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きついっ

進めども進めども森から出られない。


「アッシュ。

お疲れ様。

魔物が途切れた今ならリルと交代出来るわ。」


アッシュは魔力切れ寸前で顔面蒼白になっていたが気力で結界を維持していた。


リルと交代し全員で休憩を取る。


アッシュは全神経を結界に費やしていてMPポーションを飲む余裕さえなかった。


一気にMPポーションを飲み干し一息つく。


「これはきつい。」


「そうよね。

結界をこの人数の広さでしかも移動させるなんて普通じゃないもの。」


「じゃあさぁ、二体でする?」


「移動がないならそれもいいけど移動するから二体では難しいよ。」


「私も一体で頑張る方がいいかな。」


「了解。

アッシュほど無理する前に声かけて。

周りの魔物一掃して交代する時間作るから。」


グラシアとフリッツはまた結界の外へ出て食糧になりそうな物を探しに行く。


二体を待つ間にアッシュは地面に座り目を閉じた。


リルもその隣りに座り結界に集中する。


ジゼルは使用人らに収納バックを持っている者がいないか尋ねた。


キッチンのはラゴーラの物なのでここにはない。


「そうかぁ。

冒険者ぐらいしか個人持ちしないのかぁ。

じゃあさぁ。

ポーション類を持ってたりは?」


使用人達の私物は衣類などでこういう時に使えそうな物は誰も持ち合わせていなかった。


グラシアとフリッツが果物とハイオーク五体を持って戻ってきた。


使用人達にナイフを渡し食事の用意を頼む。


ジゼルが土魔術でかまどを作りグラシアらが拾ってきた薪に火をつけた。


「グラシア話があるの。」


ジゼルはリルとアッシュの側にグラシアとフリッツを呼びアッシュを起こす。


「ごめんね。

疲れて寝てるのに起こして。」


「ああっ。

寝ちゃったんだな。

こっちこそごめん。

寝るつもりはなかった。」


ジゼルは使用人達が役立つ物を持ってない事を伝えた。


「食糧は何とかなるとしてポーション類が切ないわね。」


「回復系は魔術で補えるけどMPポーションはいざという時用に節約しないとな。」


「あれもこれもやられたわね。

私達に準備をさせないように一切の情報を漏らさずいたんだわ。」


「情報といえばハネスがここにいないよな。」


「気がつかなかった。

いないわね。」


「あれは何なんだ?

特別か?」


「特別なんでしょ。」


「いやぁ腹立つな。

あいつだって悪魔なのに。」


「いつもすましていてそのくせラゴーラに上手く取り入りやがって。」


「あいつなら攻撃魔術使える。

なのにいないって?」


抑えていた怒りが噴出する。


「これってもしかして新しい世界を創るって言い出す以前から決めていたの?」


「決めていたんだろうな。

それでないと一番戦闘力が高くしかも神のネシリを別な世界に行かせないだろう。

あいつネシリお気に入りだし。」


「ネシリなら止める能力あるのに。」


「何よりこんな酷い事をするのをネシリだけには知られたくなかったのかもな。

絶対野望の邪魔をして叱そう。」


「ネシリをすんなり行かせる為にゼストやパーティメンバーは分かるけどロムサとユウラとリタはなんでだ?」


「向こうのメンバーに天使族いなかったからかも。」


「それならロムサは分かるけど顔ぐらいしか知らんユウラとリタは?」


「天使族ならうちのメンバーだって三体いるのにね。

おかしいわよ。」


「さてな。

分からん者同士いくら話し合っても答えは出ないぞ。」


「どちらにしても俺らはあいつのオモチャにされているって事だな。」


「本当腹立たしい。」


「意地でも生き残ってやる。」


「そしてラゴーラを倒すっ。」


「おうっ。」


打倒ラゴーラと目標が決まった。


食後また歩き出す。


食べたので力もわきさっきより早く進めていた。





「まだ一体も死んではおらん。

伊達にトップクラスではなかったな。

サクサク高ランクの魔物も倒されていくわ。

こうでないとな。」


ラゴーラは上機嫌にハネスの入れたコーヒーを飲む。


「ネシリに付けた天使族か?

別に意味などない。

ネシリなら天使族など容易く創れるだろう。

我の気まぐれだわ。

ハネスか。

ハネスが我の特別なのは今更だな。」


いちいちグラシア達の話に独り言で答えていた。


「そう。

我はネシリに知られたくなかった。

当たっておる。

そしてネシリとハネス以外はどうでもいいのよ。

いなくなれば創れば良いだけだからな。

ネシリクラスは我でも創れるか微妙だ。

ましてや我でも今のネシリは殺せぬ。

下手すると我であっても・・・。」


ラゴーラは最後までは言葉にしなかった。


ハネスは静かに側に仕えている。




ひと月経つがまだ森の中から出られていない。


輝きの雫だけなら身体強化をかけ駆け抜けられるが使用人達はスピードや負荷に耐えられないだろう。


日数を重ねる度に休む頻度も増えていた。


結界は辛うじて健在だ。


「これは拷問のようだな。」


「守りながらがこんなにきついとはね。」


極度の睡眠不足とすり減る神経と体力にタフな輝きの雫のメンバーも根を上げたくなっている。


「あと二日歩けば森を抜けられそうよ。」


「二日かぁ。」


「今日はこれまでにしてあそこの開けた場所で休もうか。」


「そうね。

食糧獲ってくるから食事の準備でもしておいて。」


グラシアとフリッツが食糧調達に出た。


使用人達は日に日にやつれていく輝きの雫のメンバー達に負い目を感じている。


自分達さえいなければ自由に動けるのにと。


それをジゼルは感じ取り優しく声をかけ励ましていた。


「あなた方がいるから美味しいご飯も食べれるのよ。

適材適所っていうやつね。」


そう言われても申し訳なさは消えない。


夜の森は昼間より魔物が活性化して強くなる。


「あれ見て。

すんごいのが来た。」


「ここって龍もいたのね。」


「この世界で過去いちデカいな。」


「一体で助かったわ。

何体もは厳しいもの。」


龍はシルエットでしか確認出来ないので色が見えず能力が不明だ。


「ここを襲いたい魔物達を捕まえて食っているんだな。

今出ないで隠蔽と結界を強化してやり過ごそうよ。」


アッシュが自分の結界に隠蔽もかけていたがフリッツの言葉で強化した。


「大食らいなのね。」


「あの巨体だから。」


ジゼルは小さくなり震えている使用人達の元へリルと行っている。


グラシアとフリッツはいつ戦闘になってもいいように戦闘準備をして観察していた。


「強いわね。

爪だけで魔物を倒して食べてるわ。」


「あれだと何龍か判断出来ないな。」


「あっ。

魔物達逃げ出し始めたな。」


「敵わないと理解したのでしょうね。」


「腹一杯になってくれてたら助かるけど。」


「そうね。

ところで龍って食べれる?」


「食べれるだろ。

トカゲを巨大化したようなものだから。」


「食べれるならやる気も出るわね。

素材も使えるし。」


「いやいや。

今は去ってくれて方が良いよ。

守りながら戦える相手じゃないって。」


「それはそうだけど。」


グラシアを諫めながらもフリッツは戦い方をシュミレーションしていた。


「龍は根絶やしにしたいのよね。

あいつみたいでイライラするから。」


フリッツもグラシアと同じ気持ちだった。


だが龍は満足したのか山脈の方へ飛び立っていったのだった。




二日後ようやくと森を抜けた。


そこは草と所々に林程度の木が生えていたが人気はない。


「まじかぁ。

家ひとつ見当たらない。」


「生き残りは皆無かも。」


しばし茫然自失となった。


使用人達はへたへたと力無く座り込む。


大型の魔物は森の外には出て来ないのか周りは蹴るだけで倒せそうな弱い魔物しかいなかった。


気を取り直し輝きの雫は集まり話し合う。


「これはないな。

死ねって言われている。」


「参ったわね。」


「転移出来ないのが惜しいな。」


「ちょっと飛んで高い所から見てみるか。」


「気をつけろよ。

空にも強い魔物がいるんだから。」


「ふふっ。

今夜は鳥料理ね。」


「お前が餌にならんようにな。」


グラシアとフリッツが空から観察している空き時間に結界を張っているジゼルを除き各々結界内を見て回る。


「土の質は悪くないわよ。

誰も作物植えなかったのかな?」


「植える前に死んでんだろ。」


「かもね。」


「あっ。

ここの地下に水脈発見。

井戸掘ろうか?」


「水は生活魔術で作れるから急がない。

グラシア達とまずはここに根を下ろすのか相談しないとな。」


「引っ越しても良いから取り敢えず拠点欲しいわ。」


「なっ。」


グラシアとフリッツは地上からかなり上空まで飛び把握できるだけこの大陸を把握した。


「はい。

今夜の食糧。」


持ち帰ったのはナーガだった。


「お前鳥って言ってなかったか?」


「蛇も鳥肉みたいで変わらないでしょ?」


「まぁな。」


ルフもいたがナーガの方がたくさんいたから蛇でもいいやと三体狩って来たらしい。


いつものように使用人達に料理は任せ今後の相談をしに輝きの雫は集まった。


ここは大陸の西側の山脈麓の森を抜けた所で真っ直ぐ進むと砂漠がありその東側にも山脈がある。


北側に海が見えその東西に何かダンジョン風な物がありそう。


南側にも森があり東西に何か見えたが何かは不明。


「どうする?

ここに仮住まいするか?」


「水脈通っているから井戸掘れるよ。」


「森近いし木材は豊富だな。」


「そうね。

魔石あるし魔石で結界張ってここに仮住まいしましょうか。」


「それなら畑もつくろうよ。

栄養豊富な土だから。」


「そうと決まれば即行動ね。

私とフリッツは木材調達してくるからリルは魔石が結界張れるようにして。

アッシュは使用人達にここを仮住まいにするから家の建築手伝ってと伝えてね。

ジゼルはリルが結界石作るまで結界の維持よろしく。」


使用人達はここに落ち着くと聞き安堵した。


ひと月以上も歩きっぱなしと先行き不透明に心が折れかけていたから。


実際何体か咄嗟に魔物の前に飛び出し食われてしまおうとしている。


それを助け励ましここまでやっとの思いで辿り着た。




「全員生き残るとはな。」


ラゴーラはハネスの入れた紅茶を飲んでいる。


「家を建てるのか。

ほぉ。

戦闘には使えなくとも暮らしには使えるからな。

使用人どもも。」


ハネスは何も言わずに今日もラゴーラの側に立っていた。





グラシア達は魔術で木を倒し乾燥させ板や柱に加工して使用人達に預ける。


使用人達は役立てると元気になりよく働く。


リルは土魔術で土台などを手伝っていた。


ジゼルは魔物の侵入を阻む頑丈な塀を結界石の内側に作っていく。


アッシュは井戸を作り女性陣のたっての願いの風呂を数体の使用人達と作っている。


グラシアとフリッツは魔物狩りついでに果物や薬草、食用キノコなど食材確保にでかけていた。


数日で使用人達を男女に分けて一棟ずつと輝きの雫に一棟の計三棟の家と浴場とキッチンつきの食堂が出来る。


「風呂に入れるなんて百年ぶり?」


「それぐらい入れてないわね。」


「クリーンで綺麗に出来ても風呂は別よ。」


男女別の大浴場で身も心も緩んだのか使用人達の多くは大泣きしていた。


輝きの雫のメンバーは改めてラゴーラを討ち滅ぼすと誓う。
















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