティニューしますか?
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僕は「はい」を選択した。
*
目を開けると、僕は公園で倒れていた。スタート地点に戻っている。
「くそっ」
僕は途中で選択肢を間違い、殺されてしまった。問題なのは、コンティニューする直前の犯人の情報が記憶から抜け落ちているということだ。
つまり、ちゃんとした推理のもと選択肢を選ばないとクリアできないし、犯人の正体もわからないということだ。
何度同じことを繰り返せば、僕は正解に辿り着くのだろうか……。
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