真相はどこに?
「もちろん。密室の謎は解けているよ」
僕は高らかに宣言した。
=
A:ガムを使ったんだよ
B:氷を使ったトリックだ
C:飴を使ったのかも
=
とはいうものの、実はまったく密室については考えていなかった。うう、どうしよう……。
ガムを使うトリックとは、どういうものだ。ベタベタと窓に塗り付けて閉めたとかだろうか。
いやいや、待てよ。
そんなことをすれば、とっくに警察には露呈してしまうだろう。
じゃあ、氷はどうだ。――駄目だ。そんな使い古したトリックは……。
(ええい、ままよ!)
僕はBを選択した。
「氷を使ったトリックだ!」
僕は胸を張って言った。
「窓を氷にして、偽造していたんだ」
「それだと、練炭があるから、氷解けちゃうよね」
真実が鋭い指摘をした。
「氷って、使い古されたトリックだなぁ」
洋一は失笑している。
「うっ……。すみません。違いますよね」
僕は肩をすぼめた。穴があったら入りたい。
「私、わかったかも」
真実が目を輝かせて言った。
「飴を使ったんだよ」
「飴だと熱さで溶けちゃうでしょ」
悔しい僕はすぐさま突っ込みを入れた。
「あれ、知らないの?飴って融点ないんだよ。だから、市販の食べる飴は25度くらいでダメになっちゃうけど、作り方を変えれば、どの温度でドロドロになるかはわからないよ」
真実は続けて言った。
「窓に腕が通るくらいの穴を開けて、廊下側から腕を通して、中のガムテープを押さえつける。それが終わったら窓の鍵をかける。その後、その穴を飴細工で塞いでしまったんだと思う」
「それだと、警察の捜査時にその窓のことを気づかれないか?」
金子がみんなの疑問を代弁して尋ねた。
「だから、カーテンですよ」
真実は動じずに答える。
「カーテン?」
「そう、その工作した窓のカーテンのみ開けておいて、発見時にその窓を壊すように誘導しているんです」
「ああ」
警部は腑に落ちた顔をした。
「だから、あの壊した窓、よく調べればガラス片に飴成分が付着している可能性が高いと思います」
「でも、発見者があの窓を割らなかったらどうするつもりだったんだ?細工がすぐにバレるよな」
洋一が突っ込むが、彼女は怯まない。
「犯人はトリックがバレても、問題なかったんじゃないのかなぁ。バレたとしても、自分に繋がるような証拠は残してなくて、窓の細工は中山くんの悪戯っていう噂を流す計画があったのかも」
「……」
名指しされた中山は黙って話を聞いていた。
「それに、あの時、窓を割る提案をしたのは誰だったかな?」
真実が洋一を見ながら言った。
「あっ」
僕と洋一は同時に声をあげた。
「青木だ!」
「そう。洋一くんに招集かけられたのは想定外の出来事だったんだろうけど、うまく利用した形だよね。多くの発見者をつけ、細工した窓を割らせるという」
十秒ほどの静寂の後に、ふいに、青木が口を開いた。
「そこまで見破られるとは……。意外と、頭が切れるんだな」
「なんで、こんな事件を起こしたんだ?」
洋一が聞いた。
「復讐だよ」
「復讐?」
僕はオウム返しをした。
赤井鈴と青木吾郎は小学生の時、隣同士の幼馴染だった。鈴は近くの公立の学校に通い、吾郎は二駅離れた私立の小学校に通っていた。
仲が良く、将来は結婚を考えるほど惹かれ合っていた。そんな二人だが、突然、別れが訪れた。
鈴が小学校の三階から転落し、死亡した。警察は事故と処理したが、吾郎は直観的におかしいと感じたという。
「だから、俺は、色々と調べた」
調査した結果、学校でいじめが行われていたことが判明した。その主犯格が、白浜奈美と桃井京子だという。
「えっ。桃井って」
真実が反応した。教師たちも気づいたらしく、目を伏せていた。
「知っているのか?」
僕は聞いた。
「今年の四月に、自宅マンションから落ちて亡くなっているよ。うちの生徒だった」
「まさか」
僕は青木を見た。
「そうだよ。そいつも、俺がやった」
彼はゆるゆると頭を揺らしている。精神状態がおかしくなっているようだ。
「詳しい話は警察署で聞かせてくれ」
警部が彼に手錠をかけようとした時だった。
「ぐう」
青木は唸ると跪き、苦しそうに喉を抑え始めた。
「おい!」
僕が慌てて寄ろうとすると、赤西巡査に抑えられた。
「大丈夫か」
洋一も同じく、巡査に制される。
警部が近づいて、青木の脈をとる。
「ダメだ」
かぶりを振った。
どれだけ経っただろうか。
警察や消防が訪れて、あたりを忙しなくばたばたと作業をしていた。呆然として、僕たちは成り行きを見守っていた。
選択肢はでなかった。彼を救う手立てはなかった。
なぜだ。ちく〇ょうめ。
赤西巡査が、僕と真実の傍を通り過ぎた。そういえば、事件の関係者は名前に色が入っている人が多いな。
僕はふと、気になることを聞いてみた。
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A:巡査の名前
B:巡査の血液型
C:巡査の誕生日
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「巡査って、名前はなんていうんですか?」
僕が聞くと、赤西は微笑んで、
「自分、赤西五輪と言います。丁度オリンピック期間に産まれましたので、親があやかってつけたとか…」
と言った。
「へえ」
「昔のアダ名は、赤西と五輪をもじって、”赤いリンゴ”と呼ばれていました」
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ゲームを続けますか?
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