中庭?化粧?眼鏡?筋肉?
僕はコンティニューし、練炭事件の翌日まで話を進めていった。
*
午前の授業中、僕はずっと事件のことを考えていた。その間、ぬぐい切れない違和感があった。
僕と真実は中庭で昼食を食べていた。
「違和感?」
真実はかわいらしく首を傾げた。
「うん」
「事件現場とかの違和感かなー」
「僕もそう思ったんだけど、何か、どこかで、ヒントを拾ったような、拾っていないような、違和感があったんだ」
「ふーん」
真実はタコさんウィンナーを頬張った。
ブツブツと言いながら考えていると、僕の弁当の卵焼きがひょいと奪われていた。
「もう、考え事ばかりで、会話しないから、全然楽しくなーい」
真実が笑いながら頬張った。
「あっ」
僕は声をだして立ち上がっていた。
「え、なに、びっくりした」
真実が目を見開いて僕を見ていた。
「わかったよ。違和感の正体が……」
「正体って、なに?」
選択肢が表示される。
=
A:この中庭だ
B:化粧だ
C:眼鏡だ
D:筋肉だ
=
前回はここでBを選択したので、結果的に真鍋先生も僕も殺されてしまった。
同じ轍は踏まない。僕はAを選択した。
「中庭、いつも通りだと思うけど?」
「いや、この辺に証拠が残っている」
僕は捜索を始めた。
探せど探せど、物証らしきものは転がっていない。僕の勘違いなのだろうか。
ランチタイムの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「午後の授業始まるから、私は行くね」
非情にも真実は立ち去った。
結局、放課後になるまで探したが、証拠はなかった。
*
またしても、真鍋先生と僕は殺され、コンティニューをした。
*
AもBもアウトだったので、僕はDを選択した。
「あんなときに筋トレしていた黄江先生が怪しい」
僕ははっきりと断言した。
「ただの筋肉バカなだけなんじゃないの?」
「いや、証拠をごまかすためだ」
汗か臭いか、なにかを誤魔化そうとしていたのだ。
「そうかなぁ……」
真実は納得できない表情だ。
ランチタイムの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「放課後、黄江先生を問い詰めてみよう」
僕たちは教室に戻った。
*
三度、真鍋先生と僕は殺され、コンティニューをした。
*
三度目の正直ならぬ、四度目の正直だ。
残ったのはCの眼鏡だ。眼鏡に関するヒントは、なにかあっただろうか……。
「あっ」
思案して、僕は重大な見落としに気づいた。
「眼鏡だ!」
「眼鏡?どういうこと?」
真実は鳩が豆鉄砲を食ったような顔で聞いた。
=
A:レイバンの眼鏡だよ
B:黄江先生が裸眼なこと
C:眼鏡をかけていない人物がいた
=
「レイバンの眼鏡をかけていた金子先生、怪しくないか?」
僕は彼の挙動不審な姿を思い出した。
「え、そう?」
「おそらく、被害者と揉み合って、目のあたりを怪我したんだよ」
「でも、昨日、現場に駆けつけた時、そんな感じはしなかったけど?」
真実は真っ当な意見を言った時、ランチタイムの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「――とにかく、放課後、金子先生に会いに行こう」
僕たちは教室に戻った。
*
また、またしても、真鍋先生と僕は殺され、コンティニューをした。
*
とんだ迷探偵だ。
今度はさきほどの選択肢で『C:眼鏡をかけていない人物がいた』を選んだ。
あの時、眼鏡が必要だった、人物の名は……。
=
犯人の名前は?
| |
=
やったぞ。犯人の名前を打ち込む入力欄がでた。
(もしかしたら――)
僕は天啓が降りてきたような気がした。犯人は僕だ。記憶喪失になっているけれど、実は二重人格なのだ。
僕は”僕”と打ち込んだ。
「犯人は僕だ!」
「はあ?」
真実が険しい顔で言った。
「冗談はやめてね」
どうやら本気で怒っているようだ。
「ご、ごめん。冗談だって」
*
また、また、またしても、真鍋先生と僕は殺され、コンティニューをした。
*
眼鏡が必要だった人物……。行動もしくは言葉に矛盾があった人物……。
「ああ、なんてことだ。とんでもない馬鹿だ、僕は」
自分の頭を何度か小突く。
「大丈夫?」
真実は不安げな表情で覗きこんでいた。
「ああ。今度こそ犯人はわかったよ」
僕は慄然とした。手足に鳥肌が立つのを感じた。
「今度こそ?」
真実にとっては初めてになる。
「すまない。言葉の綾だ」
慎重に、僕は犯人の名前を入力した。
=
犯人の名前は?
|〇〇 |
=
「あの時、眼鏡が必要なのに、眼鏡をかけていない人物がいたんだ」
「どういうこと?」
真実は困惑した。
「多分、なんだけど、まだ探せば証拠は残っているかもしれない。たとえば、そう、旧校舎の理科室とか」
理科室は事件現場の隣の部屋だ。犯人が作業をしていた際にモブに目撃され、証拠を残しているのではないかと疑っている。
ランチタイムの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「放課後に調査してみようと思う」
僕たちは教室に戻った。
放課後、僕と真実は理科室を調査していた。
「ここには何があるの?」
と真実が聞いた。
犯人を追い詰めるための選択肢が出る。
=
A:ガラスに関するもの
B:目に関するもの
C:炭に関するもの
=
僕は迷わずBを選択した。
「おそらくだけど、目に関するものが落ちているはず……」
僕は数分ほど理科室の床を目視していた。すると、きらりと太陽光に反射したものを見つけた。
「これだ」
僕は用意していたビニール袋に、それを慎重に入れた。
「おや、こんなところで何しているんですか?」
赤西巡査が理科室のドアから顔を覗かせていた。
「あの、すみません」
ちょうど良いタイミングと思い、僕は言った。
「はい。なんでしょう」
「ちょっと頼みたいことがあるのですが……」
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