もしかしなくても俺の事好きじゃね!?
高校に入学して一ヶ月、そろそろクラスにも馴染み始めた頃の朝、俺こと時津 弘は一人暮らしのはずの家で声がうるさくて目が覚める。
「うるせぇ......」
頭の中に響く声。
【会社辞めてぇ】
【そろそろ寝るか......ふっ、朝に寝るこの高揚感、たまらねぇぜ!】
【可愛いなぁ、ぐふふふふふ】
【何あのおっさん、キモっ】
【高校の時は俺なんでも出来ると思ってたんだけどなぁ......現実は辛いぜ】
【コンビニ寄ってくかぁ】
「なんだよっ、これッ」
声がうるさくて頭が割れそうだった。
しばらく耐えると少しは慣れてきたようで頭痛もマシになってきたのでスマホを手に取り時間を確認する。
「6時30分か、学校に行くまではまだ時間があるな」
【誰だよ、こんな所にいし起きやがった奴は! クソが!】
そんな声が頭に響いてきたのでこっそり窓から外を除くと石に躓き転んでいる人がいた。
もしかしなくても俺、人の心の声を聞いてるのか? ていうかほんとにうるせぇな。
確かに頭痛はしなくなったがうるさいのには変わりなかった。
ふと、これってコントロール出来ないのか? と思い聞こえるな、聞こえるな、聞こえるな、と念じてみると頭がスッキリして余計な声が聞こえなくなった。
さっきの転んだ人がまだ悪態をついてるのであの人の心の声を聞こうと意識してみる。
【なんで俺は何もかも上手くいかねぇんだよ! なんで......なんで、俺は頑張ってるだろ? 俺はーー】
そこまで聞いて直ぐに聞こえなくなるよう念じる。
何があったかは知らないが朝からこっちの気分まで悪くなる。
「早く朝飯食べるか」
なんでいきなり心の声が聞こえるようになったかは知らないがコントロール出来るなら不便な力ではないので有効に使おうと思いベッドから降り、リビングへ向かう。
毎回思うが一人暮らしなのに一軒家って凄いよな俺。
両親は幼い頃に死んでおり叔父に引き取られ、ここに住まわせてもらっている。叔父は会社を経営しているらしくお金持ちだ。だからこそこうして住まわせてもらえている。叔父はいい人だ。食費や水道代、電気代と補ってもらっているのにお小遣いまでくれようとするぐらい、いい人だ。
流石に一軒家に住まわせてもらいお小遣いまで貰うのは申し訳ないのでバイトはしているがそれも叔父の紹介だったりする。
「これでいいか」
冷蔵庫を開け卵やハム、そしてツナのサンドイッチを手に取り食べる。
時間を確認すると7時30分。そろそろ行くか。
カバンを持ちスマホをポケットに入れ、家を出る。
鍵がしまったか3回は確認して歩き出す。
しばらく歩くと学生服を着た人が多くなってきた。
突然スマホが振動し出し取り出すと石引 響平と表示されていた。金髪のチャラチャラしたイメージで少し気持ち悪いが一応友達だ。(ちなみに俺の髪は茶色っぽい)
「もしもし?」
「だ〜れだ」
【だ〜れだ】
スマホと現実から声がし目を誰かの手で塞がれる。
言うまでもなく響平だ。
「やめろ! 気持ち悪い、付き合いたてのカップルか!」
「ははは、残念だったな弘、俺にそっちの趣味はない!」
「だったらやめろ!」
俺の身長が170ぐらいで響平が180ぐらいなのを考慮するとほんとにカップルぽくて気持ち悪い。
少し......かなり気持ち悪いがいい奴ではあ......なのかもしれない。ちょっと自信なくなったは最後。
「見ろよ弘、凄いなあれ」
響平が指を指している方向を見ると一人の黒髪ロングの美少女を避けるように人々が一定の距離を保っていた。
その美少女が可愛すぎて近づけないとかではなくその美少女、照屋 玲羅はとにかく口が悪いのである。入学当初はその見た目もあり色んな人に話しかけられていたが口が悪く、次の日には誰も寄り付かなくなっていた。
ちなみに毒舌女王とかあだ名がつくのかと思っていた俺だがそんなラノベみたいなことはなかった。
「弘話しかけて来いよ〜」
冗談っぽくそう言いい肩を組んでくる響平。
行くわけが無い。ちょっとしたきっかけで何度か話したことはあるがその時もう絶対話したくないと思うくらいは落ち込んだ。
「やだよ、お前いけよ」
「俺も怖えから無理」
「なら人に言うな」
俺達は照屋が前にいることにより必然的に歩くスピードを落とし学校に着いた。
俺達は1年B組だ。ついでに言うと照屋も。
「あっ、じゃあ俺席こっちだから」
そう言い分かりやすく逃げた響平を恨むように睨み1番後ろで1番左の窓際、言わゆるラノベの主人公が座る席に座り横を見る。
照屋さんが腕を組み凄く睨んでいるのが目に入り泣きそうになりながらも挨拶をする俺はすごいと思う。
「お、おはよう、ございます」
「あら? さっきまで怖いから私と話したくないと言っていた意気地無しの時津くんじゃない」
冷や汗が止まらないのを感じる。
確かに馬鹿でかい声で喋ってた自覚はないことも無いが照屋さんに聞こえていたとは。
「そ、そんなことありませんよ? 照屋さんの聞き間違いじゃないですか?」
もうね、目が怖いんだ。目が。
泣いていいかな?
俺は後ろに見えた響平にヘルプの視線を送るがスッ、とそらされてしまった。
一生許さん。
「あなたじゃないんだから私がそんな聞き間違いをするわけがないでしょう?」
ないでしょう? じゃねぇよ、知らんよ、もう挨拶しなきゃ良かったよ!
「あ、あはははは」
もう目に溜まった涙が落ちるかと思われた時、チャイムがなった。
「全員揃ってるかー? HR始めるぞー」
そんな呑気な声で先生が入ってきた時は神様かと思ったぐらい俺は救われた気分だった。
さっきまで睨んでいた照屋さんも前を向いているし。
一体どんな思考回路していたらあんなこと言いながらあんな怖い目が出来るんだ。女子高校生がしていい目じゃなかったぞ。
......あれ? そういえば俺人の心読めるんじゃなかったっけ? ふふ、ふふふふふ、照屋よ、お前の心の内暴いてやろうじゃないか。
【時津くんに挨拶されちゃった、怖いって言ってたけど挨拶してくるぐらいだし友達に合わせただけだよね!? とゆうかなんで私は素直におはようを返せないのよ! たった4文字喋るだけなのに! でもそんな私を笑って許してくれる時津くん、好き、今だって視線を感じーー】
その時俺と照屋は目が合った。
「こっち見ないでくれる?」
【見られてた、見られてた、見られてた! なんで?! 恥ずかしいよ、そんなに見つめられちゃったら、顔赤くなってないかなーー】
よし、一旦心の声を聞こえないようにして、状況を整理しようか。
まず笑って許す? 確かに目に涙を貯めながらなんとか苦笑いはしていたと思う。笑って許す感じではなかっただろ! そしてこいつさっき好きって言わなかったか!? いや、照屋に脅えすぎて変な妄想をしてしまったのかもな、うん。
こっち見ないでくれる? 気持ち悪いって言われたし、普通好きなやつにそんなこと言わないよな。
その後の心の声も俺の妄想だろう。
もう一回聞いてみれば分かる。全く、ほんとに俺ってやつは気持ち悪いな、こんな妄想しやがって。
【あぁ、真剣な表情もカッコイイーー】
俺の妄想じゃない? と言うか今の照屋の声的に俺の方見てるのか?
俺はチラッと照屋の方を見るとまたもや目が合う。
「さっき見ないでって言ったのにもう忘れたの? ミジンコの方がまだいい記憶力してるんじゃない?」
咄嗟に目を逸らしたがそんなことを言われてしまう。
【2回も目が合っちゃった、私変な顔してないよね!? もしかして時津くんも私の事意識してるってこと!? も、もしかして両思い?! 私変なこと言ってないよね? 時津くんーー】
変な顔はしてない、怖い顔はしている。そしてまぁ、ある意味意識せざるおえない。変なことと言うよりは酷いことを言ってる。
そして......もしかしなくても妄想でもなんでもなくこいつ俺の事好きじゃね!? めっちゃ素直になれないだけで俺の事好きじゃね!? いや、まて早まるな俺。有り得るのか? 確かに俺は心の声が聞こえるようになったと思うが本当にあっているのか? 心の声と現実の声が違いすぎて区別がつかんねぇ。と言うか多分だけど視線感じるしまだ俺の事見てるよな照屋さん。
でも俺は流石にもう照屋さんの方は見ないぞ、また罵倒されるだけだからな。
【時津くんが窓の方向いちゃってるよ、顔が見えない、あっ、でも窓から反射してちょっとだけ見えるかも、反射した時津くんもかっこいいなぁ】
まってまってまって、これすげー恥ずかしいんだが。
俺の方が顔赤くなってないか!? いや、絶対なってる。
【こっち向いてくれないかなぁ、なんてね、流石に3回も私の事見てくれるなんてありえないよね】
そんなこと言われたら見たくなるだろ......ていうかあの罵倒が勘違いだったんじゃないかって思うほど心の声は素直だなこいつ。いや、ほんとに勘違いなんじゃないか? だって、自分でこんなこと思うの凄い恥ずかしいけどこいつ俺の事めっちゃ好きだと思うから。
そう思いちょっとだけ照屋の方を向くとまた目が合った。
「何度言えばわかるの? もしかして言葉が分からないのかしら?」
【あっ//////// また目があっちゃたよぅ、私の日頃の行い? それとも時津くんが私と両思いだから? はずかしいけど嬉しい、もう今日は時津くんのこと見れないかも......次目が合ったら私死んじゃうよ......】
もう訳分からん。




