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ラゴーラの真の箱庭

住処となる亜空間。


考えていたより創るのが簡単ではなかった。


そのせいもありラゴーラは引っ越し作業も面倒になる。


だから自分の城をそのまま持って来た。


その為いちから住処を創る手間はない。


「どうせ使うのはいつもの場所程度。

これで充分だ。」


ハネスも同意している。


この城はラゴーラが創った物。


愛着は少なからずあるが五千年以上も前の物。


造りが古く城勤めの配下達のほとんどは使い勝手が悪いと感じていた。


ラゴーラは執務室と自室以外は何かないと使わない。


ラゴーラ自体は変化して世界のあちらこちらを力を隠し放浪しているようなものだ。


あまり城にはいないのもあり不便を感じておらず又龍だからか細かい部分は気にならない。


ラゴーラには配下からの苦情もないので不便に感じているなど全く知らない。


ハネスには配下からの苦情が多く寄せられていたが我慢しなさいとそこで止まりラゴーラの耳に入る事はなかった。


直接の苦情をラゴーラに提言出来る勇気は長年城で仕えている者達には無いに等しい。


世界中を駆け巡って冒険者として活動してきた輝きの雫のメンバーはちょくちょく我が家をリフォームしていたので常に快適な生活を送っていた。


それが現在ラゴーラの古城での生活がとっても不便で茫然自失に陥っている。


もちろんすぐさまラゴーラに改善を求めに行ったがラゴーラに会う前にハネスに止められた。


ハネスよりラゴーラは世界を創るのに多忙極まるので会うのを控えてもらうとの事。


何かあったらハネスを通すようにと強い口調で言われた。


不服に思いつつ部屋へ戻る。


あてがわれた部屋はジメジメしており窓が極端に小さい。


鉄格子が無いだけの監獄の様相に呈している。


耐え切れずこっそり魔術を使い自力で室温や湿度の調整をしクリーンをかけた。


備え付けの家具類は廃棄し念の為に用意してあった新しい家具や寝具を設置。


部屋は妥協出来る程度になった。


だがこの城のどこにも風呂がない。


クリーンで済ましているとメイドが教えてくれたが身体や衣服は綺麗になるけど気持ち的にさっぱりしなかった。


キッチンも古く保冷庫などもないので食材は全部収納バック保存。


オーブンもなくコンロのみの調理でそのコンロも火力が弱く多くの料理を作るのは大変そうだ。


間に合わない時は魔術を使うらしい。


城全体の灯りも灯ってはいるが薄暗く移動は昼夜問わず暗視かライトを使う羽目になる。


明るいのは玄関ホールからラゴーラの執務室など来客を想定した場所のみだ。


「なんだろうな。

ご主人様はどんよりした雰囲気の城が好きなのかな?」


「それはどうかな。

どんよりは古城だからじゃない?」


「城での生活に快適さを求めてないんだろうね。」


「誰かが訪ねてくる場所のみ明るいから生活スペースがこんなんだって知らないのかも。」


「こっちに来なさそうだもんな。」


「龍なんだなぁってこういうところで実感するわね。」


「自動で明るさ調整付きの目だものね。

灯り無しでも平気。」


「ご主人様の生活圏は明るいけどな。」


「そうなんだよね。」


グラシア達は先行き不安なのとラゴーラに直談判をしたくてもハネスに妨害される事にストレスが膨らむ。


「なんでご主人様に生活向上願ってはダメなんだ?」


「執事通さなくても言えるのに。

俺らは。」


「まだ始まったばかりだよ。」


「嫌になる。」


「逃げられないけど逃げたい気分だわ。」


「ネシリの方が何億倍も良かったなぁ。」


「しっ。

ご主人様に聞こえるよ。」


「これから言いたい事も言えないのね。」


「我慢しろって。」


「あーぁっ。」


「憂鬱になる。」


「あんなキッチンだから食事もいまいちなんだね。」


「あの時の朝食も美味くなかったんだろうな。

それをゼストはガツガツ食べていたから美味いんだと思ってた。」


「私も。」


「あっそういえばあの後の食堂でエリンにゼストがさっきの美味くなかったと言ってたわ。

忘れてたけど。」


「忘れるなよ。

食事が美味いと美味くないじゃ全然違うのに。」


「でもね。

それ知っていてもどうしょうもなかったでしょ。」


「そうだけどさぁ。

買いだめ増やすとか出来たろっ。」


「それ食べ切ったら終わり。

もう買いに行けないんだから。」


「悲しい事実を実感させるなよぉ。」


本気で嫌やで逃げ出したいけど誰も彼もなす術がない。




ネシリとほぼ時を同じくしてラゴーラも新世界を創るべく亜空間を開く。


広い亜空間を開くぐらいあっさりと終わらせれるとしてたが思いの外時間がかかった。


ネシリと大きく違う点はラゴーラはあくまでも己の世界を創るので配下に相談などはしない。


天上天下唯我独尊。


神々を喰らってからラゴーラはそうなった。


一面の海に空まではネシリと変わらないが大きく違うのは大陸がひとつだけの所だ。


前の世界も大陸は一つ。


ラゴーラは迷いなくそうした。


広大な大陸の東西に大陸の五分の一ずつ南北に連なる山脈。


どちらの山脈にも龍の渓谷があり龍の卵をゴロゴロ置く。


龍の渓谷から少し離れた箇所に木々が生い茂る地帯。


そこに弱い魔物から順にランクを上げて創っていく。


山脈の中央に大きな湖。


湖から川が流れ落ち平野に潤いをもたらす。


次に南南西にドワーフの国、南に森、南南東にホビットの国を創る。


森には低ランクから中ランクあたりの魔物。


ラゴーラの新世界はラゴーラのみで進み配下はどんな世界かも知らされていない。





ラゴーラの城の周りは何も無い。


散歩をしたり眺められる庭も元あった分だけで新しく造られはしなかった。


「ねえ。

ここに来て何もする事がないなら私達いらなくない?」


グラシア達は手持ち無沙汰。


「いらない。」


「そうともいう。」


「あんなに多忙だったのが嘘のようだもんな。」


「なんせ暇。

向こうの世界へご主人様の力がないと転移出来ないし。

ネシリ達の所はご主人様とネシリの許可必要だし。」


「許可制だったの?」


「知らんけど。」


「うーん。

転移でもここから出られなかったよ。」


「やってみたのか?」


「まあね。」


「やっぱ許可制でしょ。」


「それはどうかな。」


「せめて向こうの世界に帰してくれないかな。」


「ハネスの話だと人類が誕生したら忙しくなるって。」


「それいつだろうな。」


「ここに来てから結構経ってない?」


「たってる。」


社畜の者程暇を持て余す。


ダラダラと過ごせるのはせいぜい二日。


後は何かしないと落ち着かない。




ラゴーラは大陸の中央に砂漠を創る。


砂漠の真ん中あたりにオアシスを創る。


砂漠にも魔物を放した。


平野部には人間族と獣人族を数十人ずつあちらこちらに点在させて置く。


西の山脈の北西の麓にダンジョン。


東の山脈の北東の麓にもダンジョンを置いた。


魔族や魔人やエルフや精霊は保留にする。


小さな湖や森をちょこっと創りラゴーラの箱庭は一応完成となる。




ラゴーラの世界の住人は精霊の恵みのない中厳しい生活を強いられていた。


武器もなく食べ物もなく人間と獣人はバタバタと倒れていく。


森や山脈から魔物が出て来ては弱い者から狩られていた。


魔物達にとって住人達は楽して得られる食糧でしかない。


平野には身を隠す場所が少く森は魔物が暮らすので入れずにいた。


砂漠に逃げても魔物がいて狩られてしまう。


生き残る知恵をうみだした少数のみが力を合わせなんとか生き延びていく。


ドワーフとホビットも何もないところからなので同じように数を減らしていた。


「なんだ?

こいつらは考える能力もないのか。」


文字通り新たな世界は完全なる龍の箱庭。


特別な力も恵みをもたらす精霊も無い人類はラゴーラの期待には応えようがなかった。


そしてラゴーラの好き勝手に命が弄ばれてもそれを止められる者はここにはいない。


以前の世界は所詮別の神が創った物。


天使族や悪魔族という力のある種族が先にいた。


そして他人事の世界。


神らしく一歩引いてその世界の生き物に任せる自分に酔ってもいた。


だが今回のは龍神の自分が初めから創る。


いわば自分の物だから何をしても許される。


そんな論理がラゴーラの中では適用されていた。


神としてではなく龍の本能任せの弱肉強食の非情な世界。


強い者だけが生き延びれるそんな世界にワクワクした。


そして連れてきた配下もこの世界で生き残れるのか。


いや本心は違うところにある。


所詮純粋な配下ではないからという思いがこのところ急激に押し寄せオモチャにしてやれという気持ちが強まった。


「龍が育ってからだな。

天使も悪魔も簡単には死なぬ。

それではつまらん。

ならば首を落としたら即死になるようにしようか。

魔物に喰われて死ぬのもいい。

今まではそれぐらいでは死なんかったが。

何せあいつらは反則的な生き物だから。」


ラゴーラはそれも視野に入れて自分にとっていなくなっても困らないが長く楽しめるよう戦闘能力の高いグラシア達を連れてきたのだ。


「やっとだ。

待って待ってようやくここまできた。

ずっとずっと天使と悪魔が死ぬのを見たかった。

こんな易々と死ぬ人類より我を楽しませてくれるに違いない。

死なぬと信じてる奴らが死ぬ有様はどんなんだろうな。

命乞いするかな?

それとも足掻くのかな?

楽しみ過ぎる。

我の世界では理不尽な生き物のお前らかて死ぬ運命なのだ。」


薄笑いを浮かべ恍惚とした顔のラゴーラ。


城に長く勤めている者達も自分の箱庭の駒として使うつもりだ。


「我にはハネスだけ居れば困らん。

ネシリの耳に入ればなんとしても止められる。

だからネシリとその仲間を遠ざけたのだ。

今頃悪戦苦闘していて我を思い出す間もなかろう。」


配下を殺す為にネシリを別の世界に追いやったのだ。


高位の神のネシリの力で邪魔をされたくなかった。


目前にぶら下がった最高の娯楽に高笑いをするラゴーラ。


その思惑をハネス以外は勿論知るよしもなかった。




















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